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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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クッションボール

民放、朝の新番組の企画書を見せてもらった。

チンプンカンプン 意味不明だった?!

『ブレインチャイルド』とは、

どんな内容の番組なのかすら皆目(かいもく)わからず。

理解できたのは、

小学低学年用の教育を目的とする、

月~金の (ベルト) 放送というコトだけ。


有能ゆうのうコメディエンヌが

キャンセルしたのも無理ムリはない。


アスカは尻込しりごみした。

「もう契約書をわしたので、

キャンセルはできませんよ」

マネージャーはしれっ(・・・)と言った。

「だいじょうぶ。

私のカンはてたものではない」


「もし、まちがっていたら?」不振顔(ふしんがお)のアスカ。


「たら・れば・もし・でも・賃上ちんあげ は封印ふういんする!

うちの事務所のモットーじゃないですか。

たかだか半年。

ガンバレないわけはない。

わたしはねタレントに、

できない仕事を強制したことはないです」


「(現在進行形で・・

  立派に押し付けてるじゃないか・・)」

 アスカは反論しかけたがやめた。

高木マネージャーは

基本、フェアだったからだ。

こごえるような、ある冬の日、

タレントはビジネスホテルのシングル部屋。

経費を切り詰めて、

高木さんは 車中泊(しゃちゅうはく)したっけ。

浪花節なにわぶし には弱いンである。

 

アスカはDJ用の発声訓練と並行して、

歌と踊りのレッスンを受けた。

後者は新番組『ブレインチャイルド』に不可欠ふかけつな、

実践じっせん的かつハードなものだった。

━ ダンスは、

器用きようかたまりと称される(しおり)の実はウィークポイントである。

 演技と違って、

踊りはイメージ通りにいかない難物なんぶつ

  ・・得意の カンばたらき が発動しない・・

  芸能界デビュー以来、久々に味わう凡人ぼんじん気分。

  苦手科目の克服こくふくは努力あるのみ!

  ガッツ全開でぶつかっていった ━


新番組の収録が進んでいくにつれて、

内容を、皮膚ヒフ感覚で理解・把握はあくした。

子供向け教育番組を 標榜ひょうぼう

その実、中身はギャグのつるべ打ち(・・・・・)

ぶっとんだバラエティーショーだった。


学習要素を含んだ、

ショートコントやナンセンスギャグを、

速いテンポで 炸裂さくれつさせる。

ギャグ入りの短い歌や踊り(ダンス)

体を張ったアクション、

ブラックユーモア、

ときにはアニメーショもまじえて、

連続CM(ふう)な構成で、連発させた。


TVの前の子供たちは大喜びした。

速射砲そくしゃほうのようなテンポに、

ダイレクトに反応したのだ。

15分という放送時間もよろしく、

「もっと見たい!」 欲求よっきゅうつのらせた。


アスカ(汐)は・・

「よーい、スタート!」の合図により、

カメラの前で、

簡易かんいなセットの中、

いきなりコントを演じるのには めんくらった。

(リハ1回で本番GO。予習必須!)

スリル満点の現場である。

心臓バクバクだ。

ただし、れると面白い。

コントは━(汐の)━ しょうに合っていた。

自分で自分に吹き出してしてしまうことも、

一度や二度ではなかった。

スタッフ、演出家も巻き込まれて、

大笑い大会になってしまったこともある。


コントの実例をあげる。


①自宅が火事になる。

  あわてて黒電話で119番するアスカ。

 「もしもし、〇〇番地の 大道おおみちです。

  火事です。燃えてます。

  大至急、お願いします・・ああ火が迫ってくる!」

  すると、どーゆーわけか、

  送受話口から すざまじい量の水が放出。

  びしょ濡れになるアスカ!


②絶望して世を (はかな)んだアスカ。

  高いビルの屋上に立っている。

  脱いだハイヒールのかかと下には遺書が置かれている。

  「お父さん、お母さん、

  先立さきだ不孝ふこうをお許しください。

  さようなら・・」とつぶやき、

  合掌がっしょう ポーズで飛び降りる。

  地面に激突!

  どーゆーわけか、地面が真っ二つに割れ、

  そのまま突き進み、

  メルトダウンしたまま

  地球の向こう側に突き抜ける。


演者は無名むめいながらツブぞろい、

台本もえている(複数体制)、

演出家はツボをはずさない、

製作費も過不足なく使い・・文句なし。

参加できてラッキーだった。

有能コメディエンヌさんありがとう。

そして・・高木マネージャーの手腕しゅわんにカンパイ!


コントを演じていて、

音感こそが キモ だということを 汐は知った。

「ダンスのとき や カメラの前で歌う際に・・

《 曲 》は・・歌詞でなく、

小節(・・)でカウントしなさい」と、

演出家(ベレーさん) に口をっぱくして言われた。

その意味を理解できたのは、

はるのちのこと。

ある日、 しおりは、

なるほど!とに落ちた(アハ体験である)。


番組は好評を博し、半年の予定が三年も続く、

(一時間の特番を三回(はさ)み)

スマッシュヒットとなった。

大道アスカは最後までレギュラーを務め上げた。

人気者となり、CM出演するまでになった。


一方、ラジオでは高聴取率を誇る、

看板番組『大道アスカのビッグロード』(土曜21時~24時)

を持つDJに成長していた。

ただし・・これらは未来編である。


ラジオアシスタントや『ブレインチャイルド』で、

ブレイクし始めたときに、

『ケン・ユミ』パック に招かれ、

共演を果たしたところまでが、

好評放送中の『サスティーン』の、

現時点までのあらすじである。


全156回予定の50話を消化した。



 ━ 付録 ━

◇ちなみにネットでは、

  20年に一度の割合わりあい彗星スイセイごとく現れる

  「超達者=天才的なタレントの系譜けいふ」なる()

  喧々(けんけん)諤々(がくがく)議論ぎろんされており・・

  結論めいた着地点は以下の四人だった。

 

 ☆岡崎友紀  (70年代)

☆高橋由美子 (90年代)

 ☆松浦亜弥  (00年代)

そして・・

 ☆笹森 汐 (2020年代) ◇






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