第六話 第二の女帝② 偽りの騎士
◇◇
授業中、敵二人について思いを馳せる。
先ずは騎士の『柏原伊吹』。叶笑の印象には大人っぽい男子生徒のイメージしかない。女帝と連んでいるのでお金持ちなんだろう、と思っていた。今朝のやり取りからすると、少し怪しくなってきた。とは言え、金持ちの方が割引券などに執着するとも言うし……これは様子見だな。
まぁ容姿は確かに整っている。丁寧な作りの顔立ちで背も高く、思ったより筋肉質に見えた。
「色を使うしか……無いか?」
前世では男達の情欲に漬け込むことに躊躇しなかったが、自分の価値を下げない為、どんな事をしても純潔だけは守り通しながら神の指先だけで宮中を駆け抜けていた。
今世ではやり過ぎないようにしないとな、叶笑の身体だ。これ以上は穢したくない。
ふと、あの男と恋仲になる事を夢想してみる。
五秒で首を振って諦める。
何となく二人はお似合いかと思ったが……既に敵同士。悲恋にかまける暇は無い……な。
次に女帝『七竈戸ミミ』か……弱点など見当たらない。財閥創業家の末裔の一人娘。ふふふ、正しく前世の私のようね。
しかし、私は弱者を虐げるような真似はしなかった。
貴様の行い、必ず代償を支払わせるぞ!
静かに二人のことを考えていると、突然に吐き気と震えが身体の中から湧き出してきた。
襲われた時の映像が鮮明に蘇る。全身に鳥肌が立ち舐め回すような不快感が駆け巡る。
「くっ……」
授業中だが叫び出しそうになる。精神の中の叶笑はとうの昔に絶叫している。
「……一思いに殺せ、とでも言いたくなるな」
小声で呟く。震える手をじっと見てから拳をギュッと握り締める。一息だけ吐くと何も言わずに挙手した。
「先生、気分が悪いので保健室で休んで良いでしょうか?」
「南早田……顔が真っ青だな。一人で行けるか?」
「はい。心配には及びません……」
許可を得ると静かに立ち上がり後ろの扉から出て保健室に向かった。
◇◇
「少し寝なさい。多分……PTSDね。辛い記憶がフラッシュバックしてくるの。辛かったら心療内科を受診しなさいね」
「はい……」
ふん、PTAだか何だか知らんがそんなモノに屈する私ではないわ。
逆に叶笑の過去に想いを馳せてやる!
それは突然始まった。三年生が卒業すると、何故か文芸部の皆が退部してしまった。理由は聞いても教えて貰えなかった。恐らくは女帝から辞めろと脅されたのだと思う。
その頃からクラスの子からも無視されるようになり、それは学年が上がっても続いた。すると、何故か坂本那岐子から直接攻撃されるようになった。
口を開くと平手打ちされて、黙っていると罵詈雑言を受けた。それでも母を心配させまいと登校だけは続けた。
そんな辛い学生生活の中で下校途中に突然襲われた。
文芸部継続の為にコンテスト用の短編を書いていたが、思ったより遅くなってしまった。慌てて大雨の中、いつもの通学路を歩いていた。
工事現場に差し掛かったところで、突然複数の男達に抑え込まれ建物の中に引き込まれてしまった。目出し帽で顔を隠した男達に両手両足を抑えられては悲鳴を上げるしかなかったが、全て雨音にかき消されてしまう。男の一人が私の制服をたくし上げ、焦りながらブラを剥ぎ取る。そのまま私の身体を舐め回し始めた。
その後は覚えていない。声を出すことを諦めたことだけは覚えている。ただ早くこの地獄が終わってくれと祈っていた。
「へへへ、キスもしてやるぜ!」
私の唇を奪う為に目出し帽を上げた、正にその時、偶然に雷鳴が轟いた。犯人の顔とその後ろで眺める観客の顔が稲光に照らされた。
私に覆い被さっているのは同じ学校の松田蹴呉、観客には坂本那岐子と七竈戸ミミ、その隣に男子が一人後ろを向いていた。恐らくは柏原伊吹。
そして指を刺して笑いながら実況する『第三の女帝』、楽しそうに二人でスマホを向ける『第四の女帝と騎士』。後は『第五の女帝に傅く騎士達』、叶笑の身体を凌辱した罪、万死に値するわ!
鳥肌など立たぬ。この身を焦がすほどの灼熱の怒りとどす黒い復讐の決意のみ!
敵を再認識して決意を固める。
興奮こそすれ、身体を這うような不快感は消えていた。
「ふぅ、もう寝れないわね」
そっと立ち上がり教室に戻る。既に昼休みの時間となっている。
突然、胸騒ぎに襲われた。
「まさか……私のランチに何かされていたら」
思わず早歩きになる。教室に戻ると急ぎ鞄の四個入りクリームパンを確認する。
良かった、無事……じゃない! 丁寧に四個とも指で潰されている。
とは言えクリームは飛び出てないし、袋も破れてはいない。何だ? 妙に中途半端だ。犯人の温情を感じる。
クリームパンを食べながら犯人の意図を想像する。
「警告……だろうな。もぐもぐ……やはり美味しい」
少しうっとりする。
このボリュームでこの味だ。一つ当たり四十円? ヤマシマ製パンには天使様でもいるのか?
不穏さと優しさを感じながらランチを終えた。
◇◇
さて、現代国語。叶笑が最も好きだった授業。
既に教科書の小説は全て頭に入っている。先生の板書を所々ノートに纏めるだけ。答え合わせに近い。
「ぎゃっ!」
消しゴムが……。
「どうした、南早田?」
「何でもありません……すみません」
消しゴムの角が、全て丸くなってる! 叶笑は文房具を愛する人種なの。でも貧乏だからもの凄く大事に使うのよ。消しゴムもそう。角を一つずつ丁寧に使うの。
角が乱雑に使われている。
ここでハッとなり消しゴムをカバーから外す。
なんとっ! カバーに隠れた四つの角も使われている! 鬼の所業か!
冷静なフリをして震える手でノートにマーカーで線を引く。
「ひぃっ……」
小さく声が漏れる。マーカーの先端が別のマーカーのインクで汚されている。黄色には緑色が、赤色には青色が混じって濁った色でノートに線が引かれて行く。
更に小さな違和感に気付く。ノートの端が不規則に折られている。
冷静に……冷静に……と心の中で唱えながら赤ボールペンで赤丸をつける。だがノートには黒い丸が書かれていた。
ボールペンが手から滑り落ちる。
私の美しいノートが穢されてしまった!
立て続けの攻撃に叶笑の精神が耐えられない。大粒の涙が叶笑の瞳から零れ落ちる。
「人の所業に在らず……もはや手加減などせん!」
呟いた後、大事なことに気がついた。筆箱からお気に入りのシャーペンを取り出す。震える手でシャーペンの消しゴムを確認する。
そこには角の綺麗なままの消しゴムが存在した。
盛大にほっと一息吐く。
「聖域は流石に心が痛む……鬼の目にも涙、ということか?」
苛烈な攻撃だが何故か情けを感じる。チグハグとも思える。
「しかし……この私の弱点が文房具とランチとはな」
少しカッコよく呟いてみるが、机に突っ伏すと涙が溢れ出てノートを濡らす。
どんな攻撃だよ!
マニアック過ぎるだろ!
ピンポイント過ぎるだろ!
クリティカルヒット連発だよ!
これが続いたら、流石に耐えられない。
早急に突破口を探す!
涙で濡れたノートをそっと袖で拭きながら、新たな決意を胸に固く誓った。
◇◇◇
「ミャー子、あなたは呑気で良いわね……」
相変わらず優雅に昼寝をキメている老猫を羨む。溜息を一つ吐いてからアパートの階段をヨタヨタと登る。
はぁ、何もかも歯車が合わない。このままでは反撃など夢のまた夢だ。
「ただいまーって……」
扉を開けるとアルコール臭い。部屋の奥から陽気な声が聞こえる。
「あら、おかえり〜」
「ちょっと、一週間で一本って決めたじゃない?」
「ふふん! また商店街の福引で当たったのよ。神様も捨てたもんじゃないわよねー」
二箱も当たってる!
急いで箱をキッチンの棚に運び込む。既に酔っ払っているのでビールの片付けに異論は無いらしい。ご機嫌のまま話を続けている。
「明日は何社か面接行ってくるわ。良いパート見つけてくるわね!」
「もー、私は一足先に今日からバイトだからね!」
制服を脱いで簡単な服に着替えて歯を磨く。
「ヤバいヤバい、遅刻しちゃう」
「あれっ? 学校から直行しないの?」
「今日は手続きと教育だけだからね。明日からは直行よ。じゃあね!」
靴を片足トントンしながらドアを開ける。今日は動きやすさ重視でスニーカーだ。
「いってきまーす」
「いってらっ……」と途中でドアを閉める。
ちょっと小走りしながら気合を入れる。今は私が屋台骨なのよ、爪楊枝くらいの細さだけどね!
◇◇
「あら、クリームパン掴むの上手ね。じゃあレジのやり方を教えるね」
「はい、お願いします」
平日の夕方はお客さんも然程多くない。日も暮れてしまうと閉店までの一時間程はバイトの憩いの時間となる。店主はパンだけを焼いていたい人種なので暇そうでも接客バイトは必要らしい。
「あのクリームパンすぐ掴めるなんて才能あるわね」
「いえ、部長くらいですよ、あんなに失敗するの」
「うぐぅっ……相変わらず厳しいわね、ふふふ」
突然、カランカランとドアベルが鳴った。
「栞、お久しぶりー」
「あら美織じゃない! 元気してた?」
如何にもお嬢様という感じの出立の女性が部長と親しげに話していた。
「あら、新しいバイトちゃん?」
「そうよ。文芸部の後輩よ」
「へー。こんにちは。私は佐藤美織よ」
シックなワンピースにつば広帽の可憐なお嬢様。背は百六十五センチくらいだが、百五十センチそこそこの叶笑に比べれば大人の女性の雰囲気を醸し出している。
ちなみに部長は背が百七十センチあり、スタイルも良い。部長と私は可愛いワンピースにシックなエプロンを合わせた制服なので前世の宮廷のワンシーンの様だ。
「南早田叶笑です。部長……じゃなくて三隈さんの友達?」
「んふふ、栞、まだ部長って呼ばれてるの? あっ、あなたが噂の文芸部のエースちゃんね! 私のことは美織と呼んで。あなたのことは叶笑ちゃんと呼ばせて貰うわ。栞は部長でも何でも良いわ」
少しズッコケる部長。
「ちょっと、私も栞で良いわよ! ねっ、叶笑ちゃん」
「あ、はい。分かりました。美織さん。ぶ……栞さん、よろしくお願いします」
「ふふ、美織はお金持ちだから書いた小説を書籍化して貰うといいわ」
「いや、ウチは飲食よ。ミミちゃんみたいな何でも屋さんじゃ無いわ!」
ミミちゃん……ミミ⁈ もしや!
「あの、ミミって……」
「ん? あぁ、あなたの一個先輩になるわよね。七竈戸ちゃん」
接点キターッ!
「あの……七竈戸さんって、どんな人なんですか?」
「ミミちゃん? あの子……ちょっと……変なのよね」
小首を傾げて小さくため息を吐いている。
「はい。私が気に入らないのか、やたらと当たりが強くて……」
「美織、あの子と友達だったんでしょ? どんな子だったの?」
栞も美織に聞いてくれている。
少し上を向いて口を尖らしながら考える美織。
パッと部長と私を見ると、言いにくそうだが話始めた。
「そうね……あの子、小学生の時から何か変なのよ。怖いところがあったっていうか……」
急に顔を寄せて小声で言い始めた。
「虐めるのが好きみたいなの。あの子ね、猫を飼ってたんだけど……」
「えっ、動物の虐待?」
前世でも小動物を虐待して殺すヤツは犯罪者予備軍だった。そのうちに人間を襲い出す。そうか……やはりヤバいヤツだったのか。
「ペット用チューブ菓子の味を覚えさせてから、安いカリカリしか与えないの。可哀想よ! 必死でチュール下さい、ってやってる猫にアナタはこれがお似合いよ、ってカリカリをあげるの。猫の絶望する顔。ホントに可哀想よ」
必死で訴えかける美織。
ん? しつけ?
「それでね、一ヶ月に一回くらいチュールをあげるの。末期の薬物中毒患者みたいにしゃぶるのよ。怖いわ」
いや、しつけだよね……。
嗜虐的……というより子供っぽい……?
どういうこと? 違和感しかないわ。
そこでカランカランとドアベルが鳴った。
店に入ってきたのは柏原伊吹だった。
「いらっしゃいまっせー」
「あっ……いらっしゃいって、柏原っ!」
パッと後退る叶笑。
「貴様……ここで何をしている!」
「それはこちらのセリフだ!」
睨み合う二人。
「あら、お友達?」
「「違うっ!」」
二人声を合わせる。
「あらあら、仲が良いのね」
仇敵、柏原伊吹! 直接攻撃か?
「南早田、早く転校することだな。文房具も可哀想だろうに」
「貴様っ! やはりお前の仕業か!」
その行い、万死に値する。
この場で焼き尽くしても、この怒り治らんぞ!
「はい、柏原さん。予約のラスク特盛ですよ」
「ふ、普通に買いに来たのか?」
紛らわしい!
てててっとレジに小走りする部長。
「はい、百五十円です」
棚からビニール袋に入った山盛りのラスクを取り出す。
「何っ? その山盛りで百五十円だと!」
「そうだ。人には決して出来ない真の乱数がそこに実現されている。パンの耳が複雑な固さで揚げられ砂糖がランダムにまぶされた芸術品、最高の一品だ」
部長が苦笑している。
「何その分かりづらい食レポ、ふふふ」
微笑みながらレジを打つ部長。
そして獲物を狙う鷹の目でラスクを睨む私の瞳!
「天使の恵みの様な油と砂糖。そんな神々の供物が百五十円だとっ!」
「ふふ、南早田さんの食レポも独特ね。お似合いよ」
すると、店主が少し小さめの袋に入ったラスクをレジ台に置いてくれた。
「百円ね」
うひゃーー! 感激だよ、パン屋のラスクなんて口に出来るの何年振り?
「店主様! な、な、な何と! 天の恵み! ありがたい……」
「南早田……僥倖だな。ここで俺だけ購入出来るのは敵とはいえ余りに不憫」
「柏原……今だけは休戦だ。ここで争うはラスクに失礼だ」
「分かった。このパン屋は中立地帯としよう。では、弟達が待っているのでな」
何となく部長と美織の目が優しくなっている。不器用な二人を応援しているかの様なピンクっぽい雰囲気だ。
「部長、美織さん、そういうのじゃないからね!」
「そうだ! 次会う時は戦慄を覚えさすこと間違いない! さらばだ!」
慌てて柏原は店を出て行った。
「あらあら、良い雰囲気ね」
「どうしたら、そう思えるのか……あっ」
ここで追いかければ柏原の日常が垣間見れるやも知れない。
「急用があるのを忘れていました。今日はこれで良いかしら?」
「ん? 後はレジ締めだけですけど……」
ここで美織が部長に耳打ちする。
「……あぁ、そうか! また明日にしましょう。がんばってね」
「叶笑ちゃん、だったわね。このお店は私も常連なの。また困ったことがあったら聞かせてね」
「はい! ありがとうございます」
エプロンを取りながら更衣室に駆け込む。着替えていると店内の二人の会話が耳に入ってきた。
「ねぇ、南早田さんと柏原くん、お似合いね」
「そうね。思ったよりお似合いかも。応援しましょ!」
「んふふ、私、ちょくちょく見にこようかなー。あー、楽しい」
勘違いも甚だしい! とはいえ恨みの炎でこの身を焼き尽くすばかりの激情を秘めていること、説明するのも億劫だ。このままにしておくか、とため息を吐く。
更衣室から出るや否やドアノブに手をかけたところで帰宅の挨拶していないことに辛うじて気付いた。
「店長様、ラスクありがとうございます! 給料から差し引いておいてください! では、お二人も、失礼します」
返事が返ってくる前に店から飛び出る。
どちらだ? 右か? 左か? 既に姿を見失っているとは!
逡巡していると背後から美織が声を掛けてくれた。
「左じゃないわ、右よ、右!」
「あっ、そうか。ありがとうございます!」
右の方に駆け出して行った。
「かーわいい! あの子の想いが届くと良いわね!」
背後から微かに聞こえる勘違いしまくりのセリフを無視して柏原の尾行を開始した。
◇◇
「よしっ、まだ居た。見つからないようにっと……」
十分ほど歩くと、直ぐに柏原の家に着いた。
「ちっ! やはりデカい家、金持ち……って違う?」
豪華な邸宅の隣のボロいアパートの一室から四人ほどの子供達が出て来た。
「お兄ちゃん、腹減ったー!」
「腹減ったよー」
「兄ちゃん、宿題見てくれよ、わかんねー」
「お兄、お兄、遊んでよ」
弟妹か……しかし、見慣れたこのアパート。見慣れた服装。雰囲気。
「こいつ……貧乏なのか」
しゃがんで待つ柏原は揉みくちゃにされている。立ち上がると頭を撫でながら部屋の方に向かう。
「あっ、そういえばいつものお姉ちゃん来てるよ!」
「えっ? 七竈戸様が? では伝えてくれ。ほら、ラスクだ。先に中に入って食べててくれ」
「あっ、やったー! ラスクだー! お姉ちゃん、お兄、帰って来たよー」
「俺のも残しておけよ! 全く……」
表情が柔らかい。そこに現れたのは正しく七竈戸。
「お姉ちゃん、またねー」
「また来てねー」
「ふふ、また来るわ」
こちらも柔和な表情だ。
柏原の元に七竈戸が近づく。対峙する二人を木陰からそっと観察する。
「ほら、今回の報酬だ」
「こんな真似、いつまでさせるんだ……」
何かを手渡す七竈戸。それを確認する柏原。
あっ、鉛筆だ! それも、七竈戸鉛筆! うぷぷ。アイツ、文房具で買収されてるのか……。
「頑張りなさい。私を満足させる働きをしている内は支援を継続するわ」
「くそっ、恐ろしい女め。しかし、あの女の親の仕事に関与するのはやり過ぎだろ?」
あっ、お母さんのパートのことか?
「ん? お小遣いが減ったって大丈夫でしょ? 月八万や九万なんて何も出来ないわ」
「いや、それであの二人は生活してるんだぞ……」
「まさかっ! まぁ良いわ。私は叶笑にしか興味が無いから。じゃあ、もう少し頑張ってね」
すっと振り返ると、柏原の言うことなど何も聞かずに去って行った。柏原もアパートに戻ったのを確認すると、状況を整理しながら家に帰ることにした。
何だ、この違和感。凄惨なイジメに関わっているにしては呑気過ぎる。あの男の悪逆非道な行い、悪人のそれとしか思えない……って、少し冷静になりましょう。
あの二人にやられた事を整理する。
・消しゴムの角を使われる
・マーカーを汚される
・ノートを少し折られる
・ボールペンのインクを替えられる
・そして、黒板消しを落とされる
んー。子供の悪戯。叶笑には効果的だけど、冷静に考えたら大した事されてないわ。
お母さんのパートはヤバいけど……何が目的なのかしら。
◇◇◇
次の日も、教室の自分の席には七竈戸が座っていた。
私に気付くと怪しく微笑み口を開く。
「南早田さん、私の性奴隷になりなさい」
第二の女帝編は中盤。
騎士の以外な姿に困惑する叶笑。
次回クライマックス!
★一人称バージョン 2024/1/3★