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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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ミッション・イン・ななちゃん/シークエル

二代目マネージャー「ななちゃん」こと七尾ななおは、

引きつった表情で、

社用のワンボックスカーを

スピード違反スレスレでコロがし、

午前7時過ぎに、

ドル箱タレントの住むタワー・マンションをおとずれた。


路上駐車して、エントランスホールへダッシュ。

オートロック連動れんどうインターフォンに指をかけ、

ルーム番号《2□□2》を入力、

あわせて、スマホで通話発信、

メール・LINEも入れる。

そのどれにも ━━ レスなし。

同じ動作(三方向連絡)を 繰り返す。

再三さいさん再四さいし、再五、再六・・

・・再七で、

ようやくインターフォンに、

覇気はきよわきドル箱タレントのか細い(・・・)レスポンス。


マネージャーは

オートロックシステムの

インターフォン・カメラに顔を近づけ、

しおりさん!

七尾ななおです!

左近さこん係長ではなく、

トップの特命とくめいを受けてやってまいりました。

社長は、たいへん心配しております。

体調は、そのいかがでしょうか?」


「メールに、診断書の画像を添付てんぷしたでしょう。

《神経性胃炎》にかかったみたい。

しばらく安静あんせいにしていれば

なおるみたいだから、

悪いけど、きょうのところは帰ってくれるかな・・

社長には、軽症けいしょうだと、伝えておいて」


「直接、お顔を拝見はいけんさせては、もらえませんか?

社長への報告義務もあります。

なにより・・

私自身が心配しています。

未熟みじゅくな担当マネージャーの管理不足が、

汐さんの健康被害をまねいたかと思うと、

罪悪感で胸がけそうになります。

心配と後悔こうかいで、せる思いなんです」

と、(朝ご飯をたっぷり食べてきた)七尾マネは哀訴あいそした。


「ななちゃんは1ミリも、

責任 感じる必要ないって。

私、笹森個人によるメンタルケアの失敗が原因。

理由を聞いて安心したでしょう。

お願い・・帰ってちょうだい。

ねっ!」


「しかし、私としても、

中途半端に報告義務をたすのは、

ポリシーにはんしますし・・

ひと目、お顔を見るまでは帰れません。

いえ、帰りません。

お願いします・・ひと目だけ・・

わたしのためにと思って・・どうか・・」


主客しゅきゃく転倒てんとうも、はなはだしい!

とっとと帰りなさい!」

汐の声に生気がよみがえった。

つづいて、ネコなで声をあやつり、

「・・ねえ、ななちゃん・・

安静を必要とするやまいなワケよ。

気遣きづかいには、とっても感謝してる。

だから・・そっとしておいて。

切るよ!」


「ううっ!胸が苦しい・・」

言うなり、

七尾は、

インターフォン・カメラに顔面を打ちつけた。

動画サイトに投稿すれば バズりそうな、

決定的瞬間のインパクト映像を残して・・

・・会話はふっつり途切れた。


バラのつぼみをあしらったガウン姿のしおりは、

その下はパジャマのまま、

(その内側は〇着 )

( もっと先はナイショ♡)

スマホ片手に、エレベータから、かっ飛び出した。


七尾のLサイズ身体が

インターフォン操作盤そうさばんの前で、

していた。

超速・三段跳びで駆け寄り、

うつぶせに倒れている七尾のそばへ

しゃがみ込み、

少々強めに肩を叩き、さぶる。

「ななちゃん、しっかりして!

大丈夫だいじょーぶ

意識ある?

生きてる?

ななちゃーん!」


汐のばい近くある顔を

弱弱しく持ち上げた七尾は、

こちらを向き、かすれた声で、

「すみません。

急に胸がけられて・・」


インターフォン・カメラに、

ぶっつけた鼻は、

発酵はっこうしたみたいにふくれていた。


「救急車呼ぼうか?

後遺症こういしょうの可能性もあるから」


「問題ありません・・

少し横になればよくなります・・

汐さんの無事ぶじな お顔を見れて・・

本当によかったァ・・」


「ご臨終りんじゅうみたいな声を出さないの」


スリムな汐の肩を借りた七尾は、

マイバッグをかかえ、

すり足ぎみにあゆみをすすめ、

恐縮きょうしゅくしながら、

ゆっくりと、

エレベーターへ乗り込んだ。



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