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勇者失格宣告~魔王と静かに暮らしたい  作者: ぽとりひょん
第3章 ヴァルハラ王国侵攻
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第9話 鮮血のツェーザル

 牢の中でセリアは目を覚まさないタダツグの心配をする。ヒールで命は取り留めているはずだ。こうしていても明日はどうなるかわからない。

 タダツグは2日目に目を覚ます。もうろうとしている。セリアの呼びかけにも反応が弱い。さらに半日が立ってタダツグは意識がはっきりとしてくる。

 「タダツグよかった。心配したのよ。」「僕は勝ったのか。」

 「勝ったけど死ぬところだったわ。」「ここは?」

 「城の牢の中よ。」「捕まったのか。」

 「そんなところ。どうなるかわからない。」「さあどうしよう。炎の刃で牢を壊して脱獄する?」

 「やめておきましよう。相手の出方を見ましょう。」「いつでも出られるからいいか。」

タダツグとセリアはベンヤミンの出方を待つことにする。機会は早く来る。兵が牢から2人を連行する。2人はベンヤミンがいる部屋に連れていかれる。そこは玉座の間だった。

 タダツグがセリアに言う。

 「ちょうどいいから、例の通路から逃げるか。」「まずは話を聞いてからにしましょう。」「静かにしろベンヤミン王の御前だぞ。」

セリアは前を見て、あれがヴァルハラ王国の王かと思う。ベンヤミンが兵に合図すると兵はタダツグとセリアの拘束を解く。

 「すみませんでした。勇者タダツグとセリア王女。」「私たちをどうするつもり。」

 「我が国は今、バシュラール魔王国に侵攻を開始しています。7000の軍勢です。さらに勇者6人が魔王ロックの討伐に向かっています。」「私たちを利用するつもり。」

 「バシュラール魔王国を倒したらバシュラール王国が戻って来るんですよ。」「ヴァルハラ王国の言うとおりに動く王国でしょうね。」

 「女王にして差し上げるのですから多少はお願いをするかもしれません。」「タダツグはどうするの。」

 「我が国は6人の勇者がいますが魔王は他にもいます。我が国の勇者になってもらいます。」「お断りします。私はタダツグと一緒にいると決めていますから。」

 「なぜだ。女王になれるんだぞ。」「私はタダツグといます。女王にはなりません。」

 「よく自分の立場を考えるのだな。牢へ戻しておけ。」

タダツグとセリアは再び拘束され牢へ戻される。ベンヤミンはこの時、6人の勇者の裏切りと3000の軍勢の殲滅を知らなかった。


 ヴァルハラ王国の貴族の軍勢が4000集まって移動している。彼らは先行した3000の軍勢と合流しようとしていたが見つからない。

 計画では3000の軍勢はバルテル男爵領に侵攻するはずだった。しかし、バルテル男爵領の国境に変化はなかった。ヴァルハラ王国側の門兵の話から3000の軍勢がバルテル男爵領へ向かったのは間違いない。

 4000の軍勢の貴族たちは方針を協議する。

 「我々はバルテル男爵領で合流して7000の軍勢となって王都に進軍するはずだった。」「だが3000の軍勢が消えてしまった。」

 「我々だけでバルテル男爵領を攻めるか。」「いや、いやな予感がする。3000が消えているぞ。」

 「なら、アスマン男爵領、ベーア男爵領のどちらかを攻めよう。4000いるからなまだいける。」「時間が惜しいからベーア男爵領を攻めるぞ。」

4000の軍勢はベーア男爵領を攻めることにする。軍はベーア男爵領に向かって進軍する。

 国境の門にはベーア男爵が率いる1000の兵が布陣している。魔術師のツェーザルが援軍としてベーア男爵についている。ベーア男爵がツェーザルに言う。

 「貴公は軍勢を全滅させると言ったが大規模魔法を使うことが出来るのか。」「私は風魔法しか使えません。ウインドカッターで一人残らず切り裂いて見せます。」

 「そんな基礎魔法で軍に対抗できるのか。」「はい、男爵の軍の手をわずらわすことはしません。」

 「分かった。期待しているぞ。」「成し遂げて見せます。」

そして地響きと共に4000の軍勢が現れる。門の塔にいる見張りから報告が来る。地面を埋め尽くす敵軍が現れたのだ。ベーア男爵とツェーザルは塔に登り状況を観察する。

 敵軍は門を打ち破るために巨大な丸太を用意している。ベーア男爵は兵たちに敵を門の中に誘い込んでから討ち取るように指示する。さらにツェーザルに質問する。

 「大軍勢だがやれるか。」「はい、まだ敵軍は集まっている途中です。集まってから全滅させます。」

敵軍は魚鱗の陣形に集まると巨大な丸太を持った兵たちが門に向かって走り始める。ツェーザルの頭上で空気が渦巻くように動き始める。

 巨大な丸太を持った兵たちが血しぶきを上げて何かに切られたようにばらばらの肉片に変わる。さらに敵軍が突然、赤く染まる。ツェーザルのウインドカッターは鎧も剣も関係なく切り裂いていく。

 門の中に血の匂いが漂ってくる。敵軍は赤い霧に包まれる。霧が晴れると軍勢は消えていた。代わりに血の池が出来上がり中には肉片が漂っている。ツェーザルはベーア男爵に報告する。

 「敵軍を全滅させました。」「ああ、確かに生きている者はいないな。」

門が開かれ外を見た兵たちは血染めの大地を見て言葉を失う。誰も勝利の歓声を上げる者はいない。ベーア男爵が兵たちに宣言する。

 「我々は勝ったぞ!鮮血のツェーザルを称えよ!」「「「おおっー」」」

ベーア男爵が4000の敵軍に勝ったことは、王城、アスマン男爵領、バルテル男爵領に報告される。それと共に鮮血のツェーザルの二つ名が広がる。

 街道から外れて国境を越えたロックたちにもベーア男爵の勝利が伝わる。


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