17 子爵家の料理人の見習いの話
「悪いが他を当たってくれ」
そう言って料理人は断られた
それはそうである
仕えている子爵家の令嬢に碌に食べさせていなかったのだ
そんな人間を雇う者は居なかった
事の起こりは子爵家の奥方が死んだことだった
葬式が終わると早々に夫である子爵代理は愛人を屋敷に連れ込んだん
それも大きくなった娘を連れて、である
そして子爵家は代理とその愛人に牛耳られることとなった
当然のことながら愛のない結婚で生まれた先妻の娘は放置された
いや愛人の娘により虐待されていた
そんな雰囲気なので屋敷に仕えているメイド達も段々態度が悪くなっていった
なにせメイドと言っても男爵家や子爵家の子供なのだ
立場はそんなに変わらない
だったら多少は粗末に扱っても良いよね
そういう雰囲気になるのは早かった
まあ次男、次女以降の要らない存在ではあるので、良識ある人が見たら
「身の程を知れ!」
と叱責されたことだろう
話を戻す
メイドがそうならば厨房の料理人もその影響を受けることとなった
まあ料理人は全員平民である
貴族の子女は肉体労働はしないからである
平民ゆえメイド達が作り出した雰囲気に流されてしまったとも言える
ある意味被害者であると言って良いかもしれない
しかし当然のことながら悪いことをするといつかはバレる物である
もっとも大半の人間は知らないが子爵家の令嬢からのSOSにより伯爵が動いたので必然ではあったのだが・・・・
まあメイド達よりは罪が軽いとされた料理人の見習い達は、直接的に虐待に加わっていなかったこともあって比較的早期に釈放された
まあ紹介状は書いて貰えないのはお約束であった
かくして料理人の見習い達の未来には冒頭の惨劇が広がることとなった




