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2.レアフレンド

 舞い上がって飯を食うことを忘れてた。


「ネムさん! 食事をしてもいいですか!?」


「えぇ。大歓迎ですよ?」


 その笑顔に俺の気持ちは舞いあがる。


「ネムさんの手料理っすね!?」


「親父さんの料理だよ。見りゃわかんだろネムちゃんはホールスタッフだ!」


 チュウメイの的確なツッコミが俺の夢をぶち壊す。


「俺……ネムさんの手料理を絶対に食べるよ!」


「そんなAI積んでればいいな?」


「ふんっ。AIなど関係ない! 俺の愛があれば作ってくれるはずだ!」


「なんかお前ぶっ飛んでんな?」


 そう。関係ないんだ。

 俺はネムさんに一目惚れした。

 運命の人だと思っている。


「あのー何になさいますか?」


 注文まだだった。

 周りの目が痛い。


「俺は生姜焼き定食ねぇ」


 先にチュウメイが頼みやがった。

 この裏切り者めが。


「ネムさん……オススメとかは……?」


「オススメは、このミノタウロス丼ですね! とろける美味しさですよ?」


 ジェスチャーですごい大きくて美味しいんだぞっていう気持ちが全面に伝わってくる。

 笑顔で料理を紹介する様はパフォーマンスをするアイドルのようだ。


「あぁ……可愛らしい。ネムさん。ミノタウロス丼をお願いします!」


「かしこまりました!」


 奥に消えていくネムさんの後ろ姿を見送りながらさっきの笑顔を思い出し顔がニヤける。


「顔がキモイ! そしてお前大丈夫か!? 初期の所持金って一万ゴールドだぞ?」


「オススメのミノタウロス丼を頼んでなんの問題がある!?」


「大アリだ! バカ! ミノタウロス丼は一万ゴールド。お前スッカラカンだぞ!?」


「そ、それが愛だ!」


 チュウメイが頭を抱えてブツブツ何かを呟いている。

 まぁ、最初だし金なくてもなんとかなるでしょ。


「はぁい。生姜焼き定食でーす。そして、ミノタウロス丼です! 凄いでしょ?」


「おぉー! めっちゃ凄いじゃないですか!」


 ご飯が山のように盛られてその上から肉がこれでもかと言うぐらい山になってる。香ばしいタレの匂いと肉の香りが俺の鼻を支配する。


「これがネムさんの愛の量なんですね! 受け止めて全部平らげます!」


「違うだろ。それも肉というデータだぞ」


「うん! めちゃくちゃ美味い! ネムさん! サイコーです!」


 サムズアップをネムさんにお届けし、完食する。凄いと思ったのはその美味しさと満腹が感じられるということ。


「良かったです! 私達も潤います! ありがとうございます!」


「お前絶対カモにされたぞ?」


「いえいえ! サイコーでした! ネムさんが潤うならまた頼みます!」


 チュウメイが何かを言っているが、聞こえなかったことにしてネムさんへと最高の笑顔をお届けする。


 客が次々と来るので席を立つと大柄な男が入ってきた。

 ドスドスとネムさんの元にやって来た。


「ヘツヘッヘッ。仮想空間とはいえいい女だな。こっちにこい! いい事してやる」


「えっ? ちょっ! やめてくださいよ!」


 俺はそれを目にした瞬間体が動いてしまっていた。

 一瞬で男の前に立ちネムさんを掴もうとしていた腕を掴んで払う。


「おい! 俺の嫁に何すんだ? 触るな」


「あぁ!? 誰の嫁だって? はははっ。コイツはNPCだっつうの! わかるか? データなんだよ!」


「俺の嫁だ」


「コイツ頭おかしいぜ? やれ!」


 取り巻きの二人が武器を抜いて迫ってくる。

 片方は剣士、片方は斧士で間合いは近距離だ。

 相手の間合いだが、俺の間合いでもある。


 剣を右から振るってくるが遅いから最小限で避ける。左からも斧を叩きつけてくるが、これも遅い。


「ゲームってこんなもんなんだな。剣を振る速度も斧を降る速度も球の速さには適わないんだな?」


 何回も振るわれた攻撃を全て避ける。

 そして、大男の元へと避けながらゆっくり歩いていく。


「お前なんなんだよ! なぜ攻撃が当たらねぇ!?」


「えっ? 逆にこんなに遅くて攻撃が当たるもんなのか? ゲームって結構簡単なんだな?」


「あぁぁん!? 舐めやがって! こちとらレベル10だぞ!? この辺りだと高いレベル帯だ!」


 大剣を大きく振りかぶるその大柄な男。

 あまりにも無防備すぎたために斬ってみることにした。

 俺は居合いの要領で刀を抜き、首を斬りつけて横をぬけて後ろに立ち、振り返る。


「あぁ!? あの侍どこ行きやがっ────」


 ────ドサッ


 【レベルが上がりました。】

 【レベルが上がりました。】

 【レベルが上がりました。】

 【レベルが上がりました。】


「「ボス!?」」


 残りの二人はかかってくるかと思ったが、消えかかっているボスに薬をかけて連れ去って行った。


「おい! マセラ! すげぇじゃん!」


 チュウメイに褒められた。


「おぉ。こんな感じなんだ。なんとか戦えそうだな。ネムさん! 大丈夫ですか!?」


「はい! ありがとうございます!


「あの、何かあったらまた駆けつけますから、連絡先聞いてもいいですか!?」


「NPCがフレンド登録できるわけ────」


「はい! これになります!」


「できんの!?」


 メモに書かれたQRコードを読み込む。


【定食屋 膳 看板娘 ネムがフレンドに登録されました】


「おい! これ、レア情報だと思うぞ!?」


 俺は感動のあまり天を見上げて涙を流していた。


「そんなに嬉しかったのか?」


「感無量だ。俺はネムさんへと無限の愛を捧げる」


「重いわ!」


 この事はかなりの重要事項として目撃していたプレイヤーから拡散されたのであった。

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