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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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高2の挑戦

ドラマの時間は、視聴率の大台越えから、

少しばかり さかのぼる。


高校二年になった 大道おおみち アスカは、

放送部の人気者に のし上がっていた。

生徒たちからリクエストや 投稿とうこうをつのり、

給食時間の放送では、マイクを通じて、

全校生徒へ向け、おしゃべりをした。

投稿をフレッシュに読み上げ、

曲をかけ、アイドルの物まね、 生歌を・・/披露ひろう

お手本(レモンちゃん) を真似て、

詩的な表現をしようとすると、高確率でズッコケて・・/疲労ひろう


「女子たちよ、恋のおまじないは、

乳首にハート型のスパンコールをろう!」

なるトークをして、

職員室に呼び出され、始末書を書かされた。


閑話休題・・

放送部員の中でも、

マイクに向かう時の本気度はケタ違いだった。

三味線を持ち込み、祖母仕込みの腕前で、

ピンク・レディーの最新ヒット曲を弾いて、

聴くものを飽きさせなかった。

ほかの部員は、

あくまで部活動の一環いっかんというスタンス。

アスカの場合はマイクに人生を賭けていた。

校内にはファンクラブも発足=『ビックロードの会』。


アスカの行動は直情型に見られがちだが、

周囲に意見を求め、

積極的に取り入れる柔軟性じゅうなんせいも兼ねそなえている。

社交性も、商人家業ゆえ、生来身についていた。


芸事の好きな祖父いわく・・

「おのれをることはできない。

進歩したければ、

夢中になりつつ、

き、きわける耳を持つこと」

幼いころ、ケン玉やコマ回しの練習をして、

同じ失敗を繰り返していたとき、

祖父のアドバイスにより上達した経験があった。

そのとき発せられた言葉は、

実感として熱く身体に残っている。

まい進しながらも、

必要な客観性を取り入れていく。


高二の夏、

いよいよ計画を実行に移すときがきた。

『スター誕生』の書類選考と

オーディションを突破したアスカは、

TV中継のある本戦ほんせんの晴れ舞台に出場。


自社のプラカードを持った

芸能プロのスカウト達がひしめく最終選考の場へおもむく。

公開生放送、客席は超満員。

・・と・・

・・このように・・

・・台本には・・書かれていた。


はなやか、

スリリングな場面になるのは必至ひっしである。


まことに、まことに、残念なことに、

権利関係と予算の都合でポシャってしまったのだ。


脚本家と コイシツは、

のちに大スターとなる 〇〇〇〇 と アスカ を、

VFXを使って、

オーディションの 同一どういつ場面に登場させるべく、

皮算用かわざんよう していた。

藤本プロデューサーが本気で動けば、

実現の可能性はあった・・かもしれない。

胆力たんりょく に、

わずかばかり欠ける プロデューサー は腰が引けてしまった。

権利関係をめぐる、

日テレや大手芸能プロダクションとの折衝せっしょう

予算枠 拡大(ぶんどり)談判だんぱん(VFXには金がかかる)、

生命いのちけずるような交渉事の連続はNGだった。

ハードルが高すぎる。

ここは現場に泣いてもらうことにした。

GOサインばかりでは P は務まらんのだ。


かくして、不精ぶしょう不精(ぶしょう) 台本は直され、

番組名は『スターはきみだ☆』に変更された。

公開収録に使われるセットは、

なるものを建てた。

特殊合成は むろん使えず、

〇〇〇〇の(営業専門)物まねタレントを起用した。

エントリー曲はそっくりさん に、

本家の声真似で歌ってもらった。

まだ素人時代なのだ・・

持ち歌などあろうはずがない。

著作権フリー(放題ほうだい

押せ押せである。


めんどうな肖像権侵害を回避かいひするために・・

顔をはずした首下ポジションや後ろ姿、

または俯瞰ふかんアングル、

ミラーボールのハレーションを使用したりして、

〇〇〇〇とアスカのツーショットを撮影するなど、

チープに見えないような工夫をして難局を乗り切った。

カバーショットをいくつか押さえ、

あとは編集でごまかす訳デス。


この時のドロドロした怨念おんねんが・・

汐 とサウンドステッカーの共演という

リターンマッチとして よみがえり、

VFX合成を実現させることになる。

さすがに、

周囲の負圧を感じた藤本Pは、

仕方なしに重い腰を上げ

ケン・ユミの遺族いぞく

ラジオ局との協議きょうぎを重ね、

権利関係をぶじクリアしたのだった。


最終選考で〇〇〇〇は圧倒的な評価を受け、

芸能プロ十社以上のプラカードが上がった。


続いて大道アスカ。

応援に来ていた

放送部やファンクラブの生徒はかたずをのむ。

芸能スカウトは無反応。

プラカードは上がらず。

シーンとしている会場。

タレ目の司会者が情に訴え、観客を味方につける。

催促(さいそく)に応えるように

拍手が起こり、徐々(じょじょ)にうねっていく。


極限の緊張で待つアスカ・・

切迫した表情 ━(汐の両目) ━ の超接写(ドアップ)をカメラに収めるため、

眼科医立ち合いのもと、

眼底検査用の特殊な目薬を差し、

限界まで瞳孔どうこうを開かせて撮影した。


中堅プロダクション一社いっしゃのみ、

(他社は無関心)

プラカードをかかげた。


会場を包む判官はんかんびいきの大きな拍手。


お断りしておくと、

スカウトマンは情に流されたわけではない。

職歴の長い したたかなプロ である。

甘さはなかった。

独自の「ものさし」ではかっていたのだ。


迷いのもやが言葉に変化した。


決め(・・)をもたない地味な 大道おおみちアスカ の可能性 ━

━ 歌うとき、話すときの、不思議な声の〈伸び〉だ ━

━ 清潔な色気と、あとを引く〈残像ざんぞう〉を描き出している ━

━ 不確かではある。しかし、オリジナリティーを感じる ━


余談よだんになりますが、

スカウトマンは 乙骨おっこつP のカメオ出演。


『サスティーン』 = 音の余韻よいん

 

ドラマの題名の由来である。






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