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ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第1章~そこで暮らす者たち~
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015、吐き出された者

AI作成

潮の匂いが、最初にあった。


視界は白い霧に覆われ、足元の感触だけが現実を伝えてくる。

濡れた砂。柔らかく、冷たい。


次の瞬間、世界が音を取り戻した。


ざあああああ―――


寄せては返す波の音。

風が、衣服を、髪を、容赦なく揺らす。


橘敬三は、ゆっくりと目を開けた。


目の前に広がっていたのは、果ての見えない海だった。


空は広く、雲は高い。

見たことのない色の海。

見たことのない空気の重さ。


背後で、誰かが咳き込む。


「……ここ、どこだよ……」


荒波恭一の声だ。

震えている。寒さか、状況か。


敬三は答えない。答えられない。

代わりに、自分の手を見る。濡れている。砂が張り付いている。

生きている。だが、あの場所ではない。


視線を横に動かす。


花子が起き上がろうとしている。

砂に手をつき、周囲を見渡し、そして敬三と目が合う。


何も言わない。

だが、その目が問うていた。


――生きてる?


敬三は小さく頷く。


そのやり取りを合図にするように、周囲で人が動き始めた。


石川拓斗が上体を起こし、

金田丑三が空を見上げ、

月代萬月はすでに立ち、剣の柄を確かめている。


少し離れた場所では、神楽一番がゆっくりと膝をつき、砂を掴んでいた。

指の間から砂がこぼれ落ちる。


「……地面は、ちゃんとしてるな」


現実確認の言葉。


誰も笑わない。

笑える状況じゃない。


振り返る。


そこには――何もなかった。


街も、船も、建物も、道も。

あるのは、海岸線と、草の生えた緩やかな丘、そして空だけ。


世界から切り離されたような場所。


そのとき。


空気が、わずかに震えた。


全員が同時にそちらを見る。


何もない空間が、ゆらり、と歪む。


水面に石を落としたときのような波紋が、空中に広がる。

そして、ふっと消えた。


静寂。


敬三の喉が、わずかに鳴る。


「……あれが、俺たちが出てきたやつだな」


誰も否定しない。


ここは“辿り着いた場所”ではない。

“吐き出された場所”だ。


風が強くなる。

潮騒が大きくなる。


世界は何も語らない。

歓迎も、拒絶もない。


ただ、ある。


敬三は海を見る。


長い、長い時間を生きてきた海の顔だ。

優しさも、怒りも、すべて飲み込んだ顔。


その海に向かって、低く呟いた。


「……生きるぞ」


宣言でも、決意でもない。

確認だ。


それが、この場所で最初に生まれた言葉だった。


そしてここから、文明は始まる。


いよいよ新章、漁師たちの物語の始まりです!

突然迷い込んだ彼らに待ち受けているのは、いったいどのようなものでしょうか?

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