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第2解 なぜだかモテるらしい

はじめに、この物語はフィクションである。実際の実名や地名とは、一切関係がないが、安全のため、この物語に出てくる依頼者の名前は全て依頼者○のような形になっていることをご容赦いただきたい。

 「いらっしゃいませ、まず、お名前と本日のご用件をお話しください。」

大平は笑顔で言った。

「あの、僕、<依頼者B>っていいます。僕の呪いを解いてもらえると聞いたのですが……。」

清純系の男、<依頼者B>は少しよそよそしく言った。

「<依頼者B>さん。では、率直にですが、どのような呪いにかかっているのか、お教えいただけますか?」

「あのー、モテるんです。」

大平に何かが刺さった。

「こういう方の解呪はまた別の……」

と大平が言いかけた時であった。食い気味に<依頼者B>は、

「違うんです。」

と否定した。

「僕は現実ではモテません。」

大平は何かを察した。

「あー、現実と空想がごっちゃ……」

と大平が言いかけた時、またしても食い気味に<依頼者B>は、

「幽霊に……モテるんです。」

と言った。大平は納得した。

「あー、なるほど、だから、後ろに色々いるんですね。」

「はい。」

<依頼者B>はうなずいた。大平は気づいていた。実は、<依頼者B>の後ろには、多くの浮遊霊がまとわりついていたのだ。

「もしかして、あなたも“見える”人ですか。」

大平は言った。すると、<依頼者B>は少し明るくなって答えた。

「ええ、昔からこういうのが“見える”たちでして。一応、解呪業者の資格も取ろうかと思ったんですけど、親に反対されて……。」

「ああ、よくわかりますよ。私も一時期、嫌な目で見られたものです。」

大平は一瞬、話に花を咲かせて、仕事を忘れそうになったが、ギリギリ大丈夫だった。

「うんで、霊にモテるってのは?」

「えーと、先ほども言ったように、僕は解呪業者の資格を取ろうとしたときに、親に反対され、大平さんも言うように、嫌な目で見る人も多くいました。そして、私の友人がですね、ものすごくモテるんですよ、現実で。で、彼に『僕もここまでモテたらな』って言ったんですけど、どうやら、気に障ったようで、『どうせなら、幽霊にでもモテてろ』とこの呪いをかけられたんですね。」

「と、いうことは、その友人も……。」

「“見える”……人です。」

<依頼者B>は静かに言った。

「そいつ、最低ですね。」

大平は言った。そして、大平はつづけた。

「では、それ以来、幽霊にモテるようになったと……。」

「ええ、夜中にポルターガイストが起きたり、布団の上に現れたりしてですね。まあ、昔から見えてたんで、こういうのには慣れっこで、脅してきた霊は、ちゃんときれいな見た目にしてあげて、話を聞いてあげてるんですがね。」

「それは、随分と律儀なもんで。」

「ええ、まあ、男の霊はカッコいいし、女の霊もまあ可愛らしい見た目をしているんですがね、霊と付き合うなんて言うのもおかしいし、なんか……嫌じゃないですか……。」

<依頼者B>は言うと、後ろから、

「嫌なんてひどい!」

と可愛らしい声が聞こえてきた。大平は<依頼者B>の後ろに目を向けた。すると、多くの霊がいるわけだが、そのうち1人の女が<依頼者B>に近寄って浮いていた。

「ああ、彼女は<幽霊A>さん。見ての通り、霊です。どうやら、いじめの被害にあったとか何とかで、命を落としたそうですが……。霊の彼女なんておかしいですよね?」

<依頼者B>は説明して、かつ質問もした。大平は答えた。

「えーと、実は霊と付き合ってる人は私の友人の中では結構いますよ。」

「そうなんですか!?」

<依頼者B>と<幽霊A>は驚いた。後ろの浮遊霊の集団もざわめいた。

「でもね……、あなた、こんだけいたら、生活大変でしょう。」

大平は言った。

「ええ、結構大変です。」

<依頼者B>は言った。そして、大平は神妙な顔で言った。

「あなたは、それでも、楽しいと思っている。」

「……!?」

<依頼者B>は驚いた顔をした。大平は言った。

「話を聞いている限りでは、嫌というより、楽しんでいる感じでしたよ。別に暗くなっているわけでもない。では、聞きます。最悪、ここにいる霊、<幽霊A>さんを含めた全ての霊があなたに興味を示さなくなるかもしれません。それでも、解呪しますか?」

<依頼者B>は少し考えて、

「はい。」

と言った。少し考えたといっても、<幽霊A>にちょっと待ってと言わせる余裕まではなかった。

「それでは、解呪を始めます。」

大平は言った。

 大平は勢いよく手をたたき、呪文を言った直後、かっと目を見開いた。すると、<依頼者B>の体は光りはじめた。そして、大きく風が巻き起こった。そして、<依頼者B>の呪いは解呪された。

「これで、解呪されました。」

大平は言った。

「本当に……?」

<依頼者B>はきょとんとしているが、効果はてきめんのようで、後ろにいた多くの浮遊霊は、何かが違う、と皆離れていく。しかし、一人だけ離れなかった霊がいた。<幽霊A>だ。

「<幽霊A>さん……どうして……。」

<依頼者B>は言った。すると、<幽霊A>がほほ笑んだので、大平は言った。

「もう言っていいのではありませんか。<幽霊A>さん。」

その言葉を聞いて、<幽霊A>は言った。

「私、浮遊霊じゃないのよ。」

「ど、どういうこと?」

<依頼者B>は焦っていた。<幽霊A>は説明を続けた。

「私は生霊。いじめられていたのは本当だけど、命を落としたのは嘘。ある日、あなたを好きになって、どうにかして、あなたに近づけないかなと思ったの。それが、あなたの呪いに便乗することだったのよ。」

「そんな……、ま、まさか、大平さん、気づいていたんですか!?」

<依頼者B>の言葉に大平は、

「ええ、<幽霊A>さんから違うにおいがしましたから。」

と答えた。そして、続けてこういった。

「<幽霊A>さんは生霊。つまり、本体はまだ生きているということです。もし、<依頼者B>さんが本当の<幽霊A>さんを見つけることができるのであれば、もしかしたら……。」

「はい、頑張ってみます!」

<依頼者B>は大きな声で答えた。

「で、代金のほうは……。」

<依頼者B>は恐る恐る聞いた。

「3000円です。そこに書いてあるでしょう。」

大平は張り紙を指さして言った。それを聞くと、<依頼者B>は3000円を財布から取り出し、大平に手渡しこう言った。

「大平さん、ありがとうございました。あなたのおかげで、僕、新しい生活に進めそうです!」

「結構、結構。では、ありがとうございました。次回もどうぞごひいきに。」

大平は笑顔で言った。

 こうして、<依頼者B>と<幽霊A>は帰っていった。その後ろ姿は、来た時よりも幸福感に満ち溢れ、楽しそうな姿に見えた。その姿を見て、大平は、手元のテーブルを思いきり殴って、

「くそっ!私だってこんな恋してみたい!」

と声を荒げた。

次回 第3解 思い出せないらしい 現在公開中

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こんにちは、明日あす とおるです。

霊能力者れいのうりょくしゃ 大平おおだいら格安かくやす解呪かいじゅしますの第2解を読んでいただき、ありがとうございます。今回は……うん、何というか……はい、って感じの人でしたね。ここで爆発しろとか言ってはいけませんよ。<依頼者B>さんは、呪いにかかっていただけなのですから。(まあ、<幽霊A>さんはいますけど。)とにかく、次回は、「思い出せないらしい」……思い出せないのは呪いではないような気もしますが……一体何かあるのでしょうか?

次回もお楽しみに。

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