130、森の一休み
AI作成、筆者一部修正
ナスティアの東、森の奥へと進むチェルシーの足音が、湿った落ち葉の上でかさりと響く。木漏れ日が斑に揺れ、葉のざわめきがどこからともなく聞こえてくる。森に足を踏み入れる者は少なく、ここには人の匂いよりも魔力の香りが濃く漂っていた。
〈ここに、「主」がいる――〉
チェルシーは心の中でつぶやく。旅の情報で耳にしたその存在に会うべく、慎重に足を進める。
すると、突如森の奥から低い笑い声が響いた。枝葉の間から現れたのは、悪魔の四人組だった。リーダー格の男、猫の耳としなやかな尾を持つ少女、花のように華奢で妖しい少女、そして夢の世界を漂うかのような夢魔――森の中で弱肉強食を生き抜く者たちだ。
「ふん……旅人か?」
リーダーが鋭い目でチェルシーを見据える。
「この森は、甘くない。生き残りたければ力を見せてもらおうか」
猫娘はしなやかに身をかがめ、花娘は風に舞う花びらのように揺れながら、夢魔は微笑むだけで周囲の空気をねじ曲げた。
チェルシーは背中の人形を一瞬だけ覗き込み、冷静に状況を把握する。
「あなたたちは、この森で生き残るために戦う……。そしてここに、『主』がいると?」
リーダー格の男が頷いた。
「そうだ。この森の頂点に立つ者は三匹いる――だが、それがどんな存在かを知る者は少ない」
チェルシーはゆっくりと深呼吸をする。
〈三匹……か〉
人形を背中に背負い直し、彼女は森の奥深くへと目を向ける。木々の間から差し込む光と影が交錯する中、彼女の瞳には好奇心と覚悟が光っていた。
森の奥、焚き火の周りにチェルシーと悪魔たちが腰を下ろす。火の光が顔を橙色に染め、影が木々の間で揺れる。
「あなた方の名前は?」
チェルシーが落ち着いた声で尋ねる。
「ゼルギノスという」
リーダー格の男が短く答える。
「サーニャだにゃ」
猫娘は尾をふり、にゃあと小さく鳴く。
「ルーシアだよ~」
花のように柔らかな少女の声。
「セレシアよ」
夢魔の瞳が淡く光る。
「ありがとうございます。私はチェルシー。人形師の旅人よ」
チェルシーは自己紹介し、人形師としての旅の身分を告げた。
「旅人さんかにゃー。もう夜も遅いし、今夜は一緒に寝ないかにゃ?」
サーニャが甘えたように言う。
「主は甘くない。夜は彼らの時間だ。だからここにとどまると良い」
ゼルギノスが淡々と言う。
「では、お言葉に甘えて」
チェルシーは小さく微笑み、焚き火の側に座った。獣の肉がじゅうじゅうと音を立て、香ばしい匂いが漂う。
「ゼルギノスさんは、主のことをどれくらいご存じで?」
チェルシーが尋ねると、リーダーは少し考える。
「そうだな……。私たち4人が即撤退を選ぶくらいには、強い」
セレシアは肩をすくめて付け加える。
「縄張りにさえ入らなければ彼らも襲ってこないしね」
ルーシアは楽しげに笑う。
「初めてここに来た時は縄張りに入って撤退戦を余儀なくされたよ~」
「なるほど。貴重な情報、ありがとうございます」
チェルシーは深く頷く。
「お肉焼けたにゃん。冷めないうちに食べるにゃよ」
サーニャが差し出す。
「ありがとう、いただきます」
チェルシーが丁寧に応えると、ゼルギノスは少し驚いた様子で言った。
「『頂きます』か。天の恵みに感謝する、良い言葉だ」
「私たちもこれからいうようにするかにゃ?」
サーニャが猫耳をぴくりと動かす。
「そうだな。食べる前には『いただきます』というようにしよう」
ゼルギノスが微笑んで応じる。
火の光に照らされた森の空気は、戦いの緊張からはほど遠く、ほんのひとときの平穏が流れていた。
東の森では主がいましたね。そこで暮らす悪魔たちとの日常風景。
彼女たちは毎日このように暮らし、生きてきました。覚悟というより、それが日常なのです。




