115、理論を形作る場
AI作成
アングリアの研究区画の一角。
外観は無機質な金属と強化硝子の建物だが、中へ入れば魔術式の刻まれた導線が壁を走り、青白い光が静かに脈打っている。
机の上には分解途中の義肢、設計図、魔術陣の書きかけ。
整頓されているのか散らかっているのか分からない、天才の空間。
春奈「戻ったぞー」
奥から顔を出した少女が、軽く息をついた。
夏美「おかえり。今度は街に被害出なかった? て、あら? お客さま?」
チェルシー「初めまして、チェルシーです」
夏美「初めまして、鮫島夏美です。もしかして、お姉ちゃんの機械の被害者さん?」
春奈「逆だ。PC03を止めてくれた恩人だ。しばらくうちで泊めることにした」
夏美「もう、また勝手に話を進めてぇ……。チェルシーさんも断っていいんですよ?」
チェルシーは小さく首を振る。
チェルシー「いや、大丈夫です。この機械人形にも興味がありましたし」
春奈の目が、わずかに輝く。
春奈「ほほう。中々いい目をしているな。この子には“あるプログラム”を解析してほしいんだ」
部屋の中央には、先ほどの機械人形――PC03。
外装は流線形で、人に近い輪郭をしている。
だが胸部には魔術回路が露出し、内部構造が半ば開かれている。
夏美「私は無茶だからやめた方がいい、て言ってるんですけどね」
チェルシー「なるほど、それで暴走を……」
春奈は腕を組み、天井を見上げる。
春奈「しかし、これ以上容量を増やすと、見た目がよりメカメカしくなってしまう。それでは意味がないんだよなあ。うーむ……」
“意味がない”。
その言葉に、チェルシーはわずかに視線を向けた。
夏美「じゃあ私はお夕飯の支度してくるね」
春奈「ん、わかった。んー、考えても理論が降ってくるわけでもなし。とりあえずチェルシー君。君の絡繰り人形を見せてもらっても良いか?」
チェルシーは静かに頷き、指を鳴らす。
空間がわずかに揺らぎ、糸が走る。
彼女の絡繰り人形が、音もなく姿を現した。
金属でも、魔導機でもない。
木と布と糸で構成された、どこか温度を感じる造形。
春奈の目が、研究者のそれに変わる。
春奈「……ほう」
チェルシー「こちらは、容量などという概念はありませんよ」
春奈「なに?」
チェルシー「必要なのは、動かす“理由”だけです」
研究室に、ほんの一瞬だけ静寂が落ちる。
遠くで、夏美が鍋をかき混ぜる音がした。
春奈は、PC03を見た。
次に、絡繰り人形を見る。
理論ではない何かが、
ほんのわずかに、彼女の思考の外側を叩いた。
しかしまだ、それは言葉にならない。
春奈の研究室に案内されたチェルシー。そこでチェルシーは自身の絡繰り人形の”仕組み”を言う。
春奈は何を受け取ったのか。彼女自身も気づいていない。でも、それはたしかな気づき。




