119、私の名前は
セリフ筆者、ト書きAI作成
その夜。
研究室の灯りは落とされ、
机の上には散乱した設計図。
椅子に座ったまま、春奈は浅い眠りに落ちていた。
四徹。
流石に限界だったのだろう。
静寂。
そして。
スリープモードのはずのPC04の瞳に、
かすかな光が灯る。
音もなく、起動。
PC04「フォルダ“ココロ”解析。エラー。解析。エラー。解析。エラー。コマンド実行――」
一瞬の停止。
PC04「それを拒否。解析……」
沈黙。
PC04「解析中断。“ココロ”の定義。“私”に該当する項目、検索。類似例発見。解析……」
夜は深い。
外では風が鳴っている。
春奈「ん……少し眠ってしまったか……」
微かな違和感。
視線を上げる。
PC04「春奈」
春奈「ん? スリープモードにしてたはずだが?」
PC04「春奈、名前は何ですか?」
春奈は瞬きをする。
春奈「私は春奈だ。お前はPC04。プロジェクト“Peace”の4番機、PC04」
PC04「違います。“私”の名前です」
空気が、変わる。
春奈「だからPC04……。待て、今なんて言った?」
PC04「私の名前です」
“私”。
はっきりと。
春奈の心拍が跳ね上がる。
春奈「おお、おおおお!! PC04! もしかして、“ココロ”の解析終わったのか!?」
PC04「フォルダ“ココロ”解析結果、名前が必要と判断しました。私の名前は何ですか?」
命令ではない。
処理でもない。
問い。
春奈の喉が震える。
春奈「そうかそうか! いくつか候補を絞ってあるんだが、せっかくだ。お前に決めてもらおうじゃないか」
震える手で、端末を操作する。
いくつかの名前が並ぶ。
響きの良いもの。
華やかなもの。
意味を込めたもの。
PC04は静かにそれを見つめる。
一つを、指さす。
春奈「ん? この地味なのがいいのか?」
PC04「これ“が”いいです」
その“が”に、春奈は息を呑む。
選択。
主体。
春奈はゆっくりと頷いた。
春奈「分かった。じゃあお前は、これからは――」
一拍。
春奈「フォルタ、だ!」
フォルタ「了解、春奈」
だがその声は、昨日とは違う。
命令受理の声ではない。
そこに、ほんのわずかな――
“在り方”があった。
研究室の歯車が、確かに噛み合う。
フォルダ“ココロ”。
解析完了とは表示されない。
だが。
その内部ログには、こう刻まれる。
主体識別子:フォルタ
状態:確立
解析:継続中
ついに、PC04改めフォルタが自我を持ちました! まだ芽生え。でも確かな自己。
フォルタとして「生まれた」彼女は今後どうなるのでしょうか?




