再び、M:I:ななちゃん/シークエル
当タワマンでは、
何号室という名称は採用していない。
正式名《2□□2邸》という呼び名の、
汐のプライベート住戸へ入る。
いつもとは違うシチュエーションのせいで、
視点も変わり・・
ルーム内の、
レジデンス(=ゴージャス)感を改認識してしまう。
二代目マネージャーであった。
(自分の賃貸ルームとは月とスッポンだわさ)
二人してリビングに入る。
ソファに横になるよう勧める18歳の部屋主。
礼を述べた七尾は、
苦しそうな顔をして、
お腹を両手で押さえ足をバタバタさせた。
「汐さん、すみません、
お手洗い、貸してください」
部屋主の許可を得、
クッションの利いたスリッパで
洗面所へ足早に向かい、
復路はキッチン経由で、
リビングに戻ってきた。
ソファーの上には、
枕・毛布・救急箱が用意されていた。
団子腫れした鼻主の七尾は、
嬉しそうな、苦しそうな、
複雑な表情で立ちどまると、
心配目線を向けているDJアイドルの小顔を、
上方から、グイと接近させ、まじまじとのぞき込む。
「ずいぶん、
健康そうな顔色してるじゃないですか?」
「ななちゃんの転倒騒ぎでさ、
アドレナリンが放出されたみたい。
じき、リバウンドで寝込むと思う・・けどね」
「食事はしっかり摂れている状態なんですか?」
「まあ、おかゆとか・・
きのうお母さんが来て、作ってくれたし」
「どうして、大学病院等へいかないで
ご実家のそばの内科医で診てもらったんです?」
「子供のころからの掛かり付け医だもん・・」
「フライドチキンとビールなんて、
《神経性胃炎》には禁物ですよね?
トラッシュBOXに、
ビールの空き缶が4本捨ててありました。
タワマンの資源ごみ回収日は昨日午前中のはず。
確認済みです。
汐さんって、まめに、ゴミ出ししますよね?」
「たまたま、捨て忘れただけよ。
病気のときは仕方ないじゃないの」
七尾は、
キッチンの〈可燃物用ゴミ箱〉から失敬してきた
ウーバーイーツの領収書と
購入店のレシートを提示した。
(昨晩の時刻印字有り)
健常な胃の持ち主ではないと受け付けない品多し。
汐のこめかみが痙攣する。
「・・ ・・」
「たいへん失礼ですけど、
アルコール検査させていただきますね」
七尾はバッグから検知器を取り出した。
汐は両手を持ち上げ、
大仰に振り下ろす。
「バカバカしい!
ななちゃんの刑事ごっこには付き合いきれない。
よけい病状が進行するじゃない!
健康回復のために寝ませてもらう。
じゃあね!」
クルっと背を向ける汐。
瞬速ムーブ!
コブラツイストの技かけ要領で、
細こいウエストへ逆手をかまし、
DJアイドルをくの字状に持ち上げ、
(子どもへのお仕置きポーズ)
ガウンをまくり上げると、
パジャマ越しに、
開花前の五分咲きヒップを手かげん無し、
力いっぱい、バシーン!と打ちすえた。
「悪い子だ!
姑息な手をつかって。
あなたのお母さまは、
現在、旅行中でしょう。
裏取りできているんですよ。
そんなに、
トランポリン訓練がイヤなら、
正直に言うべきデス。
情けない!」
汐は戦闘力をMAXに上げ、
子熊力を出し、
顔を真っ赤にさせ、髪をふり乱し、
七尾の手から野生逃れした。
気の狂ったマネージャー(汐視点)から、
距離を取り、
堅牢なディフェンス体勢で向き合う。
「親にだって、ぶたれたことないのにィ!?」
ヒップを押さえ、
身をかがめ、
鼻息荒く、
充血した目で威嚇し、仰角ガン見。
「やったね七尾。
タブー犯したね。
法治国家で暴力をふるった。
たかが、いちマネージャーの分際で!
事務所の大事な商品であるタレントに手をかけた!
太いくび洗って待ってなさい!」
「あなたはガンダムのパイロットですか?」
今度はターボをかけて、
汐の穴熊ディフェンスを易々突破!
前回と同じ体勢に持っていき、
お仕置きを、複数回繰り返した。
抵抗力を失った18歳アイドルを床に、
そっと置いた。
汐はサクッと起き上がり
(脱力は芝居にすぎない)
土壇場の女優魂。
「ク━━ッ、二度もぶった!?
しかも計六回!
ク━━ッ。
懲戒処分決定!」




