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第4解 ショートするらしい

はじめに、この物語はフィクションである。実際の実名や地名とは、一切関係がないが、安全のため、この物語に出てくる依頼者の名前は全て依頼者○のような形になっていることをご容赦いただきたい。

 「いらっしゃいませ、まず、お名前と本日のご用件をお話しください。」

大平は笑顔で言った。

「え、えーと、僕、<依頼者D>って言います。僕の呪い、解いてくれると聞いたもので。」

帽子をかけてランドセルを背負った少年、<依頼者D>は緊張しながら言った。

「うーん、ここは、道草食いながら遊び半分で来るところじゃないんだけどな。」

大平は困っていた。しかし、<依頼者D>は真剣な目をして、

「遊び半分なんかじゃありません!」

と言った。

「お母さんは?」

大平は聞いた。

「う、この呪い、お母さんからかけられたから何も言えなくて。」

<依頼者D>は言った。大平は驚いた。こうなっては、話は変わってくる。「解呪法」では、通常、小学生以下の人が業者に解呪をお願いするときは、保護者が同伴でなければならないのだが、もし保護者が呪いをかけており、それが、本人において不利益と感じた場合には、例外的に保護者同伴でなくても解呪が許されるのだ。こうしたことは、大平の経験上でも一切なかったことだ。大平は聞いた。

「<依頼者D>さん。では、率直にですが、どのような呪いにかかっているのか、お教えいただけますか?」

「え、えーと、ショートするんです。」

「ショートする?」

「はい、僕が電子機器に触れるとショートして壊れるんです。それで、この前、授業でパソコンを使ったんですけど、どうやら、この呪いは学校のパソコンにも影響があるらしく、授業が始まってすぐにパソコンがショートしてしまって、授業ができないんです。」

ここで、大平は疑問に思った。

「なぜ、あなたのお母さんは、こんな呪いをあなたにかけたんですか?」

すると、<依頼者D>は苦笑いをしながら、

「実は、ゲームをやりすぎて勉強していなかったのが親にばれて……。」

と言った。大平は納得した。大平は、究極の問いに迷っていた。このまま、<依頼者D>の呪いを解いてしまったら、パソコンなどの勉強はできるかもしれないが、また、ゲームをし始め勉強を怠る危険もある。大平は言った。

「うーん、パソコン使わないで授業ってできないのですか?」

「先生は、無理だから呪いを解いてもらえって言って、ここを紹介してもらいました。」

<依頼者D>は言った。しかしながら、これはゲームをしたい<依頼者D>の嘘の可能性もあると感じた大平は聞いた。

「何かそれを証明するものはありますか?」

「これです。親には見せるなと言われました。」

<依頼者D>はそういって、紙を渡してきた。これは、公的機関が発行する「解呪依頼書」。これは、公的機関がなにかしらの複雑な理由によって解呪しなければならないときに発行するもので、基本的にこれが発行されたならば、業者は従うことが義務であり、これに従わなかった場合は、数百万円の罰金や禁錮刑、免許はく奪となる。例外として、呪いにかかっていなかったときは、「診断書」を発行すれば、解呪の義務は免れる。大平は少し悩んだ。そして、最後は本人の意思に託そうと思った。とはいえ、「解呪依頼書」には、従わなければいけないので、どう答えても解呪することは変わらない。もちろん、<依頼者D>には呪いが確実にかけられていたので、「診断書」の発行もできない。

「うーん、では、仕方がありませんね。あなたはこれによって、学校の授業をきちんと受けることができるでしょう。しかし、またあなたがゲームに没頭して、成績を下げ、また同じ呪いにかけられる可能性だってあるかもしれません。それでも、解呪しますか?」

<依頼者D>は、もちろんですとでもいうように、

「はい。」

と言った。

「それでは、解呪を始めます。」

大平は言った。

 大平は勢いよく手をたたき、呪文を言った直後、かっと目を見開いた。すると、<依頼者D>の体は光りはじめた。そして、大きく風が巻き起こった。そして、<依頼者D>の呪いは解呪された。

「これで、解呪されました。」

大平は言った。

「え、終わったんですか?」

<依頼者D>は言った。その時、後ろから女の声が聞こえた。

「あ、ここにいた!太郎!何してるの!」

<依頼者D>は言った。

「あ、お母さんだ。」

女、つまり<依頼者D>の母は、<依頼者D>のほうへ走ってきた。そしてまた、<依頼者D>の母は言った。

「何をしてたの。」

「呪いをこの人に解呪してもらったの。」

<依頼者D>は言った。

「え、まさか、あの呪い、解呪したんですか?」

<依頼者D>の母は青ざめた顔で言った。

「はい。」

大平が答えると、<依頼者D>の母は怒り気味で、

「で、でも、呪いを解くときは、保護者同伴って決まって……。」

と言ったが、食い気味に大平は、

「あ、あ、でも、『解呪法』では、保護者がかけた呪いの解呪の場合は、同伴じゃなくてもいいので……あ、あと、公的機関、つまり学校などから発行される『解呪依頼書』も持ってきましたので。『解呪依頼書』が渡されたら、こちらも従わなければなりませんので。」

と解説した。これを聞いて、<依頼者D>の母は落ち着いた。そしてこう言った。

「で、でも、この子はまたゲームをしてしまうかもしれない。どうすればいいですか。」

大平は解説した。

「えーと、何も電気製品を全般禁止にする呪いではなく、ゲームの時間を制限する呪いをかけたらよいのでは?ゲームも禁止となったら、お子さんには負担でしょうし、全般禁止にしたら、今回のように、学校の備品を壊しかねないのでね。あなたも呪いをかける能力はあるようですから、うまくいけば、お子さんの成績も……。」

「アドバイス、ありがとうございます。で、今回、おいくらでしょう。」

<依頼者D>の母は言った。

「いえ、お代は結構です。『解呪依頼書』によって解呪した場合は、その分、国から補償金が出ますから。」

大平は言った。

「ほ、本当にありがとうございました。」

<依頼者D>の母は深々と頭を下げて言った。

「ありがとうございました。」

<依頼者D>も小さく言った。

「結構、結構。では、ありがとうございました。次回もどうぞごひいきに。」

大平は笑顔で言った。

 こうして、<依頼者D>と<依頼者D>の母は帰っていった。その後ろ姿は、来た時よりも真面目になり、安心した姿に見えた。その姿を見て、大平は、ポケットから携帯ゲーム機を出して、

「ゲームは誰だってやめられないよね。」

と言った。

次回 第5解 いじめられているらしい 現在公開中

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こんにちは、明日あす とおるです。

霊能力者れいのうりょくしゃ 大平おおだいら格安かくやす解呪かいじゅしますの第4解を読んでいただき、ありがとうございます。今回は、ゲームをやめられない小学生の話でした。まあ、ゲームというのは、一度ハマったら抜け出せない底なし沼みたいなところもありますよね。ある程度スケジュール管理ができるようになった大人でも、抜け出せないことが多くあるみたいです。別に他人の家庭のルールにどうこう言うつもりはありませんが、ゲームを禁止するために、電化製品を全て故障させる呪いをかけるのは、少し行き過ぎた教育かなとは思います。今は、GIGAスクール構想とかで、電子機器を利用した教育も増えてきているみたいですから。さて、次回は、「いじめられているらしい」……相当嫌な予感がします。実は、次回の話は投稿するか相当迷っています。というのも、それくらい、悲しい物語なのです。人をどこまで信じることができるか、が大きな焦点になります。どうか、次回は覚悟をもって読んでみてください。

次回もお楽しみに。

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