135、決別
セリフ筆者、ト書きAI作成
玉座の間の扉が、重く開いた。
高い天井。
濁ったマナが渦を巻き、空気が鈍く震えている。
玉座に座す男が、ゆっくりと視線を向けた。
「お前か。侵入者というのは」
低く、響く声。
その傍らで、女が眉をひそめる。
「スキア。なぜこやつをここに通したのだ? お前はこの玉座の間の門番であろう?」
スキアは一瞬だけレインを見る。
レインは、ただ頷く。
それで足りた。
スキアは玉座を見据える。
「父上よ。もう終わりにしよう。この世界は、あなたが思うほど、弱くない」
玉座の男――ゴルゴンは、ゆっくりと口角を上げた。
「何を言い出すのかと思えば、そのようなことか。笑わせる。その程度で動じる我だと思うか?」
揺るがぬ声音。
だが、マナの流れがわずかに乱れる。
スキアは続ける。
「……元居た場所に還るべきです。私たちは、ここでは異端すぎる」
「どうした? そのような臆病風に吹かれてしまって」
ゴルゴンの視線が、チェルシーへ向く。
「……そうか。そこの侵入者が原因か。案ずるな。すぐに我が正気に戻してやろう」
チェルシーは肩をすくめた。
「スキア。確認するが、この二人を“還せ”ばいいんだな?」
「ああ」
迷いのない返答。
「じゃあ、ちょっと手助けするよ、と」
人形の指が動く。
マナの糸が、空間へと伸びる。
ゆがみが震える。
濁っていた歪みが、一瞬で形を変える。
裂ける。
音もなく、空間が裂け目へと転じた。
「貴様!? 何をする!?」
ゴルゴンが立ち上がる。
玉座の間のマナが暴れ、渦を巻く。
だが、裂け目は静かに口を開いている。
「縫い合わせるようになってるのなら」
チェルシーの声は、どこまでも穏やかだ。
「ほころばせることもできなくはない、と」
「や、やめ――」
エンの声が掻き消える。
「スキア! 何をしている! 早くこの裂け目を塞いでくれ!」
ゴルゴンの視線が、息子へと向く。
命令。
焦燥。
初めての動揺。
スキアは、動かない。
剣も抜かない。
ただ、まっすぐに見つめる。
「……さようなら」
一拍。
「私の、肉親よ」
裂け目が、静かに閉じる。
濁った圧が消える。
玉座の間に残るのは、静寂だけ。
重かった空気が、わずかに澄む。
スキアは目を伏せない。
レインも、何も言わない。
チェルシーは、その変化を確かめるように、ゆっくりと息を吐いた。
支配の気配は、消えた。
だが、終わりではない。
ここから始まる。
やはりこうなりましたね。薄々感づいていた方も多いのではないでしょうか?
彼は静かに親を「還し」た。それは、彼の中でどれほどの葛藤があったのだろうか。




