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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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レゾリューション|決断

蜜月みつげつは・・

残念・・長くは続かないのである。


その後・・

かたや自己の映像イメージを絶対視する監督、

━ 対してナチュラルな女優は、

ことあるごとに 無言の衝突しょうとつ を繰りかえした。


南禅寺は、

しおり単独(・・)出演場面をねらましたように、

理解不能な実験?をこころみてくる。

アフレコの際に・・

監督から、

セリフを 反対から読め指令 が下された。

録音スタジオ内で・・

アフレコ画面に合わせて、

イメージを固め、自己(セルフ)コントロールしたのち、

┃こんにちは┃

   を

┃はちにんこ┃

といった具合に、

脚本ホンを(文字通り)逆から、

「ハロー感情」を込めて読む、女優。


最終的に、

録音したセリフを

ミキシング処理で逆回転させ、ノーマルにもどす。

\なんのことはない /

┃こんにちは┃のもとゼリフ(台詞)そのまんま。

・・変てこイントネーションのへその緒(・・・・)付き。


後日、関係者限定試写を見た女優は、

その効果のほど(・・)を理解できず、

「マロの狙いはどこにあったのか?

 ふつうにセリフを読むべきじゃん。

 奇妙なイントネーションに違和感 有り×2。

 AI技術を使ってやれよ!」

首をかしげるばかりだった。

それに・・

(とつ)イエローは異星人ではなく、

れっきとした戦団の一員であり、

日本人の役である。

セリフのおかしな(サウンド)処理は、かえって邪魔じゃまでは?


結局(プロデュサー)判断で・・逆回転台詞(ゼリフ)はカットされた。


また、別の日には、

脚本ホンには書かれていない

即興そっきょうシークエンス(場面)に放り込まれた。

単なる長回しではない、カメラ移動を駆使する、

複雑怪奇なワンシーン・ワンカット撮影を強行きょうこう

監督から、

いきなり、

手書きされた(克明こくめいな)台詞(せりふ)メモを渡され、

不十分な事前説明を受け、

リハ・本番に入っていくしおり

彼女の気分は不完全燃焼~いぶすみ


同録(シンクロ)撮影開始。

歩きながら長ゼリフをこなしている最中さなかに、

きゅうすべりでレンジャー(しおり)へアップ寄りするカメラ/

/そのタイミングをとらえ、スタッフ連が突貫(とっかん)する!/

集中している女優のスレスレ背後へ、

吸音シューズをいたスタッフ数名が忍者(にんじゃ)ごとく進入、

目まぐるしいセット転換・背景移動をして、

演技集中力をぎまくってくれる。

・・カメラが引かれ、

芝居を接続させたまま、女優が背後を振り返ると

(同一場面にもかかわらず)

まるで別の場所へと様変さまがわりしていた。

もはや・・トリックアートの世界である。


しおりは、

自分が如何いかなる状況のもとに、

一体(いったい)どこで、

なにをやっているのか?

皆目かいもくわからず混乱した。

ステディカムでもないのに、縦横無尽じゅうおうむじんに移動し、

演者の前後左右を平気で通過していく、超うざ(・・)カメラ。

移動撮影のためにかれた線路をけて歩きつつ、

芝居をしなければならない苦痛くつう

常軌じょうきいっした照明数、サウナのようなスタジオ内。

南禅寺の手により、刻々(こくこく)と書きえられていくセリフ。

カット割り放棄ほうきしばりゆえ・・

ひとり芝居のリアクションをにする解決策として鏡が多用され、

段取りやバミ(立ち)位置をほんの少しでも失敗(しくじ)れば、

容赦ようしゃなく「カット!リテイク!」のムチ


特異な記憶力を有するしおりは、

セリフをトチることはさすがになかった。

しかし、あまりにめんどくさい撮影方法の手かせ(・・・)足かせ(・・・)に、

不平不満が容量超過、重加圧され、気化を始めていた。


とうとう・・

負のトリガー条項をクリアするダメ押しがやって来た。


┃6テイク目のNG出し┃のさい、

監督のかすかな冷笑とスタッフのため息を、

追い詰められた汐の視聴覚がキャッチしたのだ。

些細ささいな出来事だけれど、

女優のストレスを無限∞増幅ぞうふくしていった。

制御(せいぎょ)不能(ふのう) ━ 病的な興奮状態におちいり、

マイナス感情が結集けっしゅうされ、

集合体と化し、

爆縮ばくしゅくレンズを通過、

核分裂かくぶんれつを引き起こした!


キノコ雲をいただいた18歳女優は、

ショートカットを逆立さかだたせ、

形相ぎょうそうを変え、

監督・スタッフ連中に向かい、

意味不明な言語げんごわめき散らし始めた!

連鎖れんさして、

S型〈外向性〉反応リミッターが解除され、

オーバーキル(実力行使)へ突き進んでゆく ━ 原子力笹森。

スタジオの隅に置かれていた角材かくざいを手に取るや、

にっくき南禅寺のディレクターズチェアをみじんにした。

返すかたな= 角材で、

ムカつく(ロープ付き・キャスター付き)セットを

かたぱしからたたこわし、

カメラを横転させ、

不快(きわ)まるクソ熱い照明機材群をブンたおしていった。

それでも腹の虫(マグマ)おさまらず・・

三時間以上にわたってわめののしり続け、

角材をブンブン振り回し、

床をドカンドカン叩き続けるストレス発散大雷雨。

かつての全学連なら・・

必ずやドラフト一位で指名するだろう、

角材かくざい使いの逸材いつざい出現で それはあった!


南禅寺なんぜんじ監督とスタッフたちは、

ほうほうのていで大部屋へ避難ひなん

内側から鍵を掛け、ストッパーを使い厳重固定した。


局のチーフプロデューサーから、

七尾ななおマネに対し

「なんとか収めるように」と至上命令。

意外にも、

七尾は厳命げんめい決然けつぜんと拒否・・

「自分はそのにんにあらず」

「現時点で、なすすべはなし」

「コレは現場側の不手際である」

「聖林プロは、

 南禅寺監督を査問さもんにかける用意有り」

・・第29話の の舞い はゴメンだ!・・

ババ抜きスキルを高めた七尾ななお

はったり(ブラフ)をかまし、ジョーカーを忌避きひした。

というワケで・・

れ狂う女優の首に すずをつける者 は誰一人現れなかった。

(セキュリティーを呼んで、

 トップ・ビリングのかせがしらを、

 チカラまかせに押さえ込むワケにもいかない)

笹森汐をあるていど、

知悉ちしつしている七尾マネの提案により・・

「女優は理性を完全に喪失そうしつしてはいない。

 その証拠に攻撃の鉾先ほこさきは、

 人ではなく、あくまで物品限定である」

・・興奮状態がしずまるまで

静観する穏便おんびんさくを取ることになった。


━ 新番組放送開始前 ━

視聴者の期待がたかまるフォアプレイ (前戯)期間に、

醜聞しゅうぶんをメディアにぎつけられることは、

絶対あってはならないこと。

スキャンダルは番組に悪影響をもたらすからだ。

してや、

春公開の映画もひかえている特待(・・)番組である。

メディア対策は細心さいしんであらねばならない。


そして・・

当日の夜遅く、

エネルギーれした汐は、

角材をほっぽり投げるや、

幼子おさなごみたくコテン落ちし、

スタジオ内の床に倒れこむと、

どろのような眠りへ、フォーリングしていった。


七尾マネは、

たくましい腕で18歳女優を抱きかかえ、

キャンピングカーへ運び、帰路にいた。


━ 翌日 ━

笹森汐は事務所に一報(いっぽう)を入れた。

撮休さつきゅうを取ると、

ハイヤーをチャーターして、

聖林(ひいらぎ)プロへ単独で出向いた。

事務所の特別室にて・・

法務責任者(老辯護士(べんごし))と社長を

まじえての三者会談がおこなわれた。


女優は・・

「契約書に盛り込まれている、

 キラー・オプションを施行しこうする」

・・むねを宣言した。


特捜検事()がりの、

ろう辯護士(べんごし)は、

そのとき・・つえを落としたと伝えられる。









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