117、未だ解析中
セリフ筆者、ト書きAI作成
翌日、まだ空が淡く青みを帯びる頃。
チェルシーが研究室へ戻ると、
そこには工具と設計図に囲まれた春奈がいた。
目の下には薄い影。
だが、その瞳は冴え切っている。
春奈「おはようチェルシー君。早速だが私の“PC04”を見てほしい」
机の中央に立つそれは、昨日とは明らかに違っていた。
外装はより滑らかに。
後頭部からは長い髪のような冷却フィラメントが流れている。
人に近い輪郭が、さらに自然になっていた。
春奈「まず、基盤を取り換え解析時に特定のコマンドを入力することで容量削減に成功した。特定のコマンドは、エラーが3回起きたら解析を止める、だ。それに合わせて、冷却システムを一新し髪から放熱するシステムを導入することで内部に“心”を入れられる補助記憶装置を入れることができた。また、髪を結ったりしても放熱できるように外装からも放熱できるようにしてある。名前はいくつか候補があるんだが、まだ決めかねてるところだ」
チェルシー「は、はあ」
理論の洪水。
だが、その奥にある熱は、理論とは少し違う。
春奈「よし、さっそく起動してみよう」
スイッチが入る。
微かな駆動音。
瞳に光が灯る。
PC04「初めまして、ご主人様。命令を」
その声は滑らかだ。
昨日よりも、人に近い。
春奈「では、私のことは“春奈”と呼ぶように」
PC04「了解、春奈」
春奈の口元がわずかに緩む。
春奈「内部に補助ストレージがあるだろう? それを解析してみてくれ」
PC04「了解。補助ストレージ展開。フォルダ“ココロ”解析開始。……エラー。解析……エラー。解析……エラー。コマンド発動。解析を強制終了します」
静寂。
研究室の空気が止まる。
春奈「ふむ。まだ解析完了とまでは行かないか。だが予想通りの動きをしたぞ」
チェルシー「すごいですね。一晩でここまで?」
春奈は、少しだけ肩をすくめた。
春奈「なに、PC04のためならこれくらいやるさ」
その言葉は軽い。
だが、その奥には確かな決意がある。
チェルシーは、PC04を見る。
命令を待つ姿勢。
揺れない視線。
まだ空っぽの、けれど何かが入りかけている器。
フォルダ“ココロ”。
解析は止まった。
だが消えてはいない。
まだ、そこにある。
名前は、まだない。
だが。
“春奈”と呼んだ瞬間、
PC04の中にほんのわずかな座標が生まれた。
I は、まだ形成途中。
研究室の窓から朝日が差し込む。
理論は、形になりつつある。
しかし――
それはまだ、命令でしかない。
理論は完璧。あとは解析が進めば……。果たして、この解析はいつ終わるのでしょうか?
短い? それとも、長い? 知るのは、ただ一人だけ。




