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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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里帰り

「それではリスナーの皆さん、

また来週 月替つきがわり、

ブライド・・もとい 6月(ジューン) にお会いしましょう。

バイバーイ!」

汐はゆっくりカフを下げた。


笹森ささもり しおり のラジオ かな カナ☆』

 のオンエア終了。


ポッドキャストの録音は

番組開始前にませてあった。

ほんとうは、

生放送のテンションを引きずったままの、

放送後トークが望ましいけれど、

いかんせん事情が許さないのである。


◇この場をお借りして、

 リスナーの皆様から寄せられた質問に回答しましょう。

Q.「なぜ、『哉カナ』には、

  ネット配信用の、

  スタジオ・ライブカメラが入らないのか?

  汐坊ファンとして、

  マイクに向かっている、

  彼女のしぐさや表情を見てみたい。

  他の番組では結構やっているではないか」


A.「それは、ラジオだからです」 以上。

            お粗末さまでした◇


『哉カナ』はギャラクシー賞ラジオ部門で、


◆大賞=ラジオドラマ「めんちゃも屋」(〇〇放送)


◆個人DJ賞=「笹森汐」

 

 の二部門にノミネートされている。


受賞すれば人気番組にさらにはくがつく。

乙骨Pをはじめ、番組関係者は、

大賞は、あるかもしれないとんでいた

(なんせ番組史上最高の反響だったのだから)。

ただし、例年 ドキュメンタリー特番 が強い。


DJ部門 はライバルが多いから、

手こずるだろうと予想していた。


「おつかれさまです!」

四方しほうからスタッフの声がかかる。

テンション・エレベーターを下降させながら、

汐は、あいさつを返した。


DJアイドルに、

マーメイドカフェのあたたかいコーヒーと

フルーツケーキが差し出される。

乙骨おっこつプロデューサーからだ。


Pは

汐の正面に腰をおろし、

首を横に向け、

サングラスごしに・・二代目マネージャーを見る。

副調整室にいる彼女は、

スマホをひっきりなしにチェックし、

時計とにらめっこしていた。


「これから、朝ドラの撮影があるんだって?

売れっ子はツライな」


「そうなの。

台本の上がりが遅くてネ、現場はたいへん」


「中身のいホンじゃねえか。

プロが見ても感心するレベルだぜ」


乙骨おっこつさんの名演技もあったしネ」

ふふッと笑い、フルーツケーキをかじる。


「バカ。年長者をからかうな」

Pは、

話題になった過去のドラマを二本、

例にげ、

双方そうほうのパート2は、

脚本がひどいとだんじた。

「例外もあるが、

フィクションはまるところ脚本ホンだ。

ラッキーだったな、 汐 坊 」


「うん (もぐもぐ)」


すっかり調子を取り戻しやがった。

ビジネスホテル「設楽しがらき」の一件。

その後の・・交際宣言・・から、

しばらくドン底状態だった。

見るも哀れな しょげ返り ようだったからな、

よくぞ、り返したもんだぜ。


運命を乗り越えたと解釈していいんだろうか?

なにせ、

こののパッションは ケタはずれ。

道をらしたりしたらエライことになる。

(そな)わってくれることを願わずにはいられない。


それにしても不可思議なのは、

ひどい状態なのにもかかわらず、

仕事とプライベートのスイッチを、

スパスパ切り替えられたところだ。

調子のいい時なら、まぁ可能だろうが・・

められたときは

視野狭窄(きょうさく)おちいり、

潤滑油じゅんかつゆが回らなくなる。

結果・・余裕を失い、バランスをくずす。

マイナスサイクルのカベを打ち破るのは容易よういではない。


いわゆる突破力とっぱりょくは・・

クセのある 個性(パーソナリティ) に与えられる、

毒キノコのようなアイテムである。

DJアイドルは、

一面 強情ごうじょうではあるが、

とても素直すなおだ。

この素直さが

柔軟性や吸収力につながっているといえる、

老若男女を問わない広範こうはんな人気にも。


彼女は、突破者とっぱものタイプでは全然ない。

なのに・・難関なんかんを突破できてしまう。

集中力?

トランス力?

運?

わからん! 

分析できん!

オレのような凡人には理解不能だ。


一般的な洞察どうさつのきかないマレなタイプ。

おそらく・・

特殊な回路かいろの持ち主なのだろう。


ひょっとしたら汐坊(しおりぼう)は、

人間以外の・・

(エー)(アイ) アンロイドなのかもしれん。




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