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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
67/90

特命

笹森ささもり しおりは、

キラーオプションを断行だんこうしたのち、

マインドをリセット、

『チャンバラ戦団/(とつ)レンジャー』の撮影に

不承ふしょう 不承ぶしょう のぞんだ。


現場は、

すったもんだ、

喧々(けんけん) 諤々(がくがく)

上を下への大騒おおさわぎ、

機能きのう不全ふぜんを起こしかけていた。


 ちなみに、

 汐の起こした制御(アンコント)不能(ローラブル)器物きぶつ破壊はかいは、

 損害そんがい甚大じんだいにもかかわらず、

 制作上層部より、

〈現場スタッフ・関係各位には、

 箝口令かんこうれいかれ〉

 一切いっさい不問ふもんとされた。

 控室であるキャンピングカーも、

 以前同様、汐専用車として使用できた。

 

真っ先に、

脚本家から

猛烈モーレツ抗議こうぎと泣きが入り、

違約金を払って、

番組を降りるとまで言い出した。


 自身じしんのセリフを

 自由に書きえられる権利を与えられていた、

 18歳女優は、

 イエローレンジャーの台詞セリフもとより(・・・・)

 担当していた番組ナレーション、

 すべてのセリフを大胆だいたんにも

 一語残さず、けずってしまった。

 聖林ひいらぎプロの社長や、

 顧問辯護士(べんごし)の説得にも応じなかった。

 契約をたてに、

 しおり個人で依頼した人権派弁護士を立てて、

 硬軟こうなん使い分けて押し切った。

・・かくも・・

 南禅寺なんぜんじ監督のやり方には、

 肌合いの違いを感じていたし、

 形容できないくらいの反発を覚えていた。


売れっ子脚本家の抗議こうぎは正当なものだった。

各話をキビキビころがしていくため、

イエロー汐をたくみに使い、

キレのある長台詞ながぜりふ

ンタージ(編集)ュでよどみなく処理しょりする。

さらに、

導入部やすじみ入った部分を

テキパキと濃いナレーションで補完ほかん

両方の役割を、

レンジャー(ちゅう)

唯一ゆいいつのプロフェッショナル、

笹森汐にになってもらっていた。

ほかレンジャーではこなせない・・

えのまったくきかないピースなのだ。

『~(とつ)レンジャー』という、

プライムタイム放送予定の、

CM込みで54分間のCG特撮番組は、

┃南禅寺監督の破天荒はてんこうな提案と、

 売れっ子脚本家との、共鳴きょうめい握手によって┃

二時間ドラマ〈100分弱〉の内容を、

一時間枠〈正味48分〉に圧縮あっしゅくして提供する運びとなり。

結果、増大した情報量を時間内におさめる手段は、

異常に速いテンポでストーリーrun(ラン)させるしかなく、

汐の持つDJ側面そくめん

流暢りゅうちょうでシャープな発声は、

ナラタージュにとって必須ひっすであった。

また、ありがたいことに、

ラフに流した脚本箇所(かしょ)も、

彼女は、うまいことリカバリーしてくれるし、

イキなフレーズを

アドリブでさいにもけていた

まっこと頼もしい存在であった。

━⌨━

そういう天の配剤はいざいを味方につけた脚本家は

イマジネーションをあやつり、

面白い物語構築をベースに、

細心をらし、

ひたむきレンジャー’S〈赤・青・桃〉のために、

そっけない「はしら」や「ト書き」を排除はいじょ

相当量の文字数をついやし、

禁じ手とされる、

芝居しばい足掛あしがかりとなるような)

心理描写のくわしい書きこみを行い。

それだけではらず、

もう一段踏み込んで、

片言かたことゼリフだけでは

アクト(演技)の進歩は望めないだろうから、

発音しにくくないようおもんばかった長めのセリフを、

(スリー)レンジャー向けに各週ローテで挿入インサート

さらに、

印象的なフレーズも、四色キャストへ均等きんとうに振り分けた。

さら、さらに、

アクセルを吹かし

執筆(power)ドリル( drill)をカンスト回転させ、

現場まかせをいさぎよしとしない、

〈過去作のかえしを極力きょくりょくしりぞけた新手しんて

 もしくは、アレンジ案をひねり出し〉

ネオアクション場面を創出そうしゅつ

なおかつ、

戦闘中に発する印象ゼリフをつむぐことに注力ちゅうりょくできていた。

━⌨━

¥高額ギャラにじないアッパレな仕事ぶりである。

それが根底からくつがえった!


好奇心旺盛(おうせい)な早起き読者のために、

クリプトラ(脚本家)イターの宿便しゅくべん独白を、

追加サービスすると・・

笹森汐に信頼を寄せていたライターは、

マロ南禅寺(なんぜんじ)には、

ときつにつれ

正反対の印象を持つようになっていった。

現場では ありがちな、

脚本書きえを

(監督の場合は書き()え)

執筆者には仁義じんぎも切らず、

当然の権利のごとき行うあの野郎(マロ)には、

何度か♨を飲まされた。

キモとなる伏線ふくせんがらみの場面+セリフをせ、

流局りゅうきょくさせ、

独自映像に差し替えてしまう、

その自己顕示(けんじ)欲には辟易へきえき10万点だ。

回収かいしゅう作業にどれだけ腐心ふしんしたコトか。

脚本家だましいと脳汗と努力をみにじりやがって、

スカしめ。

また・・

()丸投げ主義のライターは、

契約時にませた、

初号しょごうラッシュを見る権利を勤勉に実行。

関係者に先駆さきがけ、

いの一番に、ラフ編集された映像をチェックしていた、詳細に。

そのたび、はらわたが煮えくり返る!

脚本にはいち文字もじたりとも書かれていない、

イエローしおりの、

望遠ロングショットから、

近接(きんせつ)あおりド°アップへの、

映像とカット割りにどんな意味がある?

そして・・

えなき、

クソったれ・ワースト場面大賞は、

トリックアートみたいな、

ワンカット撮影のスットコ迷宮めいきゅうめぐりに、ささげよう。

可哀かわいそうに、しおりぼうには地獄めぐりだったろう。

━ ストーリーから浮き上がった、

━ たんに珍奇ちんきなだけの代物しろものだ。

挙句あげく、有能なうら若き女優に、

レジスタンストリガーをかせてしまった。

その上、

人様(ひとさま)縄張なわばり内に、

ずかずか踏み込んできては、

「こんなを撮りたいから

 ふさわしいシチュエーションを考えてくれたまえ」

ときやがる、

巨匠きょしょう気取きどりが!

こちとら出前持ちじゃねェーぞ。


さて両論りょうろん併記へいき

アングルを反転はんてんさせ・・

二重スパイよろしく、

裏事情をこっそりチク(密告す)れば、

脚本家は表向き

「『~(とつ)レンジャー』オンリーで邁進まいしんします」

などと殊勝しゅしょうなことを言っていたが、

じつを申せば大宝制作による、

『人間国宝』という

大作日本映画の脚色もこっそり引き受け、

内心ないしんそちらにけていた。

歌舞伎かぶきの世界を舞台にしたこの異色作・・

ヒットするかどうかは別として、

世評の高い原作をベースにした、

三時間近くになるであろう

上映時間の映画が公開されれば

話題になるのは間違いない。

一流としょうされる監督しかり、

とりわけ役者の やる気 がみなぎっていた。

そしてオレ様も

お子様向き脚本()という蔑称べっしょうから脱却だっきゃくできる。

真の脚本家になるのだ ワッハッハ。

てな、皮算用かわざんようはタイタニック号なみに転覆てんぷくしつつあった。


奇妙なことに、

┃笹森汐を<スーパー戦団もの>に起用すべし┃プロジェクトの

言い出しっぺであり、

発起ほっき人で推進すいしん者の、

左近さこん係長の所在しょざいが、

まるでつかめず、

TV局の番組担当プロデューサーは、

ひどくうろたえ、右往うおう左往さおうした。


そして、ついに、

まんして、

無言をつらぬいてきた最高責任者、

『チャンバラ戦団/(とつ)レンジャー』

映画版制作幹事会社のビッグショット(大物)

京映の銭函ぜにばこ 喜一きいち社長が、

その鎌首かまくびをムックリもたげたのである。

第一秘書を呼びつけ、

社長の手によるメモを

南禅寺なんぜんじ監督へじか渡しするようめいじた。

上質和紙をもちい、落款らっかんまで押された仰々(ぎょうぎょう)しいものだ。

メモには一言 \パンチラ/ とふで書きされていた。

第一秘書の目が点になった。


「ワシゃ知っとるぞ。

革新的なロボットアニメを生み出した総監督は、

視聴率狙いの

強引ごういんなスポンサー命令にしたがってだな、

サービスカットをひねり出し、

主人公のガールフレンドにパンチラさせておる」


秘書は咳払せきばらいをして、

「しかし社長、

あれは1979年、

昭和時代の作品ですから可能だったのであり、

令和の現代ではむずかしいのではないでしょうか?

放送コードも当時とは比較にならないほど

厳しくなっておりますし・・」


「このクソバカタレが!

 タコのクソ

 イカのスミ()

 ワッパのくせして、

 へ理屈りくつをこねるでない!」

銭函社長は立派なデスクを

野球グラブのような分厚ぶあつい手で打ち鳴らした。

「娯楽作品に甘い果実は必須ひっすなのだ。

よーくくがいい!

総監督はだなぁ、

(ガール)(フレンド)爆風ばくふうに巻き込まれるという

不自然でないシチュエーションを設定して、

パンチラを実現させておるワ。

きみィ、なにごとも、創意そうい工夫くふうなのだよ。

『ジョーズ』を監督した、

若きスピルバーグの演出手腕を見るがよい!

海面にえいじた太陽を、

クイント船長が大刀でぷたつにするショットには、

オルカ号の先行き不安を暗示する、

まぎれもなく、本物の才能が刻印されておる。

これこそまさしく映像の極意!

クリエイティビティこそが観客に刺さるキモなのだ。

南禅寺なんぜんじによーく伝えておけ。

以上だ、さがってよろしい」


言い終えると、

いつものごとく、

社長付(美人)女性秘書におやつを運ばせ、

大好物のメロンパンにかぶり(・・・)つき、

コーヒーを飲んだ☕




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