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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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フリクション|摩擦

『チャンバラ戦団/(とつ)レンジャー』は、

こまやかな神経操作を要求される、スタジオ撮影を迎えた。

レンジャー’S試練(しれん)の始まりである。


VFXやCG処理を多用する作品なので、

役者は目線の配り方や、

リアクションには細心さいしんの注意を払わねばならない。

どのような形で、いかなる映像が、まれるのか?

「コレコレこういう状況なので、

 こんな演技をして欲しい」

助監督から事前に絵コンテを見せられ、

ブリーフィング〈要点説明〉を受けはすれど、

本当のところは、

完成した場面を見なければに落ちてこない。

演じている俳優は・・

脚本ホンという設計図はあるにせよ、

グリーンバックという、

殺風景さっぷうけいな異空間で、どのように振る舞うべきか?

たよりない気分と絶えずあらそわなければならないのだ。

完成映像から類推るいすいして、

「そうか!

 ああいうケースは、

 こんな風に立ち回ればいいんだな」的 脳内データの蓄積ちくせきて、

監督の狙うCG効果を予測よそくしながら、

芝居をマッチングさせていく「感覚と知力の融合ゆうごう操作」を行う。

紆余曲折うよきょくせつという名の、ゆるやかな漸進せんしんあるのみ。

デリケートなジョブ・トレーニングなので、

上達するには、相応の時間を要してしまう。

演者のれを待つしかない、我慢ガマンのしどころだ。

バーチャル・スキルをもの(・・)にできるか?できないか?

その遅速差ちそくさは、

俳優の持つカン(・・) ならび センス如何いかんにかかわってくる。

左脳さのう=理屈から入っていくタイプは、

    どうしても遅れを取ってしまう)


右脳うのうもうである、

(とつ)イエロー役 / 最年少のしおりが必然、

先頭に立って他のレンジャー’Sを引っ張っていく構図こうずとなる。


凸 レッド(最年長) ━ オーソドックスなリーダータイプ。

凸 ブルーは開発担当 ━ 007の(キュー)を思わせる。

凸 紅二点の片割れ ━ ピンク はユニークな特性の持主。


赤・青・桃・黄からなるチャンバラ戦団カルテット。


ビリング・トップのイエローは置くとして・・

レンジャー’Sは、まずまずのルックス三銃士だ。

贅沢ぜいたくをいえば、いささかはなに欠ける。

これはいたしかたない、

スター性とは宝くじの一等賞みたいなもの・・

めったに当たらないのよ。


南禅寺監督の戦略により、

汐以外のレンジャー’Sは順撮じゅんどりを基本方針とした。

つまりシナリオ(台本)のファーストシーンから、

シーンごと|できる限り|順番にしたがって撮影を進めていく。

新人は中抜き撮影をすると、

演技構成が ネジ飛び してしまう。

ましてや、手ごわいCG(予測)演技もあるのだ。

いきなりラストシーンからスタートさせるような、

プロ仕様は混乱をまねく。

段階を踏むに越したことはない。

幸いにして、売れっ子タレント汐は、目先の一本 全力主義。

<戦団もの>に専念せんねんするため、

ラジオやCM()り以外に仕事を入れていない。

撮影順序を人気タレントに振り回される面倒めんどうとは、

無縁むえんの恵まれた環境に今作はある。


予算とにらめっこ(・・・・・)、スケジュール効率を最優先させ、

前後関係なく細切こまぎれでっていく映像作品において、

プロ俳優は、

流れとしての演技イメージを明確に持ち、

なおかつカメラの前で表現できなければならない。

しおりにとっては朝メシ前だが、新人には相当ムズカしい。

・・順撮りは理にかなっていた。


━◇━◇━

スタッフたちや七尾ななおマネが息を殺して見守る中・・

(とつ)イエロー/スタジオ内でのファーストカット撮影。


超常現象を解明すべく、

調査先である古屋敷へ出向いたレンジャー汐。

薄暗うすぐらい部屋で静寂せいじゃくの中、

フェノメノンの正体を見きわめようと、

骨董こっとう椅子に腰かけた彼女が、

不穏ふおんな物音で振り返り、

異界生物モルグと遭遇そうぐうする・・リアクション場面。


カメラポジションや照明も整い、

監督の専断せんだんで、リハ無し宣言せんげん

女優の快諾かいだくも取りつけ、

本番一発撮影を突貫とっかんする。


静かに目を閉じ精神を統一していく汐。

集中力増強 ∞

スタジオ内は、

神秘の生体エナジーに浸覆されていく。


リアクション・イメージ【驚き>を招致しょうちする、汐巫女(みこ)

もやったイメージは、

しだいに鮮明化され、

色と形と触感しょっかんが加わり、

DNAを付与ふよされ、

リアルな感情 へと立体化 【受胎じゅたい)>した。

胎児たいじ鼓動こどうきざみ、

羊水ようすいにまみれ、

狭い産道さんどうをミシミシ突き進み、

体外へ放出される間際まぎわ

思念の可動堰かどうせきを下ろし、強引に遮断しゃだんした。

・・女優を包む空気が激しい電気をびていく・・

準備万端(ばんたん)

いつでも本番【出産>OK!


「よーい、Shoot(シュート)!」

 二心声を鋭く発する南禅寺監督。


可動堰をフル解除・・

会心かいしんのリアクション演技を、

ざまじい表現力でもって、

\汐が披露ひろうしようとした刹那せつな

  \監督はショットガンの空砲くうほうをぶっぱなした!\

難聴なんちょうになりそうな、耳をつんざく衝撃音に、

汐は本当にビックリして、

演技のトランス被膜ひまく破壊はかいされ、

感覚のすいくした胎児は死産しさんエンド。

汐の回路かいろにバグ発生・・

制御せいぎょ不能となり、立ち上がって絶叫した!


「よし、カット。

最高のリアクションGOT(いただき)!」

監督は満足そうな表情でショットガンを、

ディレクターズチェアへ立てかけた。


70秒程度(ていど)でワレに返った汐は、

鬼の形相ぎょうそうで猛ダッシュ!

「この、人殺し!」

監督に呪詛じゅそびせ、

高級革のクツ先をありったけ(・・・・・)チカラで踏みつけ、

軽蔑ケイベツのツバをペッ!とて、

激昂げきこうMAXでスタジオをあとにした。


顔面蒼白(そうはく)となった七尾マネージャーは、

あわてふためいて、追いかけていく。


南禅寺は片足かたあしケンケンで、

2メートル円周を無限むげんループしていた。


「ついに本性をあらわしたな・・

 低学歴のヤンキームスメが・・

 現場の最高責任者を「人殺し!」呼ばわりしたうえ・・

 おまけにツバまで吐きやがった・・

 バカバカしい!

 空砲くうほうで死ぬわけがあるまい・・

 追い追い、大人の行儀ぎょうぎたたきこんでやる・・

 クソ!イタリア製のクツが台なしだ・・」


━◇━◇━




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