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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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ゼアフォア|証明

 ぬぐいきれない一点(いってん)の疑問と、

 ざわつく不安を(かか)えながらも、

 サユリと南平なんぺいは、クライアントの話に、吸い込まれていった 。

 天田あまだおうの口ぶりに、確からしさを感じ、こころうばわれたのだ。



依頼人はおもんばかるような微笑を浮かべ。

「正直な若い お二方ふたかたよ、心配はご無用じゃ。

私が┃三度目の幻視げんし┃をスキップしたのは耄碌もうろくのためではない。

例外事項(じこう)と判断したからです。

順序じゅんじょを巻き戻し、あらためて申し上げると、

ひとつ前にあたる・・

三度目の幻視げんし・・

サード(Third)インパクト(Impact)は┃・・

━ カオス|混乱|のイメージが不協和音をしたがえてやって来た。

━ 細かい無数のライン<短直線・弧線こせん湾曲わんきょく線>諸々(もろもろ)

  秩序ちつじょを失ってからまり合う、

  機能きのうを失ったスプリン(バネ)グのれのごとし視覚像。

━ 耳ざわりなひずんだBGMと一対(ペア)でね。

あまりに、

抽象ちゅうしょう(ぞう)すぎる幻視げんし(幻聴込み)は、解釈をこころみようにも、

考察・分析の範疇はんちゅう逸脱いつだつしていて、歯が立たない。

ただし、こちらも、過去二回の危難きなん信号を学習()みゆえ、

万全ばんぜん体制たいせいいてのぞんだわけです。

りていに言えば「引きもこり作戦」を取った。なりふりかまわず。

当方とうほうの担当案件は一部延期(えんき)させ、

急を要する業務に限り、所員弁護士にった。

こうして私は、頭痛と随伴ずいはんする幻視・幻聴が、

終息しゅうそくするまで、忸怩じくじたるおもいをかかえ、自宅待機策をこうじた。

・・卑怯ひきょうな自分を内心でなじりつつ。

2011年の春のことでした~┣ 」


┫~サユリの頭の中に共時性フラッシュがかれた☆


「そうです!

やって来たのは/3・11/東日本大震災だった。

弁護士の一人は、私の代理で気仙沼けせんぬまへ出張におもむき、

津波つなみい、帰らぬ人となった。

午後2時46分に発生した震災は、頭痛のピークにある私をも、巻きこんだ。

庭で遊んでいたういまごすくうため(母親は外出中でした)、

室内を飛び出し、ざまじい震動しんどうあらがい、

螺旋らせんイメージが圧縮あっしゅく 膨張(ぼうちょう)する幻視空間と、

現実起きている振動の入り混じったカオスの中を、

けるようにして、全力で進んでいった。

パニック状態におちいったまごは、

三分ほど持続することになる激しいれにおののき、芝へ顔をうずめ号泣していた。

幼児おさなごを抱き上げるべく、両の腕を差し伸べ、低くかがんだところ・・

 石灯籠いしどうろうが強震度に耐え切れず倒れ込み、

 その一部が空中帯でブロック分解ぶんかい ━ イレギュラーを誘発ゆうぱつ

 玉ねぎ型の重量頭部 ━ 〈宝珠ほうじゅ〉と呼ばれる

・・重石が私の左足を急襲きゅうしゅう直撃ちょくげき。結果、複雑ふくざつ骨折をいました。

( 瞬後は・・あんじょう・・

  頭痛もオミナス幻視も不協和音(dissonance)霧散むさんした )

不幸中の幸い、三歳のまご無事ぶじでした。

私は、いまだに、季節の変わり目や寒い日などはつえを必要とします。

ただ、不特定多数が被害にっている、この大震災ケースを、

私固有の幻視(●●)と言い切ってよいかどうか?微妙なところでしょうな。

┇当初の予定通り、私が仙台出張していれば津波つなみにやられて絶命していた。

 なんせ依頼人の住居兼アトリエが丸ごとさらわれ流されてしまった訳だから┇

顛末てんまつから解析(アナリシス)すれば、

骨折こっせつ程度ていどで済んだ事に感謝すべきなのかもしれぬ┇

解釈は一様いちようではない・・」

弁護士は長い息をついたあと、両()らんじ、

「そして直近ちょっきん・・

いよいよ┃四度目の幻視げんし┃がおとずれたのです。

火炎〈Flame〉の支配的(Dominant)なイメージをともなって。

目下もっかのところ、幻聴はありません。

今回、頭痛の度合どあいは、

過去三回とは比較にならないほどだ。

間歇かんけつ的にやって来る

頭へのけ、きしみは、

日に日に その(チカラ) を増し、えがたくなりつつある。

━ 凶事は着実に接近してきている。遠からずピークを迎えるでしょう。

むろん・・大人の順序として病院。経由して脳ドッグでも精密検査を受けましたよ。

しかし・・異常は見られなかった。

処方された鎮痛ちんつう薬など、まるで役に立たない。

こちらが診断書と検査データです」

クリアファイルに入った書類を里見に提示ていじすると、

前のめり気味ぎみに身体を傾斜けいしゃさせて。

「━ 禍事まがごとは、近いうちにまちがいなくおそって来る。

   経験則けいけんそくと照らし合わせても、そう断言だんげんできます! 」


端正たんせいな里見の顔が、もう一段いちだん、引きまった。

提出された診断書他に疑いの余地はない。

保険会社も受理する正式なものだろう。

戸板といたがえし<

ホスト(探偵)のおもしの真裏まうらには、

五割を前後する疑心ぎしんり付いているのもまた事実。

元警部補は基本、

うらないやスーパーナチュラルには懐疑かいぎを持つ者。

UFOや幽霊話などフィクションわくとしては好みもする、

その手のドラマ『Ⅹファイル』等にはたのしませてもらった。

しかし、現実カテゴリーでは、お呼びでないのだ。

他方たぽう・・

サユリ助手・南平ペアはせられたように、

興味深々(しんしん)(シン)で聞き入っていた。

特に前者(サユリ)はキュリオシテ(好奇心)ィーに加え、

高額依頼料のソロバンをちゃっかりハジいていたのである$


の空気をすべて読みった天田あまだ弁護士は、

得心とくしんがいったようにうなずいた。

 この探偵・・予想通り・・

 札束でよこつらを引っぱたいてみても効果はうすそうだ。

 まあ、これくらいのポリシーを持った人物でなければ、

 特殊案件を成功()にはみちびけんじゃろうて。

天田氏は、職業(がら)身についた熟練じゅくれんわざ・・

理詰りづめで相手を打ち負かすたぐいの対決型交渉術や、

硬軟駆使して着地点を探ってゆき、

ソフトランディングをめざす(かた)放棄ほうきすることに決めた。

 この手の依頼には、親和性を必要とすると考えたからだ。

 義務仕事に果報かほうはやってこない。

先の先の先の先の事までを考えて行動するタイプであるは、

いくつかの説得絵図(えず)えがいて来訪らいほうしており、

難航なんこうした場合にと用意してあった、ふだを使うことにした。

・・以上の決断けつだん迅速じんそくくだすと、

駄菓子だがしの小袋に指先を突っ込んで

〈おまけピーナッツ〉をつかまえ、

口に放り入れ咀嚼そしゃく、残りのミルクを飲みし、

顔を上げて、サユリと南平なんぺいを見た。

「若いお二方よ。

里見さんの知的で冷静な対応をよーく見ておくことです。

なんとか詐欺さぎに引っかからないためにもね」

そう言うと、依頼人は椅子の角度を90°ばかりずらし、

デスク向こうの探偵に正対せいたいした。

簡潔かんけつに申せば、

私は里見さんに、

ボディーガードを依頼すべくやってきました。

あなたの元上司は、

先般せんぱん、ビジネスホテルで起きた二件のなん事件を鮮やかに解決した〉と、

たいそうめておられた。

失礼ながら、当時の裁判記録を精読せいどくさせもらいましたよ。

あなたの元同僚、興梠こおろぎ警部にお会いして話をうかがいもした。

畢竟ひっきょう、捜査手腕だけではなく、

エッシャー画を想起させる推理力に感じ入った次第しだいです。

この方ならば おまかせしても大丈夫だいじょうぶ判断はんだんを下し、

正式にアポイントメントを取り、

本部長の紹介状をたずさえ、

こうしてお邪魔じゃましたわけなのです」

クライアントは黒革くろかわのバッグから紹介状入りの封書を抜き出し、

里見所長に差し出した。


事務所内には静寂せいじゃくが訪れた。

紹介状を読んでいる探偵は少々困惑こんわく気味であった。


好奇心旺盛(おうせい)なカップルは、

ことわるな、依頼を引き受けろ┇波動を無言むごん照射しょうしゃしながら、

探偵の快諾かいだくを期待していた。


書面を読み終えた里見は顔を上げ、

依頼人にむかって、

「う ━━ む。

こういった案件あんけんは、

別のチャンネルへ相談するのが賢明けんめいではないですか?

たとえば・・

評判を取っている占い師とか(紹介可能です)。

超常方面に修業しゅぎょうんだ、

いわゆる修験道しゅげんどう者や霊媒れいばいみたいな方に、です。

正直、現実から浮き上がった

当該とうがいケースに、私の出るまくはないと考えます。

天田あまださんのお話には、

ある種の信ぴょう性(・・・・・)を感じないではない。

しかし依頼案件(犯罪を含む)に対し、

科学ベースでもって向き合う私にとっては、

僭越せんえつながら・・眉唾マユツバ・・だと言わざるをえません。

Supernatural phenomenon《超常現象》は、

若輩じゃくはいの里見には専門外ということです」


「私の言説げんせつ戯言ざれごとであると?

 妄言もうげんであると、おっしゃるか?」

依頼人はおだやかなたたずまいから急転、

不意ふい打ち的に、顔を突き出し、ヂカラを込め、

言葉を丹田たんでん射出、えぐるようにただした。

法廷ほうていで使う天田あまだスキルの ひとつ。


まれた里見は 平常バランスを崩して、狼狽うろたえた。

滅多めったにお目にかかれないリアクション)

「・・いいえ。

 非科学分野は、

 私の専門外であると考えるわけでして・・」


打って変わり天田氏は猫なで声を発し・・

「里見さんや、

私の申し立てが真実であると証明できれば、

依頼を引き受けていただけるのですな?」


対話たいわは・・

押し問答の鉄板てっぱん展開を裏切り、奇妙な方向へねじれてきた。

里見にはぐべき言葉が・・見つからない。

本部長の紹介というのも<かせ>である。

そもそも・・

有望ゆうぼうな将来をなげうって退職した理由の〈半分〉は・・

しがらみ(・・・・)を嫌い、フリーハンドを欲したからだ。

皮肉なことに、強制執行権のない自由な立場は、

コトを起こす際にしんどい(・・・・)制約を受けてしまう。


━ かような背景を持つ探偵は、

 気のまない依頼はことわる主義で、

 浮気調査などは、まず引き受けない。

━ やる気スイッチを押してくれない案件には乗れないのだ。


年下のサユリに、社会人としてあるべき姿を注意されて、

まれに口論へ発展はってんしてしまうことがある。

経済性を重んじる助手に対して

趣味の範疇はんちゅう実益じつえき追求ついきゅうしたいクリエイーター所長、

といった平行へいこう構図こうずだ。


天田氏は大きくうなずいて、

「よろしい。

では、証明(Proof)してしんぜましょう」


ポカン!と口を開けるサユリ。

(どうやって予知能力を証明するんだろう?)

(交霊会でも始める気だろうか、天田さん?)


依頼人は

不思議そうな表情をしているサユリに

おだやかな笑みを送信する。

「すまんがね・・お嬢さん・・

テーブルの上をかたずけていただけんかな」


(やっぱり交霊会を始めるんだ)

(ビロードのクロスや黒いローソク等はるんだろうか?)

(令和のD・Dホーム〈Daniel Dunglas Home〉※現象に立ち会えるかも☆)

サユリの旺盛おうせいな好奇心は、

いまにもおどり出しそうであった。









※D・Dホーム=ダニエル・ダングラス・ホーム(またはヒューム)

 1833年生まれ。

 空中浮遊やポルターガイスト及びラップ現象etcを、

 ダイナミックに操れた、史上最大レベルの物理霊媒師(と言われている)。

 1886年没。

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