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ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第2章~旅人チェルシー~

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138/206

138、旅立ちの日に

セリフ筆者、ト書きAI作成

崩れ落ちた地底魔城の残骸は、まだかすかに熱を帯びていた。

黒く焦げた石材が折り重なり、かつて玉座の間へと続いていた入り口は、ただの瓦礫の山へと変わっている。


空気は静かだった。

あれほど濃く淀んでいた魔気は、今は薄れ、地の底を流れる風だけが、静かに吹き抜けていく。


その入り口の前で、スキアは振り返った。


「チェルシー。見届け、感謝する」


短い言葉。だが、その声には確かな区切りがあった。


チェルシーは瓦礫を見やり、そして肩をすくめる。


「お安い御用さ。それで、これからどうするんだ?」


問いは軽い。

だが、その奥には理解があった。

これは単なる城の崩壊ではない。

一つの時代の終焉なのだと。


スキアは崩れた城を見つめたまま、静かに答える。


「旅に、出ようと思う」


風が、彼の髪を揺らした。


「まずは世界を知ることからだと、そう思ってる」


この地底でしか生きてこなかった自分が、

“共生”を掲げるというのなら。


力でなく、恐怖でなく、支配でもなく。


世界がどうやって息づいているのか。

命がどうやって巡っているのか。


それを、自分の目で確かめなければならない。


チェルシーは、ふっと笑った。


「どうする? 一緒に来るか?」


ほんのわずか、スキアの視線が揺れる。


仲間。

理解者。

背を預けられる存在。


だが――。


「いや」


迷いは、一瞬で断ち切られた。


「自分の目で確かめたいんだ。この世界はどのように『生きて』いるのかを」


誰かの言葉ではなく。

誰かの解釈でもなく。


自分の足で立ち、自分の視界で。


チェルシーは小さく頷く。


「そうか」


それ以上は何も言わない。

それで十分だった。


スキアは振り向く。


「お前たちはどうする?」


問いは、レインと、二体の下級悪魔へ向けられた。


血走った目ではない。

澄んだ瞳を持つ二体。


かつて彼らを育て、見守ってきた存在。


下級悪魔の一体が、静かに膝を折る。


「スキア様の道は私たちの道。ぜひお供させていただきたく思います」


その声は、忠誠というよりも――選択だった。


レインが一歩、前に出る。


「兄上が行くなら、私も行く」


短い。だが、揺るぎない。


スキアは、二人を見つめる。


縛った覚えはない。

命じた覚えもない。


それでも、彼らはここにいる。


共に歩むと、自ら選んだ。


瓦礫の向こうから、微かな風が吹いた。

かつて城だった場所をすり抜け、地の底を抜け、どこか遠くへ続く風。


世界は、広い。


まだ知らぬ息づかいが、きっとそこにある。


スキアは、わずかに目を伏せる。


そして――


「そうか」


それだけを、つぶやいた。


肯定でも、命令でもない。


ただ、受け入れる声。


四つの影が、ゆっくりと歩き出す。


崩れた城を背に。


未来へ。


物語は、まだ始まったばかりだった。



旅立ちを決意したスキアとその一行。彼らにこの世界はどのように映るんでしょうね。楽しみです。

もし、チェルシー編が終わったら、彼らを主人公にした物語を書くのも一興ですね。

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