表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

結婚挨拶が修羅場になる未来が見えたので根回しした件

マオチョンからのプロポーズに、我は迷わずOKした。

勢いだけじゃない。覚悟もあったし、迷いもなかった。


でも同時に分かっていた。

結婚そのものより、ずっと大きな壁がある。


両親への説明だ。


我は二十四歳。

中国では、結婚の話が出てもおかしくない年齢。

帰省すれば、間違いなく聞かれる。

そして問題は――相手が日本人だということだった。


マオチョンを、いきなり連れて行く選択肢はなかった。

だから我は、一人で先に帰省することにした。


両親の根回しーー揉めるのは分かっている。

我自身の覚悟を通すためにも避けては通れない。


食卓で切り出した瞬間、空気が変わった。

結婚するつもりがあること。

相手は日本人だということ。


父は、怒鳴った。


「お前は、まだ分かっていない」


その言葉を聞いた瞬間、昔の記憶が一気に蘇った。


高校三年のとき、我は北京の大学に特待生で合格した。

本当は、そこで学びたかった。

でも父は反対した。

「地元を離れるな」

「近くの大学じゃないと認めない」


話し合いは平行線で、最後は喧嘩になった。

結局、我は進学を諦め、家を出た。

縁もゆかりもない広州で就職したのは、その延長線上だ。


父は言った。

大学進学も、家を出たことも、全部勝手だった。

干渉しなかったのは、ちゃんと生活していると思ったからだ。

それなのに、外国人と結婚すると言い出すとは思わなかった、と。


「こんなことなら、進学も希望通りにさせて、

 中国人と結婚してほしかった」


その一言で、我の中の何かが切れた。


進学も、仕事も、結婚も。

全部、父の許可が必要なの?


我は静かに、でもはっきり言った。

北京の大学進学諦めたことは、今でも一番悔しい。

だからこそ、結婚は譲らない。


「彼と結婚するのは、我が決めた」


誰に反対されても、結婚する。

その言葉だけは、揺れなかった。


そこからは、怒鳴り合いだった。

理屈なんて通じない。

感情と感情のぶつかり合い。


帰省中、毎日同じことを繰り返した。

父は怒り、我は引かない。

母は、その間に立って必死になだめていた。


夜、部屋に戻ると、どっと疲れが出た。

布団の中で、スマホを握りしめる。


本当は、声が聞きたかった。

没問題だいじょうぶ」と言ってほしかった。


――マオマオチョン。


心の中でだけ、そう呼ぶ。

弱くなりそうなときほど、正しい名前が必要だった。


でも後悔はなかった。

あのとき、大学進学を諦めた自分とは違う。

今回は、自分で選んだ道だ。


最後に折れたのは父だった。

納得したわけじゃない。

でも、我の意思が変わらないことは伝わったのだと思う。


その夜、我は決めた。

ここまで押し通した以上、結婚生活は絶対に成功させる。

逃げない。甘えない。

自分で選んだ人生だから。


次は、彼を連れて挨拶に行く。

――正直、上手くいくか自信がない。

でも、もう引き返せない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ