第13話 リザードマンの戦士「ハイツ」
リザードマンの戦士は、タリンの議員に訴えかける。
「オルドビスの森からスタンピードが起きる。町の住民を避難させてくれ。」「証拠があるのか。お前もオルドビスの森の魔物じゃないか。何を企んでいる。」
「何も企んでもいないし、俺たちは魔王ロックに忠誠を誓っているんだ。」「まあいい、警戒を強化しよう。ロック様にも連絡は入れておこう。」
「オルドビスの森の魔獣たちだぞ。スタンピードが起こったらタリンは飲み込まれてしまうぞ。」「タリンにも冒険者がいる。ご苦労だった。」
リザードマンの戦士は話をまともに受け入れられず、途方に暮れる。このままだとタリンは住民ごと全滅する。その罪をピエール様はかぶるつもりだ。
このままではいけない。リザードマンの戦士は通りに出ると叫び出す。
「逃げてくれ、スタンピードが来るぞ!」
繰り返し叫んでいると住民の注目を集める。リザードマンの戦士を住民が遠巻きに囲む。中から腕っぷしの強そうな男が3人出て来て言う。
「何を叫んでいる。トカゲ野郎、うるせいぞ。」「聞いてくれ。オルドビスの森からスタンピードが起こるんだ。逃げるんだ。」
「心配するな、化け物なんざ俺たちがやっつけてやる。」「バカなことを言うな。町が飲み込まれるぞ。」
「しつこいぞ。やってしまえ。」
3人の男はリザードマンの戦士を袋叩きにする。リザードマンの戦士は地面に転がり動かなくなる。
「トカゲがいい気味だ。」
3人の男が去っていくと住民は興味を失ったようにその場から離れる。リザードマンの戦士は気がつくとボロボロの体を引きずって歩き出す。
歩みは王都に向かっている。ロック様なら話を聞いてくれる。リザードマンの戦士はまだあきらめていない。
リザードマンの集落では、バッカスの実を集めている。メルヘムがじれてピエールに言う。
「まだ、バッカスの実は集まらないのかな。」「オルドビスの森中の魔獣を動かすのです。もっと集める必要があります。」
ピエールは時間かせぎをして、メルヘムが隙を見せる時を待つ。しかし、メルヘムはピエールから目を離さない。時間稼ぎにも限界があった。
メルヘムはピエールに指示を出す。
「バッカスの実はこれだけあるのだ。並行して薬を作らせろ。」「分かりました。」
ピエールは人員を裂いて薬づくりを始める。ピエールは薬の作製を遅らせたかった。すでに十分な材料がそろっている。それから1週間経ってメルヘムは我慢できなくなる。
「もお、いいかな。今ある薬を使ってスタンピードを起こすかな。」「これでは量が足りません。」
「かまわないかな。オルドビスの森の魔獣は強力かな。」「分かりました。作戦を実行します。」
その頃、リザードマンの戦士はロックに面会していた。
「オルドビスの森でスタンピードが起きます。タリンの住民を避難させてください。」「ディルク、オルドビスの森周辺の町や村に避難するように連絡してくれ。」
「はい、直ちに。」「カール、対処はどうする。」「ゴブリン部隊に対処させましょう。」「うん、そうしよう。」
ロックはリザードマンの戦士の話を聞いて即決する。そして、リザードマンの戦士に質問する。
「君はスタンピードが起きることをどうして知った。」「それは、メルヘムという魔族がピエール様にスタンピードを起こすように命じたのです。」
「族長のドラクはどうした。」「幽閉されています。今、リザードマンの集落はメルヘムに支配されています。」
「メルヘムか、聞いた名前だな。」「ヴァルハラ王国で動いている宝石商の名です。」
「そうだ、ピエールに名を与えた魔族だ。」「ディートハルトの部隊に討ち取らせましょう。」
「ああ、君には案内役をしてもらうよ。」「はい、承りました。」
「名前がないと不便だから名付けよう。ハイツにしよう。」「感謝します。このハイツ、ロック様に身も心も捧げます。」
ゴブリン部隊、ディートハルトの部隊が出陣する。オーガがロックの所に来て言う。
「戦いなのになぜ俺を使わない。」「分かった。タリンに向かってスタンピードの被害を防いでくれ。」「よし、やるぞ。」
オーガは大刃を担いで走って行く。
オルドビスの森ではリザードマンたちが布袋に入れた薬を森の各所に仕掛ける。匂いにつられた魔獣が集まって来る。魔獣が布袋を破って薬が飛び散る。
魔獣たちは薬に酔っていく。魔獣は凶暴性を高めていく。そこをリザードマンの戦士が気を引いて誘導していく。魔獣たちが一斉に動き出す。




