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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
76/82

第二次性徴期 

早朝時間。


深まりゆく秋の気配

心身を正常()に整えてくれるやさしい空気

ジャストな湿度と気温

キノコだって生えてくる素敵な季節

暑さに押し込められていた生命力を活発化させるゾ的「細胞さいぼう通信」を

ビンビン感じる今日きょうこの頃。


イエローレンジャーはキャンピングカーで、

他の三名は始発電車に駆けこみ、

(別路線を乗りぎして)

眠い目をこすりながら、

スタジオ内の会議室に集合した。


レンジャーズ・フォーは、

会議室のテーブルに、

猪熊いのくま新監督をかこむ形で腰かけていた。

監督は、モモからお礼の言葉とともに返却された

れなし(クリーニング済み)ジャケットを着用している。


━〇━

朝のあいさつ交換こうかんをすませると、

レンジャーズは

自分の腰かけるべき席をキョロキョロとさがし始めた。

「みんな、なにをやってる?

好きな席に腰かけてくれや!」

監督からはっせられた思いがけない言葉に、

自由さを感じ取ったレンジャー四人は、

若干じゃっかんのためらいを見せたのち、

緊張からはなたれ、

好きな場所を選んで、

体技たいぎを使い、フリースタイルで、

ある者は — ひざバネをきかせたひねりジャンプで、

ある者は — 両(あし)をそろえたまま背もたれを飛び越え、

またある者は — ヒヤリとさせる空中前転で、

それぞれが(スタント上がりらしい)腰かけ着地を決めてみせた。

まるでミュージカルを思わせるリズム感であった。

プロ役者たるしおりだけは、

ノーマルに背もたれを引いて、

小作こづくりなヒップをチェア座面ざめんにのせた。


・・ちなみに、マロ監督の台本ホン読みは、

  座る場所まで厳密げんみつに色別指定してある。

  さらに、いんに限って許可。

  ガムや菓子類ほかしょくはオールNG規定きてい

━〇━


4色レンジャーは

把手とって付きホルダーにした紙コップで、

常備じょうび品の電気ポットから湯を注ぎ♨

インスタントのコーヒーやラテを飲み、

骨肉こつにく争奪戦そうだつせんて、

紙皿上からGETしたお茶菓子/うまい棒を食べていた。

・・一番人気のコンポタ味はモモの手に、

  その他は(糸引き)納豆なっとう味で涙をのんだ。


人懐ひとなつっこい猪熊スマイル。

ほがらか語りのジョーク&雑談によって、

はゆるやかにあたたまっていった。


指パッチンさせた監督は、

「みんないてくれ!」とオクターブを上げた。

軌道きどうに乗った雑談はソフトランディング(軟着陸)。

静けさの中、

猪熊は全員を見回し、

出来立てほやほやの主題歌、

軽快なアップテンポの・・

Let’S(レッツ) goゴー(とつ)レンジャー』をスマホから流した♪

赤・青・ピンクは、目を輝かせて聴きいっていた。

「自分たちの出演する番組に、

 有名シンガーソングライター《米高 幻児》の曲がつくなんて、

 スゲエじゃん!夢みたいだ!」

汐のえた耳には、

まずまずの出来にしか聴こえない。

ただし、エンディングのバラード曲、コレはみた。

「ヒットチューン間違いなしだワ♪」


眠気は追いやられ、

アドレナリンめぐりの良い状態で、

台本(ホン)読みは開始された。


━〇━

先日、行われたキャンピング控室内での

黄色とヒゲの会話は以下のごとし。

 汐の問いかけ ╍

 ╍ 「セリフを発しないので、朝練への同席は不必要なのでは?」

 

 猪熊答弁(とうべん)

 ╍ 「初回だけは是非、(しおり)(ぼう)にも参加して欲しい!

   オレが舞台演出で学んだ 効果的な方法 を映像に転用させてみたいんで」

   と、人たらし笑顔 で返され、

 仕方なく(本当は好奇心に動かされ)お付き合いする事になった。

━〇━


猪熊・ヒゲもじゃ・氏の台本(ホン)読みは、

風変ふうがわりであった。

テーブルの上に脚本を広げて(まあ普通だ)

セリフを無感情(・・・)に読み進めていくスタイル(意味不明⁉)。

少しでも芝居心なり感情なりが混入こんにゅうしたら—―即NG、

もう一辺いっぺんやり直し。

きょうのような読み上げをくことなく続けていく。

—―3レンジャーは戸惑とまどい気味であった。

記憶の魔性者であるしおりには、

キャスト全員のセリフが頭に入っていたので、

脳内で 声を出さずに おきょうスタイルを用い、

3色レンジャーの科白せりふをイメージ動作付きでなぞって(・・・・)いった。

ぼうさん読みの真意しんいみ取れないけど・・

九官鳥きゅうかんちょうっぽい口跡こうせきを残している、

いまイチこなれ(・・・)ていない彼ら(赤・青・モモ)には、

効果をもたらすんじゃないかと、おぼろげ推測すいそくできた。

なんというか、「頭の奥にセリフを入れる」という意味合いにおいて。

—―ヒゲくまさん、意外に、ヤリ手なのかも!


撮影に入ると、

猪熊はキャストをめ上げることなく、自由に演じさせた。

お経台本(ホン)読みの効果のほどは(現時点では)不明である。


ピンチ・シチュエーション撮影本番|テイク1|でNGを出した、

(とつ)レッドに向かって・・・監督は・・

「こんな状況じょうきょうのとき、

レッドリーダーならどう反応し対応するかな?

作為さくいを捨て、自然領域に足をみ入れてみようぜ。

セリフにしばられるな!

スポンティニアス(自発的)にいってみようや」


別場面に移行。

リハを終わらせ、

(怒哀なし)喜楽シチュエーションの本番へのぞ

青レンジャーに対し・・

「ブルーくんさあ、

新兵器をようやく開発して

他レンジャーに試用しようさせるワクワクぶりを、

自分の気持ちと、もっと深くシンクロさせようよ。

演技なんて、とりあえず、ハイエナに食わせとけ!

なぜなら、きみはブルーで、ブルーはきみ自身なんだからさ。

・・ここまで親切に書かれた脚本はめったにないんだぜ」


売れっ子脚本家は第四話で、

モモの演技に試練しれんしてきた。

ワンショットスリーアクションを必要とするシーンだ。

ツーアクションすらアヤしいモモにである。

南禅寺ならば、たちまち書きえ、

演じやすくしてしまうであろう場面を、

(どーゆーわけか?マロは、モモにだけはソフト対応)

猪熊いのくま脚本(ほん)通りに演じさせることにした。

モモは例の・・緊張症〈玉虫たまむしスペック〉を再発(リカレンス)

よそ行き声になってしまい、パニくり当惑とうわく


猪熊はニヤリとして汐に耳打ちした━

━された女優はムズい要求に目を三角さんかく変形させた。


「いいかい、モモ。

まずしおり (ぼう)が演じてみせるから、

まったくおんなじに演じてごらんよ。

セリフは一語もないから声は気にしなくてOK。

簡単だろう?

スリーアクションなんてのはたいしたことはない!

低いカベなのだよ」


猪熊いのくま耳打ちの内容は・・

くだんのワンショット・スリーアクションを、

 モモになりきった状態で、

 なおかつ ¾倍速 で演じてみてくれる」

という難題なんだいであった。

とはいえ・・

そこは・・しおりの汐たる所以ゆえん

モモになりきり、

演技スピードを ¾倍速 に落として、

ピンクがトチりそうなところまで

「ここ注意点」とデフォルメ挿入そうにゅうさせて、演じきった。


ストップウォッチを持った猪熊監督は・・

ウワサにたがわぬ笹森能力をの当たりにして、

讃嘆さんたんした。

他のレンジャーズはくちをポカーンと開けていた。


計三回・・

汐は、演技倍速をノーマルに近づけながら、演じてくれた。

その映像見本を、モモはiPadアイパッドでリピートさせ、真剣学習。

おかげ様をもって、

本番二回のみで、

プロの関所せきしょを(とりあえず)越えることができた。


イエロー汐は顔をクシャクシャにして拍手はくしゅを贈り、

レッドはお祝いのバック転を披露ひろう

ブルーは「ヒュー♪」と口笛くちぶえ吹奏すいそうした。


猪熊いのくまは 熱い胸の中で つぶやいた・・

「すばらしいチームじゃないですか、マロ先輩」






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