105、突然の来訪者
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午後の日差しが、学院の図書室の大きな窓から柔らかく差し込んでいた。
チェルシーは長い間、机にかじりつき、次々と本を読み漁っている。
ページをめくる音と、遠くで響く箒の羽音だけが、静かな空間に溶け込んでいた。
ふと、微かな足音が床を擦る音に混ざり、普段の静寂とは違う気配が近づく。
チェルシーが顔を上げると、そこには威風堂々とした男性――ウォル国当主、トルキアが立っていた。
護衛の姿はなく、ただ一人。
「……旅人さんかい?」
低く落ち着いた声が図書室に響く。
チェルシーは一瞬驚きつつも、机の上の本から顔を上げ、彼を見つめる。
トルキアの目は穏やかでありながらも、確かな力と意思を感じさせる。
「……正義を貫き通す、という本を探しているんだ」
彼の言葉は簡潔だが、どこか鋭さを含んでいた。
チェルシーは軽く頭を傾け、微かに笑みを浮かべる。
「なるほど……その本が、当主に必要なんですね」
トルキアは微かにうなずき、棚の方へ歩を進める。
「ふむ……君も、この図書室で色々と学んでいるようだね。旅の途中で、魔術の知識に触れているのかい?」
チェルシーは少し考え込みながら答える。
「はい。知識を集めるのも旅の一部ですから」
その静かなやり取りの中、午後の日差しは二人を柔らかく照らし、図書室の空気を少しだけ特別なものにしていた。
まるで、世界の片隅で偶然出会った二人の旅人――いや、一人は旅人、もう一人は国の舵取り――の物語が、静かに始まろうとしているかのようだった。
当主トルキアさんは何かと公務中に抜け出しては国民と触れ合っています。
親しみは強いですが、一様に苦笑される姿は中々面白い光景です。




