第5話 ヴァルハラ王国の軍の動き
タダツグとセリアはヴァルハラ王国へ入り、王都に到着する。街のところどころに汚れた服を着て座り込む人々がいる。一方、豪華な馬車に乗る人々は着飾っている。
貧富の差が激しいようだ。タリンの町でしばらく過ごしていたタダツグとセリアにはショックな光景だった。街の中も活気がないような気がする。
2人は、オルドビスの森で狩った魔物の皮などを売って現金を手に入れる。ここでは、バシュラール魔王国の通貨は使えない。
宿を決めて部屋に入るとセリアがタダツグに聞く。
「どうするつもり。」「夜になったら城に行くよ。」
「忍び込むのね。」「堂々と正面から行くつもりだけど。」
「そんなことしたら騒ぎになって目的どころではなくなるわよ。」「騒ぎになれば魔族が出てくると思ったんだけど。」
「その前に城の兵と戦うことになるわ。」「なら、忍び込むか。」
「城には隠し通路が作られているからそれを探しましょ。」「見つけるあてはあるの。」
「私は、元王女よ。何とかして見せるわ。」
タダツグは、城への潜入をセリアに任せることにする。
トウヤたちは町や村を通りながら王都に到着する。トウヤたちは、バシュラール魔王国がヴァルハラ王国と違って、貧困で街で座り込んでいる人がいないことを知る。
また、どこも人々に活気があった。アンドレアスが独り言を言う。
「俺たちは何をしていたんだ。魔王の国の人々の方が幸せではないか。」
トウヤがアンドレアスに言う。
「これから変えて行けば良いと思います。」「そうだな。」
トウヤたちは魔王ロックに会うため、城を目指す。
ディルクの所に軍の動きについて情報が入る。ディルクは、ロックとカールに報告する。
「国境に向けて軍が移動をしています。」「どのくらいの軍勢かな。」
「確認できているだけで3000人規模です。」「国を落とすには数が少ないな。情報は確かか?」
カールが疑問を口にする。
「軍勢はもっと増えるかもしれません。他に神の使徒がいるそうです。」「魔族だな。ヴァルハラ王国は神セベクを信仰しているが正体は魔王だ。」
「セベクは、魔王サタナキアが来たら、ビビって逃げ出した奴だ。自分のことを神だと言っていたな。」「そんなこともありましたな。」
カールがロックに言う。
「これは、リース様や四天王の意見を聞いた方が良さそうです。」「分かった。みんなに集まってもらおう。」
ロックは大広間に場所を移して話し合うことにする。セベクの名が出るとリース、四天王が嫌そうな顔をする。
「セベクとは何か因縁があるのかな。」「あれは、私に惚れていて何かあると迷惑行為をするのだ。」
リースの言葉にロックが反応する。
「よし、殺してしまおう。」「待ってください。あれでもヴァルハラ王国では神と言うことになっています。殺すとヴァルハラ王国の民衆が敵になります。」
「厄介だな。」「そうなんです。とっても迷惑なんです。」
フールが心の底から迷惑そうに言う。カールがいう。
「セベクが魔王だとわからせればよいのですね。」「民衆にこれまでの信仰が誤りだとわからせることは難題だよ。」
「セベクが神セベクになりすました魔王と言うことにすればよいのです。」「どうするんだい。」
「教会の存続を許す代わりにセベクを裏切ってもらいます。」「確かに教会の力を使えば何とかなるか。」
「只、教会の行っていることを黙認することになります。」「ロック様は教会が何かしていると考えているのですか。」
「いいえ、ふたを開けたら何が出てくるかわからないということです。」「セベクの教会ですから覚悟しておきましょう。」
セベクの処置について方向が定まると再びカールが発言する。
「わが軍は少数ですが敵に対応できますか。」「魔術師隊は、3人しかいないが1人で軍隊を壊滅させる能力がある。何なら今からヴァルハラ王国を灰燼に帰そうか。」
炎神パイロウスが自分の育てた魔術師隊を自慢するように言う。カールは汗をかきながら言う。
「そんなにすごいなら国境で攻めてくる軍を壊滅できますね。」「もちろん1人いれば十分だ。」
カールは、いつの間に化け物部隊が出来たのかと思う。バイロウスの言葉のままなら戦争のあり方を変える力があることになる。
「ゴブリン部隊やディートハルトの部隊はどうですか。」「兵士一人一人が一騎当千の力を持っている。敵が10倍でも余裕で戦えますよ。」
土の王グラムが太鼓判を押す。
「カール、ゴブリンやディートハルトたちは我が剣術を教えた敵など存在しませんわ。」
リースが自慢げに言う。カールはゴブリン部隊とオーガがかなり強いことをバシュラール王家の軍との戦いで知っていたが、今も成長を続けているのかと思った。
彼らが強すぎるということは、国境の領地を持つ貴族の軍と一緒に戦えないと考える。カールは頭の中で軍の配置、反撃の方法を考え始める。さらにセベクの配下に対する対処が加わる。




