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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
19/74

NC15スタジオ

レイティング〈聴取率調査〉用「ラジオドラマ」の収録まぎわです。


通常つうじょうオンエアしているブースではなく、

最新の音響設備が整った

「NC15スタジオ」へ移動しての録音となる。

ノーマルな収録とは異なり、

デリケートな音の操作を要求されるため、

スタッフたちには、

ワンボルテージ高い緊張が、のしかかる。


残念会いらいの しおり との再会。

乙骨おっこつPは録音・演出のプレッシャーに、

自身を 対峙たいじ させ、平静を よそおっていた。

例の缶ビール事件で、

汐が出て行ったあと、

会議室の雰囲気はしらけ、すこぶる盛り下がった。

出席者は おおむね 汐寄りで、

冷たい視線が、

屈折したややこしい経路けいろをたどり、

間接的に乙骨Pを刺した。

面と向かって言える者は・・誰もいない。


━「おめでたくない名目めいもくの おめでたい席で、

  缶ビールの一本くらい飲ませてやれよ、

  あれだけ会を盛り上げてくれたじゃないか」


━「Pは自分の物マネに切れたんじゃね?」


━「法律的には正論。ただし、あのやり方はちょっと」


━「暴力はよろしくない」


━「大黒柱を大事にしなくちゃバチが当たる」


若いスタッフオンリーの、

二次会でこんな会話がなされた。

Pにもれ伝わってきた。

胆力たんりょく 抜群だが、

同時に 繊細せんさいでもある乙骨おっこつは、

ラジオドラマのベテラン脚本家に、こう言われた。

「あの行為は正しいと、私は思った。

あれが通じなかったら汐坊の未来はない」

・・救われた気がした。



七尾ななおマネージャーは、

いくぶん引きつった表情で、

タレントと一緒にスタジオり。

副調整室にいるPのもとを訪れた。

威圧いあつ感に満ちた うしろ姿に向かって、


「パワハラプロデューサー!」


「お前なんか死んじまえ!」


「単数暴力団!」


七尾の、しぼりだすような声に、

バキュン!と振り向き、

サングラス越しに、めつけるP。

泣く子も黙らせる応力おうりょく


ななちゃんは汗だくになり、

違う 違うと、手のひらをパタつかせた。

Lサイズ的 ななちゃんの背後から、

いたずら笑顔の汐がスーッと現れた。

もちろん声マネ腹話術だ。

対面で改めて、

声マネをPにプレゼンする。

抗議するようなポーズを作り、別人格を表出させると、


「あいさつの時ぐらい、グラサンはずせ!」


「ギャラあげろ!」


「お(こつ)になれ乙骨(おっこつ)!」


七尾マネージャーのヴォイス(そのもの)で毒づいた。


卓越たくえつした なりきり力を発現はつげん

ただし、ななちゃんが ののしる場面は、

未見みけんだったので、

あくまで汐による想像の産物さんぶつである。


乙骨はナチュラルな自分を取り戻し、ニヤリとした。

P と 汐 かん透明とうめいな壁 はくだけ散った。

どちらともなく握手をかわし、

汐は収録ブースへと入っていった。


二人のやり取りを見ていたスタッフたちは、

人間関係の修復しゅうふくをいとも簡単にやってのけた、

番組の若き大黒柱に敬意けいいひょうした。

社会人になってウエイトの大きな部分を、

めるさいたるものが、

人間関係だからこそ・・余計よけい感心した。



レイティング用の音声ドラマは、

<クランベリー いちご>という、

1967年に発表された、

イギリスのロックグループによるマスターピース♪

イノベーションを具現化ぐげんかしたような曲の誕生物語である。

『哉カナ』はつこころみ、

ドキュメンタリードラマだ。


「ときには変化をつけるべきだ」

 という乙骨Pののもと、

 脚本家・スタッフが、

 あれこれ知恵を出しあい、

 押しあい、へしあい、しぼり込み、

 議論百出の末に2候補が残った。


◇『幻視』という予知能力テーマのサスペンスドラマと、


◇『クランベリー苺』という曲の誕生を追ったドキュメンタリー風ドラマ。


後者が P のお眼鏡(メガネ)にかない、ようやっと企画成立。

・・・難産なんざんでした。





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