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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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夏のスペシャルウイーク/その2

しおりは・・

ゆず季(ユッP)と話をするうちに、

(ときとして発動される)

・・「先天性共感力」が増幅されてゆき、

他人事ひとごとでない不安にとらわれていった。


「えーっ!?

『ハリウッド大通おおどおり』は、

十月丸々(まるまる)ひと月公演の予定だったのに、

なんで九月後半の二週間に短縮たんしゅくされたわけ?」


「それがさ、

大手事務所が強引ごういんに割りこんできて、

はじき出されちゃったんだ。

なんせ、うちら、弱小個人事務所だし、

バックアップ・スポンサーは零細(れいさい)企業連合、

協賛きょうさんはアニメ系雑誌のみ・・

一応いちおう、声優としての需要じゅようはあるんでね)。

プラス面と言えば、

新進のやり手プロモーターとタッグを組めたこと。

彼の尽力じんりょくもあり、

資金はクラウドファンディングで八割以上集められた。

足りない資金の調達もってくれてるし、

伝手つてをたどり、

妖刀ようとう>とかつて(・・・)称された、

舞台演出家を見つけ出し、くどき落としてもくれた。

ただし・・妖刀さん・・過去に麻薬所持で逮捕され、

以後、演劇界から追放されたいわく(・・・)付きの人物なんだ。

現時点で、

演出家の腕前を判断はんだんするすべはない。

霊感重視の特異な指導で、おまけに癇癪かんしゃく持ちとくる。

よりどころは、

土台となる脚本(ホン)につきる、

ハリウッド映画のクラッシックだからピカイチの完成度。

名作の翻案ほんあんだもの、

(誰が演じても)それなりの舞台にはなる」


「腹立つなァ・・

はじき出されたうえ、公演短縮だなんて。

初耳はつみみづくしよ!

エラそうに言うようだけど・・

上演作品のパブリシティー・・うすすぎやしないかな?

知りもしない舞台劇に観客は足を運ばないよ!

まずは、内容を浸透しんとうさせなくちゃ。

マネージャーや宣伝担当は、なにしてるわけ」


「うちの旦那だんな兼務けんむしてるんだけど

いま・・発熱した子どもに付きっきりなんだワ」


「なんだワ・・って!

大事な初主演舞台を前にして・・

で、肝心かんじんのチケットの売れ行きは、どうなのさ?」


け具合は・・七割弱くらいかな

(うちみたいな者にもコアなファンっているのよ)。

チラシいて、

関係者によるくちコミや、SNSを使っての発信。

あとは、ネット・マガジンなんかにっけてもらってる。

もち、アニメ誌による頼もしいバックアップもあり。

プラス・・ラジオで宣伝すれば、上乗うわのせもできるでしょう。

持つべきものは、人気DJの汐坊ってわけ。

だから、以前 直電(ちょくでん)したんだ」


「そんなことは、お安い御用ごようよ。

オンエアタイムは(一曲サンドで)30分しかないから、

リスナーに伝えるべき要点を整理をしておこうか・・」

汐は、スマホのメモ機能を使い、

矢継やつばやに質問をびせ、

詳細なデータを作成していく。


(ヴォイス)(キャスト) のお芝居は

なんでもないんだけれど、

のトークは苦手なんだワ・・うち。

おまかせしまーす、リードよろしく」


━ ゲストコーナー開始! ━

乙骨Pのキューサインで、汐はカフを上げた。


あんじょう・・

台本なし、のゆず季は、

本人の申告(しんこく)どおり、

要領ようりょう的確てきかくなトーク をこなせなかった。

舞台劇のパブリシティに来たのに、

だまったまま、

ときおり強いブレスでひと言・ふた言、はさむだけ。


乙骨Pのインカムから、

DJアイドルのイヤフォンへ

びしびしとキツイ指示しじが送られる。

久々(ひさびさ)、耳をエグるおっかない(・・・・・)Pの怒声)


汐はゲストに対し、

無言(サイレント)ジェスチャーを駆使くしして、

「もっとしゃべって」とか、

「その話題、もっとげよう」

「視線をらさないで、こっち見なさい」

だまりこむと放送事故になるだろうが!」

など、コワい顔してニラみつけたり、

ネコなで()に敏変させ、勇気づけたりしながら、

気のいたあいづちフレーズをぜ、

間延まのびを未然みぜんふせいでいく。

しかし物事には おのずと限界あり・・

そろそろDJの燃料ねんりょう切れ近し。

汐は、

カラータイマーを点滅てんめつさせ、

ハンドボールの(ゴール)(キーパー)みたいな

ド派手な(声無し)ジェスチャーをり出し、

強引にゲストを誘導ゆうどうしようと

あせき、最終さいしゅうモードへ突入していった。


しかし・・

・・ゆず季は、

DJのそんな悪戦苦闘あくせんくとう斟酌しんしゃくすることなく、

まったくあせりもせず、悪びれもせず、

自分のペースをたもち続けていた。

というより・・屹立きつりつしたマインドの持主なのだ。

┃動かぬこと山のごとし┃

ゆずの持つ重量級存在感(ステージ)は、

()達者なしおりとは対極たいきょくに位置していた。


SNSは、

けたたましく盛り上がっていた。


《DJアイドルの天敵てんてき降臨!》

《汐坊でもリードできないユッP様の貫禄かんろく!》

《放送事故待ってまっせー!》

《汐坊のあせり ↓ ユッPの余裕 ↑ 》

《ぶっコワせ!番組をぶっコワしてくれ!》



乙骨Pは曲を飛ばし、急きょCMを入れた。

DJは、ゆず季をガン見(・・・)した。

「ゴメン!

マイクを前に、

役の仮面を脱ぎ捨てた、

()のトークはホント苦手ニガてなんだ」

ゲストは申し訳なさそうな顔で、手を合わせる。


ゆず季に他意たいのないことを確認した汐は、

ブースを飛び出し、

刺々(とげとげ)した乙骨・海栗ウニ・Pに直談判じかだんぱんした。

話を聞き終えたPのサングラス越しから、

驚愕光線(・・・・)が放たれた。

DJアイドルは、

スタジオの時計を指さし 毅然きぜんあおる。


「このヤロー!

心臓に悪い提案しやがって。

むむ・・一丁いっちょうやってみるか。

ヤバそうだったら、

即行ソッコーCM入り!

ゲストコーナーはカット。

次いで『ラジオドラマ/前編』のさわり(・・・)を流すゾ。

いいな!」

鋭利えいりな早口で乙骨P。


OK(オッケイ)!」

汐はクルっと背を向け、

一目散いちもくさんにブースへ駆け込んだ。


ディレクターは、

Pから指示しじが出る以前に、

頭脳ずのうをフル回転させて、

ラジオドラマ/前編から、

(エックス)の反響を参考に)

目玉(・・)部分をセレクトしていた。
































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