表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
41/74

またまた、M:I:ななちゃん/シークエル

メンター七尾ななおは、

()台風並みのヘクトパスカルを内部発生させ、

表情に暴風雨をきざみ、

そら恐ろしい、

かおヂカラで圧倒!

DJアイドルを、

徳俵とくだわらまでね返し、

剣呑けんのんな殺し文句もんくを放った。

「三度目のお仕置き、いこうか?」

 

「ぎゃーっ!

 ヤだ!

 ヤ━だ!」

ひるんだ汐は、

ヒップへ回した両手にギュッとチカラ伝達でんたつ

尻込しりごみする。


メンターは、

ななちゃんモードにかえり、

「・・ねえ・・

 ・・しおりさん・・

僭越せんえつですけど、

あなたの行動を見る限り、

まだ固まりきっていない能力マグマを感じます。

もっと上をねらえる!

スレてない素直なところ、

計算高くないところに七尾は伸びしろを見ます。

(私の転倒てんとうのさい、

 救急車を呼んで高みの見物を決めこめば、

 仮病けびょう完遂かんすいさせることができた。

 でも、あなた、そうはしなかった)

良心にき動かされた、

打算ださんのない、美しい行動でした」

思い出し涙をポロっと流す七尾。

他方たほう、汐さんの今日の怒りは、

前回の<戦団もの>出演依頼の怒気どきに比べれば、

レベルダウン。

弾き返すバネがかすかにユルかった。

ご自身の行動に、

罪悪感ざいあくかんを感じていたからでしょう?

マイナス意識は感情パワーをにぶらせます」


マネージャーはっこからはげますように。

「汐さん・・

苦手科目の克服こくふくは大変です。

本物の努力を要します。

(カベを破れる人は少数でしょう)

先日、あなたの芸能キャリアを、

私なりに、

冷静れいせいに振り返り、分析してみました。

結論をいうと・・

『笹森 汐物語』の主人公は、

無自覚むじかくとはいえ、

センスと才能をさずかった無名の少女が、

みちびかれるよう芸能界へ進み、

企画きかくにめぐまれ、

(それなりに頑張ガンバったにせよ)

とんとん拍子びょうしでセンターポジションに立ち、

つかの、浮き沈みを経験はしましたが、

スポットライトを浴び続けて、現在にいたる。

得意科目を驀進ばくしんしてきた幸運児。

音感埋蔵者(まいぞうしゃ)が歌手になったみたいな・・

努力とは性質のことなるラインを歩んできたヒト。


しかるに・・

あなたにとっての身体訓練は、

音感のニブい人が(スミマセン)

音符おんぷを学び、咀嚼そしゃく

初歩からコレクトしていく行為こういといえます。

はなっから上積うわづりきの演技とは違い、

ゼロ地点からのスタートですから、

それは厳しい。

出来ればけて通りたい難所なんしょ

《そんなムリしないで適度てきどに練習をこなし、

 それっぽく芝居して、

 演出・編集まかせにすればいいじゃん!》

あえて、前言ぜんげん〈第31話〉を撤回てっかいすれば、

この指摘には一理いちり以上あります。

今のCG技術なら可能デス・・

汐さんの巧みな演技力をもってすれば、

体技もどき(・・・)をリアルに感じさせてしまえるだろうし、

そこに、CGのエキスパートである

南禅寺なんぜんじ監督の手腕が加わるのだから、鬼に金棒かなぼう

ただし、(とつ)レンジャーを、

(あなたのプロ意識を抹殺まっさつして)

即席のお仕事とドライに割り切れるのであればね。

マネージャーとして建設的意見を述べれば、

・・汐さんは、根底に・・

舞台劇やミュージカルへの願望が、おありでしょう。

前者に関しては、係長の意見はホンネ(本音)ではないはず。

あなたの能力であれば、

わりとこなせてしまうんじゃないかなって。

ただ、後者に突っ込んでいくなら、

いまのうちにきたえておくべき。

DANCEを血肉化するには身体能力は必須ひっす

昔からよく言われる、

〈人間、一生涯いっしょうがい勉強!〉は、

もう、ぐうのもでない正論。

ただし例外もあって、

身体連動(れんどう)の高等スキルを身につけるには、

アスリート同様25歳までと考えるべき!

筋肉きんにくや思考に弾力性と柔軟性を備えてる期間限定。

過ぎたるは盆に返らずっス(七尾語録)。

モノは考えようで・・

<戦団もの>を舞台へのステップとして解釈かいしゃくすれば、

悪い話じゃないと思います」


涙をツーっと流し、聞き入る汐。

(私をこんなにまで、

 おもんばかってくれるマネージャがいる)


しばし、

無言むごんのまま向き合い、

視線をはずす、

マネージャーとタレント。


ふたりはシンクロしたように、へたり込み・・

床に女の子座り(M字で尻ぺったん)した。

うつろな視線で、再び、たがいの顔を見やった。

両者ともエネルギーをとことん消費したので、

れた表情をしていた。


ふうーっと息を吐き、

「トランポリン訓練、

リ・チャレンジしてみるか!」と汐。


「ええ。

微力びりょくながらお手伝いさせていただきます。

先ほどはひどいことをして、

本当に申し訳ありませんでした」

団子だんごぱなになった七尾マネは頭を深くれた。


汐は過去を洗浄せんじょうすべく、

右手をワイパー・ムーブさせた。

「そんなことより、

ななちゃん、

たったいま、ひらめいたンだけど・・

エントランスホールでたおれたのって、

ひょっとして身体からだったお芝居?

ミクロ単位で、なんか引っかかるんだなァ」


ななマネは、

「汐さん、

リドルストーリーって知ってますか?」


否定首ひていくびをプルプルさせる18歳。


「『女か虎か?』を読んでみてください」

七尾ななおは、ひとすじ胡乱うろんじえた、表情を浮かべた。


翌日からトランポリンレッスンは再開された。

二人ににん三脚さんきゃく ━ 苦心に苦心をかさねたすえ

空中前転を初成功させた。


その直後・・

汐は、ウレしさのあまり・・

七尾の胸に飛び込んで達成涙を流した!


笹森マジックの届かない埒外らちがいへ踏み出し、

(たぶん初めて)普通レベルの努力を重ね、

目標をつかみ取った、

等身大の18歳を包み込むように、

ヒシと受け止めてあげるマネージャー。

天賦てんぷさいを持って生まれたきた翌檜の支えになりたい!

そんな想いがコップの外へこぼれ落ちていった ━


紆余曲折うよきょくせつ×2みたいな段階を踏んで・・

ついに・・汐は空中前転をマスターしたのだった。



こうした雨降りを乗り越え、を固めたのち、

新番組『チャンバラ戦団/(とつ)レンジャー』の

共同記者会見にのぞんだのである。
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ