8 スパイは見た
「ちょっと新人!掃除が終わってないわよ!」
そう言って先輩が掃除するはずのお部屋を掃除させられました
・・・この子爵家は終わってますね
どうも名もなきスパイです
現在は某子爵家に下っ端メイド ~オールワークス~ として潜入中です
スパイ(わたし)が派遣される家というのは大抵は問題がある家です
いや問題がある家にしか派遣されないから当然ですけどね(笑)
この子爵家も御多分にもれず酷いことになっています
上が腐ると下も腐る
これはスパイ仲間の標語ですが本当に当てはまっているから驚きです
もっとまじめに働きなさいと言いたくなります
まあ言わないんですけどね
どうせ悲惨な未来は決まっています
今のうちにせいぜい自由を満喫するがいい
そして後で地獄を見るが良い
・・・スパイ(わたし)も大概に性格が悪いですね(苦笑)
本来のお仕事はメイドの無能を調べることではありません
子爵家の乗っ取りの有無です
なにせ入り婿なのに子爵家の当主を名乗っているのです
代理をいつの間にかはずしているという悪質さ
もう有罪です
とはいえ証拠もなく断罪はできません
と言う訳でスパイの出番です
見たまま聞いたままをレポートして提出します
16歳の先妻の娘が子爵家の当主の仕事をしている
子爵家の当主代理である父親は愛人を引き入れて碌に仕事をせずに散財している
愛人は子爵家の夫人の顔をしてお茶会や夜会に出ている
知らない貴族達は見事に騙されて子爵、子爵夫人と認識している
愛人の娘は平民であるにもかかわらず子爵令嬢を名乗っている
先妻の娘はメイドにまで迫害されている
先妻の娘の身体には折檻の後がある
先妻の娘は碌に食べさせて貰っていないのでガリガリである
メイドからのイジメは日常茶飯事である
愛人の娘からのイジメも日常茶飯事である
出るは出るは書かなければいけない虐待の証拠
・・・スパイ(わたし)を過労死させる気ですか、と言いたかったです
まあ子爵の寄り親である伯爵様にレポートを出したのです
そのうち対応されることでしょう
ということで断罪の日までばれないようにひっそりと暮らすスパイ(わたし)でした