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第11話 肉の壁

 オーガとアルフォンスの戦いは続いているがアルフォンスに疲れが出てくる。息が少しづつ荒くなる。削られる体力を精神力で補うが限界がある。オーガがアルフォンスに言う。

 「どうした動きに切れが無くなって来たぞ。」「すまんな。人間はオウルほど丈夫ではないんだ。」

 「そうか、だが手は抜かないぞ。」「当たり前だ。」

アルフォンスがオーガの首を狙って突きを繰り出す。オーガは大刃で聖剣を弾き飛ばす。大刃はアルフォンスに突き付けられる。

 「私の負けだ。殺せ。」「何を言っている。次も負けないぞ。」

オーガは座り込むアルフォンスをおいて前に進む。

 ヤコブの剣げきに聖騎士団長は押されている。すでに聖剣を持つ両手はしびれてしまっている。ヤコブは叫ぶ。

 「そこまでか!切り込んでこないか!」「無茶を言うなよ。」

聖騎士団長は限界に来ていた。手の感覚がなくなり聖剣を落としてしまう。ヤコブの剣が聖騎士団長の首をとらえる。だが剣は首に当たる寸前に止められる。

 「もう動かないのか。」

ヤコブは残念そうに言う。聖騎士団長は覚悟を決めて言う。

 「どうした。早く首を落とさないか。」

ヤコブは無言で右こぶしを上げて、勝利を宣言する。聖騎士団長とアルフォンスの敗退に聖騎士たちの心が折れる。まだ戦っていた聖騎士たちは剣を手放し座り込む。

 ゴブリンたちは聖騎士たちをおいて前に進む。オーガとゴブリン部隊の前に兵たちが立ちふさがるが士気は低い。目の前で聖騎士団が敗れたのだ。

 自分たちの手に負える相手ではない。オーガは兵たちに大声で言う。

 「死にたくなければ、そこを開けろ!」

兵たちは無言で道を開ける。ロックたちはそこを抜けて聖都に向かう。聖都の門は閉じられていた。フールが前に出て風魔法で門をばらばらに切り裂く。ロックたちは街の中に入る。

 門には守りの兵がいないばかりか、街から人の気配がしない。ロックがカールに言う。

 「おかしい。人の気配がないよ。」「教会に避難しているのでしょうか。」

 「住民は巻き込みたくないな。」「状況次第です。まさかとは思いますが住民を人質にしている恐れがあります。」

 「そんなことして何になるの。」「ロック、あなたが優しいからですよ。」

 「もしそうならキーシリングを許せないな。」

カールは住民が教会に集められているとすれば、間違いなく肉の壁に使われていると考える。その時、温厚なロックが怒るだろう。その手はロックに対して下策になる。

 ロックたちは通りをまっすぐ進んで教会に向かう。前方を行くオーガから連絡が来る。

 「教会近くのとおりに人々が座り込んで祈っています。」「なんだって、敵の姿は見えないか。」

 「分かりません。近づけばわかるかと。」「このまま前進する。住民には手を出すな。」

カールの考えは的を得ていた。ロックの顔が険しくなっている。オーガから連絡がある。

 「住民たちが教会周りの道を埋め尽くしていて教会に近づけません。」「分かった。僕が住民と話す。」

ロックは前に出て、座って祈っている住民に言う。

 「何をしている。通してくれ。」「できません。私たちはコール神の啓示でここで祈り信仰を試されているのです。」

 「教会にいるのはコール神ではない、魔王キーシリングだ。私はこの国を救いに来たのだ。」「魔王の言うことを信じることはできません。」

 「本物の神ならこのようなむごいことはしないぞ。」「それは・・・」「だまされるな。」「魔王の言うことを聞くな。」

ロックは信仰心の深い住民と会話することは不可能だと判断する。カールが言う。

 「残念だが。住人を踏みつぶして進むしかないぞ。」「待ってくれ。」

ロックは四天王に言う。

 「パイロウス、エスリム、グラム、フール、住民に被害を出さず、教会に突入できるか。」「私かパイロウスの風魔法で教会まで運びましょう。」

フールがロックに答える

 「分かった。僕と四天王で教会に向かうぞ。」「「「はっ。」」」

フールが風魔法を発動させると5人の体は宙に浮く。ロックが珍しく怒りをあらわにする。

 「キーシリング絶対に許さないぞ。」「婿殿、落ち着いてください。」

フールが焦って忠告する。

 「落ち着ていられるか。」「これもキーシリングの策略かもしれませんよ。」

 「分かった。冷静さを欠いていたよ。」「それでこそ。婿殿です。」

ロックと四天王は、信者たちの壁を飛び越えて教会に向かう。

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