114、出会いはいつも計算外
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石畳の広い通り。
蒸気と香辛料の匂いが混ざる、アングリアの入口にして大動脈。
その喧騒を切り裂く声が響いた。
??「そこのひとー!! 危ないからどいてくれないかー!?」
チェルシーは足を止める。
視線の先、群衆を割って駆けてくる影。
金属の脚。軋む関節音。
一体の機械人形が、こちらへ一直線に突進していた。
チェルシー「ええと、これは……。取り押さえた方が、いいか?」
迷いは一瞬。
指先がわずかに動く。
背後に控えていた絡繰り人形が、糸も見えぬまま滑るように前へ出た。
次の瞬間――
がしり。
機械人形は羽交い絞めにされ、石畳の上で火花を散らす。
機械人形「攻撃対象確認。直ちに攻撃します。攻撃行動、実行開始。エラー。現在拘束中につき行動不能。攻撃対象、攻撃、攻撃対象、攻撃……」
チェルシー「これは完全に壊れてるな……」
??「あーすまない! そのまま抑えといてくれ! すぐに追いつく!」
工具袋を肩にかけ、息を切らせて走ってきたのは一人の少女。
長い黒髪。冷静な瞳。
だがその目は、暴走する機械人形しか見ていない。
彼女は迷いなく膝をつき、外装の留め具を外した。
機械人形「マスター、守る、攻撃、マスター、守る、攻撃……」
春奈「はいはい、守ってくれてありがとね、と」
声は柔らかい。
まるで子どもをなだめるように。
内部配線へと工具を差し込み、数秒。
ぱちり、と音がして、光が消えた。
機械人形は力を失い、チェルシーの絡繰り人形へともたれかかる。
静寂。
春奈はほっと息をついた。
春奈「ありがとう。また暴走してしまったよ。私は鮫島春奈。見たところ、人形師さんのようだね」
チェルシー「初めまして、チェルシーです。この機械人形はいったい?」
春奈「ああ、PC03のことか。完全二足歩行ロボットではある。のだが、あるプログラムを打つと毎回エラーになって暴走してしまうのだ。うーむ、やはり容量オーバーなのだろうか……」
彼女の目は既に思考の海に潜っている。
チェルシー「んー、な、なるほど……」
(容量、か)
チェルシーは、機械人形の内部を一瞥する。
魔力の流れは感じない。完全に理詰めの構造。
だが――
“マスター、守る”
その言葉だけが、やけに人間じみていた。
春奈「そうだ! 良ければチェルシー君、私の研究室に来ないか? 寝床と食事は保証しよう。ついでに君の人形を少し調べてみたさもある」
唐突。
だが打算はない。
純粋な探究心。
チェルシー「ふむ」
少しだけ考える。
暴走。
守る。
容量オーバー。
そして、この少女の目。
チェルシー「分かりました、行きましょう」
春奈「ありがとう! では、PC03を運ぶのを手伝ってくれないか?」
チェルシーは頷き、絡繰り人形に合図を送る。
動かぬ機械人形を担ぎ上げながら、彼女は思う。
(容量オーバー……か)
“守る”という命令が、
何を溢れさせたのか。
まだ知らない。
さて、ここでは次の国、アングリアでのお話になります。機械と魔術が発展している国での一つの物語。
春奈は天才「クレイヴァー」の弟子で、機械工学のスペシャリストです。
すでに二足歩行ロボットは完成しているが、なぜ毎回暴走するんでしょうね?




