132、汚れの中の澄んだ心
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悪魔は、三体だった。
洞窟の入口付近で待ち伏せるように現れ、牙を剥き、低く唸る。
命令されている動きだ、とチェルシーは一瞬で理解した。
背中の絡繰り人形の指先に、細い糸が走る。
それだけだった。
空気が沈む。
目に見えない何かが、洞窟の温度をわずかに下げる。
人形の首が、ゆっくりと傾いた。
悪魔の一体が踏み出そうとして――止まる。
爪が石を掻く音だけが響いた。
「退きなさい」
声は穏やかだった。
「あなた達は、命令されているだけでしょう?」
威圧は一瞬。
だが、本能は十分に理解した。
敵ではない。
格が違う。
三体は視線を逸らし、じり、と後退する。
やがて、闇へと消えた。
チェルシーは糸を緩める。
「……雑ね」
洞窟の奥へと視線を向ける。
マナの流れは荒れていた。
無理やり裂かれ、引き寄せられ、歪みが点在している。
乱暴な使い方。
支配する側の思考が、そのまま空気に滲んでいる。
奥――玉座のある方向からは、分かりやすい圧がある。
濁った炎のような、膨張する力。
上級悪魔。
おそらくは、この城の主。
だが。
足が、止まる。
「……違う」
わずかに重心がずれた。
重力が、ほんの少しだけ軋む。
奥ではない。
手前の部屋。
そのさらに手前。
澄んだ、重さ。
濁流の底に沈んだ透明な石のような気配が、二つ。
強い。
しかし、荒れていない。
静かで、芯がある。
チェルシーは目を細める。
正体は分からない。
だが、分かることがある。
この城で、本当に危険なのは――奥ではない。
人形の首が、左右別々の方向を向いた。
二つ。
確かに、二つ。
チェルシーの口元が、わずかに緩む。
「……面白いわね」
濁った空気の中に混じる、澄んだ強度。
討つべき対象ではない。
観察すべき存在。
彼女は、ゆっくりと歩き出す。
奥へではなく。
その、手前へと。
地底魔城編スタートです! ここでは今後の物語に影響する人物が登場します。
今はまだ詳細は出ていません。でも、すぐにわかると思いますよ。




