第9話 キーシリングの配下の戦い
トウヤは、町が静かになったのでこのまま見張っているだけで終わりだと思う。しかし、数日後、町から歓声が聞こえてにぎやかになる。
ユキコがトウヤに言う。
「町に援軍が来たのではないかしら。」「よほどの大軍でなければ結果は同じさ。」
ツェーザルがトウヤに言う。
「強い魔力の気配を感じませんか。」
トウヤたちは意識を集中して気配を探る。セネカが言う。
「いるけど、人間ではないわ。」「私は魔族ではないかと思います。魔族にしては魔力が弱いですが。」
ツェーザルが自分の意見を言う。彼の魔族の基準はパイロウスなのでキーシリングの配下では弱すぎたのだろう。
「ちょっと冗談じゃないわ。魔族なんて勝てるの。」
サチが慌てて言う。ツェーザルが答える。
「あの程度なら大丈夫ですよ。」「どちらにしろ戦うだけだ。」
トウヤは覚悟を決める。町の歓声が大きくなる。町の門が開いて灰色ローブの者が出てくる。
「出てきましたよ。」「作戦はあるかな。」
「私はウインドウカッターで切り刻むだけですが、魔族だと回復しようとするでしょう。そこでサチ様の力が必要です。」「私が必要なのですか。」
サチが赤くなっている。何か勘違いしているようだ。
「私が必要なのは炎熱魔法です。」「私はいらないの。」
「あ、あの今は戦いに集中しましょう。」「分かりました。後で話してくださいね。」
セネカがサチに言う。
「サチ、ツェーザル様のこと気に入ったの。」「落ち着いて大人という感じがいいのよ。」
「ただの無口だと思うけど。」「かっこいいわ。」
セネカはサチの感性を理解できない。セネカが見ると無口な根暗に見えるのだ。
話しているうちに灰色ローブは丘の下に近づいている。ツェーザルがサチに言う。
「行きますよ。合図したら渦に炎熱魔法を打ち込んでください。」「わかった。」
灰色ローブの周りの空気が動き始める。だんだん動きが激しくなり空気は渦を巻く。灰色ローブを無数のウインドウカッターが切り裂く。灰色ローブは多量の出血をして渦は赤く染まる。
ツェーザルがサチに合図する。
「今です。」「いくよ。」
サチは杖を渦に向けて炎熱魔法を撃つ。空気の渦は炎の渦となり渦の中は１０００度を超える高温になる。灰色ローブは切り裂かれながら焼かれる。これでは回復は間に合わない。
灰色ローブは切り刻まれて小さくなりながら、焼き尽くされて灰になっていく。灰色ローブは何もできずに消えていく。ツェーザルがホッとしたように言う。
「何とかなりましたね。」「僕たちは何もしていないけどね。」
トウヤは今回は活躍する場がないと考える。するとツェーザルが言う。
「魔族はどんな力を持っているか分かりません。何かする前に倒した方が良いです。」「そうだね。おかげで犠牲は出ていないよ。」
サチが割り込んでツェーザルに言う。
「ツェーザル様は私をどう思っているのですか。」「あなたの炎熱魔法は素晴らしい。訓練すればかなりの戦力になると思いますよ。」
「私はツェーザル様と御付き合いをしたいのです。どうお考えですか。」
サチはツェーザルは相当鈍いと感じ、ド直球の質問をする。
「私は、ウインドウカッターしか使えない不器用な人間ですよ。迷惑かけるかもしれませんよ。」「構いません。」
「私はサチ様をかわいらしいと思っています。私でよいなら、お願いします。」「好きです。」「私もです。」
トウヤたちは、ユキコとケンゴと続き二組目のカップルが出来る。
アンドレアスたちの所にもキーシリングの配下の灰色ローブが現れる。エリーがアンドレアスに言う。
「私が倒してしまっても良いですか。」「あれはおそらく魔族だぞ。勝てるのか。」
「余裕です。私たちを格下と決めてかかっていますから。」
灰色ローブはアンドレアスたちに１００メートル位近づくと両手を広げて両手に魔弾を作りだす。そして、魔弾を撃ち出す、エリーは魔力障壁を最小限の力で作りだして、魔弾を斜めに受け流して魔弾の軌道を変える。魔力障壁は魔弾が当たった瞬間砕けてしまう。灰色ローブが勝ち誇った様に言う。
「脆弱、おのが無力さを覚えて死ぬがいい。」「行きますよ。」
エリーは地面に両手をつく、電撃が地面を走って、灰色ローブを襲う。高電圧にローブは燃え出す。灰色ローブは黒焦げになる。エリーはアンドレアスたちに叫ぶ。
「走って避難してください。」
エリーの頭の上に直径５メートルほどの火球が現れる。アンドレアスたちは逃げ出す。火球はバレーボールほどの大きさに圧縮される。エリーは黒焦げの灰色ローブに向けて火球を撃つ。
爆発が起き、高温の衝撃波が襲って来る。エリーは地面に伏せて魔力障壁を張る。アンドレアスたちは後ろから衝撃を受けて投げ出される。灰色ローブがいた所にはマグマの池が出来ている。
エリーは起き上がり、魔力の気配を探すが見つからない。灰色ローブは消滅したようだ。アンドレアスたちが戻ってくる。アンドレアスはマグマの池を見てエリーの力は本物だと思う。
