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夢か現実か

8月30日 時刻 23:55


 高校1年生。気が付けば、高校生になって初めての夏休みも残すところあと一日となった。

 この夏で自分を変えてやると誓ったあの日を思い出すと、現実に心が押しつぶされそうになる。

 僕は結局、なんにも変わることができなかった。三日坊主で優柔不断。

 僕の人生なんて、結局こんなもんなんだろうな。



 キラーンっ



 流れ星だ。ふいに目をやった窓の外には、僕をあざ笑うかのように満天の星空が広がっていた。

 ”今日は極めて珍しい流星群が観測できるでしょう"

 たしか今日のニュースでそんなこと言っていたような気がする。

 ”このような特別な機会に皆さんも叶えたい夢を願ってみてはいかがですか”


 僕の願いか、

 幸せになりたい……ってのはさすがに曖昧過ぎる願いかな。

 やっぱモテたいとか?他にはイケメンになりたい、天才になりたい、お金持ちになりたいとかかな。

 これって結局モテたいって願いと同じか。それじゃあやっぱり……。



 キラーンっ



 またひとつ流れ星が落ちた。

 優柔不断、僕の悪いところだ。

 たかが流れ星に託す夢だ、現実離れしていてもいいはずなのにそれすらはっきり決められない。

 本当に情けない。


 またひとつ、ふたつと流れ星は落ちてゆく。

 ……そうだな。変わるなら、まずこの優柔不断を何とかしないといけないな。


 この時、なぜだかこれが変わるための最後のチャンスだと思った。

 夜のせいだろうか、少し変だったかもしれない。だけれども止まることはしなかった。

 僕はベットから立ち上がって大きく息を吸い込んだ。

 これは、僕の新しい人生の一歩目を踏み出すための0歩目。


 8月31日 時刻  0:00


 僕の願い、

 「どんな状況でも迷って立ち止まることのない、決断力のある男にしてくださーーーーい!!」


 小さな部屋に声が響くのと同時に、流れ星がひとつ輝いた。

 変わろう、絶対に明日から変わるんだ。

 これは僕が人生を大きく変える誓いの叫びだ。




 ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ



 8月31日 時刻  9:00


 ▷起床する     あと5分寝る


 

 なんだこれ?

 目の前にというか頭の中にといえばよいのか分からないが、ゲームの選択場面のようなものが現れた。

 これまでにない不思議な感覚だった。

 きっとこれは夢なんだろうけど、なぜだか夢じゃないようなそんな感覚。


  起床する    ▷あと5分寝る


 頭の中でイメージすれば選択肢に付くカーソルのようなものを動かすことができた。


 まるでゲームの中に入ったみたいな不思議な夢だな。

 まあ、なんでも良いか。

 僕は迷うことなく眠り続けることにした。

 そのイメージと連動してカーソルが動いた。


  起床する    ▶あと5分寝る




 ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ



 8月31日 時刻  9:05


 ▷起床する     今日はもう寝る


 またこの変な夢か。

 夏休みも最終日、もう少しくらい寝てもいいだろう。

 そんな反射的に生じたイメージと連動して再びカーソルが動いた。


  起床する    ▶今日はもう寝る




 ん~~、よく寝たな。

 これほどスッキリとした目覚めは久しぶりだった。


 昨日の記憶がよみがえる。誓いを叫んだ夜の記憶。

 よしっ、まずは夏休みの宿題を完璧に終わらせるとするか。


 って、あれ……?

 なんか、朝にしては暗すぎやしないか?

 部屋の暗さ、スッキリした目覚め。嫌な予感がする。

 僕はおもむろにベットの脇に置いた目覚まし時計を見た。


 9月01日 時刻  0:00


 「やっ、やらかしたーーーーーーーーーーーーーー!!」


 こうして、僕の夏休みはあっけなく終わった。

 だが、これは紛れもなく僕の新しい人生の0歩目だった。


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