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第十二話 第三の女帝② カーストは壊れない1

 急に激昂し始めて頭を掻きむしる第三の女帝の比良理(ひらり)麻衣(まい)。怒りのあまり少しパニックになり、トレイごとクリームパンを床にぶちまけた。


「さぁ、こんなクソな店は早く出ましょう!」

「比良理さん! パンになんてことを!」

「はんっ、クソマズパンなんか犬に食わせれば良いのよ! ほら、アンタら、買いたかったら買いなさい!」


 落ちたパンを指差し蔑むような笑みを浮かべる麻衣。あまりの事に呆然としていたので事態を理解するのに数秒かかった。


「貴様、精魂込めた職人の誇りを何と心得る! 無礼者が、成敗してくれるわ!」


 飛びかかろうとした瞬間、店主が裏からのそっと現れた。


「弁償。嫌なら警察」


 髭面の大男が突然現れたので静まり返る周り。非難の視線に耐えられなくなってきた麻衣。キョロキョロと周りを見回すと突然に雷灯(らいと)の手を持って店外に走り出そうとする。

 しかし柏原が扉の前に腕を組んで立っていた。


「比良理、店主の言うことを聞け。逃げれば警察には正直に話すしかなくなるぞ」

「柏原……貴様まで南早田に……」


 怒りで目をひん剥き肩を上下させる麻衣。

「ふんっ!」と鼻息荒く振り返るとツカツカとレジまで歩きピン札の一万円札をわざわざクシャクシャにしてからレジ代に叩き付けた。


「これで満足なの! ホントにケチ臭い店ね!」


 万引きがバレて開き直った犯人のようで控えめに言って最低。

 しかし……絶妙にツインテールが似合っていない。

 肉付きの良い身体は……まぁギリギリか?

 少し半笑いになるがミミの願いを思い出し忠告する。


「比良理さん、元女帝の七竈戸(ななかまど)さんが騎士の子に対する態度や触り方がハラスメントっぽいと気にしていたわ。注意しなさい」

「な……何で…………おま……」


 更なる怒りでもう声も出ない麻衣。

 それを見て少し楽しくなってきた。もう少し蔑んでやろう。ははは。


「この店の前の通りでも変質者や露出狂が現れるのよ。貴女も誤解されないように気を付けてね」


 何故か急に挙動不審になる麻衣。


「あっ……な、な何言って……はっ! カメラ?」

「そうね。防犯カメラにも確か変質者が映っていたわよ。貴女がさっき騎士の子に触っていた映像だって何かの証拠になるかもよ? んふふ」


 そう。最近の趣味の一つは、この店の防犯カメラの録画を眺めること。時折映っている人間模様が最高に面白い。良いコレクションが順調に増えている。

 ここで柏原が扉からすっと退いたので、麻衣は店の外に走って出て行った。嫌そうに待っている雷灯の手を握ると大声で叫び出した。


「あーあ、上客を逃したわね! こんな店はすぐに潰れるわ!」


 そのまま駅の方に走って行った。

 暫し誰も声を出せない。すると静けさの中、店主がクリームパンの乗ったトレイを拾って棚に戻した。


「トレイに乗ったままのクリームパンは綺麗だと思います。もし良ければお持ち下さい。お代は不要です」


 その日は店を閉めることになり、お客さん二名と私と柏原の四人で無事だった十個ほどのパンを分け合うことになった。二人の客は一つずつしか持っていかなかったので、私が二個、柏原が四人の弟妹(ていまい)の分も入れて五個のクリームパンを手に入れることができた。


「ありがとう。お二人さんの気持ちが嬉しかったから、コレはサービスだよ」


 照れながら店主は机の上に山盛りの特製ラスクと売れ残ったパンの詰め合わせ二袋をそっと置いた。幸せの供物を前に二人で顔を見合わせると、柏原に向けて太陽のようなニッコリ笑顔が溢れ出した。

 思わず手を取り伊吹を立たせて社交ダンスのステップを踏み始めた。


「お、おい、南早田! 俺は踊れんぞ……」

「ふふふ、私に身体を任せれば良い。幸せな時は踊るものだぞ! ほら、ワンツー、ワンツー……」


 観客は店主一人。

 私がリードするから狭い店内でもクルクルと踊り回るわよ。

 あれ?

 柏原のほんのり上気した身体から立ち昇る熱気に我に返る。その頃には柏原の顔は真っ赤になっていた。それに気付いた瞬間、私の顔もポッと赤くなる。


 いや、待て。こんな事で恥じらうなど初心(うぶ)な乙女か!


「すまん、あまりの嬉しさに我を失っていたようだ」

「はは、浮かれるのも仕方ない。で、では帰って店主の心遣いを頂こうではないか」

「そ、そ、そうだな。また会おう!」

「お、おおうっ!」


 しどろもどろになりつつ店を後にする二人だった。



◇◇◇


 今日のの昼ごはんはパン屋さんで買った(買ってはいない)高級な惣菜パンよ。ちょっと豪華過ぎて心の中で舞踏会が始まってるわ!

 階段の踊り場でクルッとと回ったりしながら教室に向かうと、叶笑の席の周りには同じクラスの姦しいメンバーが揃っていた。


「南早田さん、おはよう。そうそう、ご存知ですか? 変な制度が始まるって噂」

「いや、何も知らんが?」


 ふはは、ランチが豪華だと陽気になってしまうな。所作一つ一つも舞台俳優のように無駄にキビキビしてしまう。


「あら、南早田さん、いいことでもあったのですか?」

「んふふ、昨日な。神々の供物のお裾分けがあったのだよ。全く踊り出しそうな気分だよ」


 少し前に急に踊らされた耳年増な女子生徒がビクッとして固まっている。踊らされると焦っているのかチラチラと私の顔色を伺っている。


「ふふふ、踊る?」


 揶揄うために手を出すと、何故か顔を赤らめながらそっと手を握ってくれた。


「あら嬉しい。ではお付き合い下さいね」


 一緒に席を立って踊りだしてみた。すると練習してくれたのか前回よりスムーズにダンスについてくる。


「んふふ、練習してくれたの? 凄く嬉しいわ」


 小声で呟くと耳まで真っ赤になりながら「はい」と返してくれる。

 暫し音楽も無い中で私の「ワンツーワンツー」というリズムを刻む声でダンスを楽しんだ。


「そう、変な制度の話……」


 周りの生徒がダンスを眺めながら話を続けてくれた。


「何か『カースト制度』に近いとか……嫌だわ」

「カースト? 身分制度を学校内に作るというのか?」


 気になりダンスをやめて会話に混ざる。相手の子は少し残念そう。


「そうなんです。詳しくは来週発表ですって。比良理さん発案だとか……」

「比良理……アイツか……」


 悪い予感しかしない。朝から不吉な噂を聞いてしまったが、別段悪いことはその日何も起きなかった。ただ、学校の食堂を大きくするとかで大規模な工事が始まっていた。


◇◇


 平穏な日々はありがたい。着実にバイトをこなす毎日が続いた。十八時から二十時までが労働の時間。月曜と土日はお休みという安心のホワイト勤務。

 客もこの時間はあまり来ないので、暇を持て余す時間帯だ。掃除でもしていることが多い。

 今日は珍しく新商品のポップを準備してくれと店主()から御達しがあったのでレジ台を机にスマホで文章を検討中。

 一人ブツブツ呟いている。


「特徴はチーズがこれでもかと丸いパンに押し込まれていることか……。うーむ、『温めれば口の中は火傷だらけ。もはや対人兵器』は(エリザベート)のセンス。ダメだな。叶笑に頼ろう」


 暫くスマホをポチポチして良さそうなワードを探す。

 静かな初夏の夜。通りはまだまだ賑やかで、学生の声が時折聞こえてくる。


「んふふ、もう少し遅くなると酔いどれ共が跋扈(ばっこ)する楽しい時間となるのだがな……」


 客は数名しか来ずポップ作成が捗る始末。


「ラスクは水木のみ。今日は柏原も来ないか……」


 独り言も少しアンニュイ。柏原のイメージが少しキラキラしていることに気づくと、頭を数回振ってキラキラを払い飛ばす。


「興醒めだ。愉快なモノでも見て気分をアゲるとするか」


 ゴソゴソとレジ台の下からリモコンを取り出して操作すると、監視カメラの映像がレジ横のモニターに映った。『動体センサー』とやらのお陰で非常に飽きない映像が連続で映し出される。


「うぷぷ、また此奴(こやつ)か。酒は飲んでも飲まれるなよ」


 モニターの中の酔っ払いにツッコミを入れる。


「そうそう、もう一度参考のために見るか……」


 リモコンを操作すると、モニターには季節感のおかしいトレンチコートをぴっちりと着込んでハットを被った男が現れた。小学生の子達が数名すれ違うかと思った時、男はコートをバッと捲った。残念ながらコートの中がどうなっているかは見えないが、子供達の視線が胸と股間に集中しているところを見ると上下レディースの下着姿なのでは、と叶笑は予想していた。


「ふふふ、まぁ、趣味は尊重しないとな……」


 慌てふためく子供達と後ろ姿でも分かる満足そうな変態。この映像にインスパイアされて小説を書き始めていた。既にWEBの小説サイトに一話を投稿している。

 『変態露出狂だけど実は異世界で勇者やってました。ビキニアーマーを街中で着ちゃダメですか』って話。いつも街中でもビキニアーマーだったから現世の服装に合わず、夜に欲求を満たす為に徘徊するという話。前書きには、しっかりと『実際の監視カメラの映像にリスペクトして書き始めました』と書いてみた。

 監視カメラ画像を挿絵代わりにアップして読者にも臨場感を味わって貰おう。


「ふふふ、こりゃダメかな……」


 まぁ良いや。楽しいから!

 不人気なら早々に終わらせてしまおう!

 モニターの電源を切って、レジ締めを開始した。



◆◆◆


 同じ頃、豪華な部屋に一人、パソコンの画面を見ながら肩を振るわせる比良理の姿があった。プロ仕様のパソコンはマルチディスプレイで複数の壁紙は雷灯の裸や股間のアップばかりだ。ディープフェイク(AI利用の贋作)を利用した十八禁な画像まである。

 そして、正面の画面にはWEB小説サイトが表示されていた。


「な、何なのこの小説は……キーーーッ! 南早田めー、抹殺よ、すぐに追い出してやる!」


 下着姿でマウスをパッドに叩きつけながらガチガチとクリックしまくる。


「今夜使うネタを探してたらこんなモンを見つけるとは!」


 海外の動画サイトらしき画面には少年や青年が襲われる映像ばかりが映っている。チラッと動画に目をやりほくそ笑むが、頭を振ってから見上げて祈るように両手を組む。


「あぁ、フィフス様の計画を進めなければ……」


 そっと恨みを買い、またも陰謀に巻き込まれる叶笑。


「ふふふ、見ていなさい南早田叶笑。お前は虫ケラ以下だと思い知らせてやる!」


 背後のクローゼットには無駄に煌びやかな制服が輝いていた。



◇◇◇


 季節は梅雨時。雨傘を差して登校する。

 湿度も高く制服の袖が雨と汗で肌にピッタリと貼り付く。不快だが教室に入れば緩いとはいえエアコンが効いているのだ。それまでの我慢。

 教室に入り自分の席に着くと、いつものメンバー四人が周りを取り囲む。


「南早田さん、おはよう。聞きました? 噂のカースト制度の話」

「いえ?」


 皆が不安そうだったり不満を持っているのがありありと感じ取れる。


「制服をカーストによって変えるらしいのよ!」

「なんとっ! それは無駄な話だな……」

「そうよ、無駄よ!」


 このご時世だ。金銭的に余裕の無い家庭も多かろう。無意味に金を使わせるなど愚策も愚策。反感を買うだけだろうに、何を考えているやら。


「ほらっ、暗い話はもうやめて、南早田さんのダンス教室を開催しましょうよ!」

「おっ、修練の心掛けは感服だな。では早速始めるか」


 私を入れた四人は立ち上がると隣同士でペアを作ってステップを踏み始めた。あぶれた一人は楽しそうに手を叩いている。


「はい、スロークイッククイック、はいターン、おぉ、上達しているぞ。それクイックアンドクイック、ターン、ははは上手だぞ!」

「キャハハ! 私うまーい!」

「良いぞ良いぞ、皆がステップを踏めるようになったらミミに言ってダンスパーティーでも開催させるか?」

「キャー、楽しみーっ!」


 しかし自分の体力の無さに辟易する。数曲踊ると疲れ果てて椅子に座ってしまう。今日のペアだった『耳年増の生徒』が一番上達していて楽しそうに踊っている。

 ふふふ、ミミとも連絡をとっておくか。SNSというのも使い方次第で便利だな。叶笑は『炎上』や『流出』が怖くて使えなかったようだがな。

 それ、ポチポチっとな……ん?

 何故かスマホはクルクルと回るアイコンが出て一向に画面が切り替わらない。


「あれ? 何だ、動かん……」

「あっ、先生よ!」


 ガラス越しに歩く姿が目に入った。既に始業時刻を、回っているらしく周りの生徒も席につき始めていた。


「じゃあ、またね、南早田コーチ!」

「ん? あぁ、よしっ、今度はスパルタでシザースまで教授するとしよう」

「はいっ、コーチ! パーティー約束よ、んふふ!」


 慌てて自分の席に戻る生徒達。すぐに授業は始まった。授業中もスマホの画面を見てみたが、画面はまだ切り替わっていなかった。


◇◇


 結局、その日の校内ではまともにスマホが使えなかった。お陰でミミに連絡を取ることも、日々のポイ活もできない始末だった。

 学校が終わると真っ先にイ○ンのフードコートに駆け込む。小走りできたので汗だくだ。


「はぁはぁ……故障はやめてくれよ」


 祈りながら画面を更新すると普通に動き出した。ミミからのメッセージも数件溜まっていた。


「ほっ……良かった。壊れてはいないようだな」


 ポチポチ画面を突きながら先ずは日々の日課のポイ活(色んなサイトのスロットとスクラッチ)を片付けてから、ミミに返信する。

 ダンスパーティ開催はどうですか、と。

 返信して数秒後に『いいね』のアイコンが飛んできた。兵は神速を(たっと)ぶ、か。良い心がけだ。

 満足気に水を飲んでから、嫌な予感がして残パケットを確かめる。すると、昨日まで残っていたギガ表示がゼロになっていた。


「ななな、なんと!」


 一人で思いっきり叫んでしまうと、周りに居た他校の男子が何故か右往左往していたが、そんなものは目に入らなかった。

 昨日まで残っていたパケットはどこに消えた!

 画面には1ギガ五百円の文字が点滅している。スマホは使えても細かい契約や仕組みは意味が分からない。


「いつの間にか使ってしまったということなのか? う、迂闊すぎるぞ叶笑……」


 呟きながら震える指で『1ギガ購入』ボタンをクリックする。一ヶ月分のお小遣いと同額だぞ? バイトしているから買えぬ金額では無いとはいえ、何という無駄遣い。


「節制せねば……」


 ソフトクリームを食べながら優雅に過ごすつもりだったが、意気消沈したので家に帰ることにした。


◇◇◇


 次の日、登校するとクラスの半分ほどの生徒が新しい制服に身を包んでいた。

 いつも私の周りに集まってくる姦しい娘達は三人はまだ旧式の制服だったが、一人は制服が変わっていた。


「ごめんなさいね……ダンスはもうやめようと思って……」

「いや、問題ない。学生の本文は勉強だからな」


 それを優しく伝えるのを聞くと、新しい制服に身を包んで騒ぐ一団に混ざる為に去っていった。


 その日は何となく重苦しい一日となった。学校全体でも半分くらいの生徒の制服が新しくなっていた。

 新制服はランクが設けられており、S、A、B、Cと四段階に分けられている。

 Sは女帝と騎士専用の制服。残りは金額で分けられていた。Aは二百万円を超える金額で、Bは三十万円ほど、Cは十五万円ほどだった。

 デザインは統一感があるものの、素材や光沢感はランクがぱっと見で分かるように分けられていた。


 次第に、同じランクの制服を着るもの同士で集まるようになっていった。


◇◇◇


「私達も……」

「そうか。また機会があれば……」


 次の日、耳年増な生徒一人を残して二人が私の周りから去っていった。


 更に次の日は、遂に耳年増な生徒も新しい制服に身を包んでいた。


「南早田さん……あなたと友達はダメって両親から言われて……」

「そ……そうなのか?」

「はい。制服を購入した生徒の親が参加できるSNSや掲示板に色々な情報が回ってるらしいの。あなたが要注意な生徒の筆頭よ」

「……分かった。教えてくれてありがとう」


 後ろ髪引かれる感じだったが、耳年増も私の元を去っていった。見回してみると、クラスの中も完全に制服のランクでグループが作られていた。

 Aランクの生徒は同じランクで集まりたいのか教室から出ていってしまっていた。五人ほどのBランクの生徒は誇らし気に集まり、最も多いCランクの生徒は少し大人しめに集まって噂話に興じていた。

 まだ制服が変わっていない数名の生徒は如何にも肩身が狭そうだ。同じ旧制服同士で集まるわけにもいかず、寝たフリでもするしかなさそうだった。


 次第にそこかしこで制服のランクを理由に態度を変える者が増えていった。Cランクの制服に身を包んだ生徒がAランクの制服の子に声を掛けると、あからさまにAランクの子は素っ気ない態度をするようになっていた。

 そうなると、未だ旧制服を着ている子達には、ABCランク全員がゴミでも見るような態度を取るようになるのに時間は掛からなかった。

 廊下を歩くだけで旧制服の生徒は不穏な雰囲気を感じるようになったいた。


 そして昼休み、ランチ前にトイレから席に戻ると机の上にあったパンが鞄ごとゴミ箱に捨てられていた。


「な……だ、誰が狼藉を働いたー!」


 思わず叫ぶがクスクスという笑い声しか返ってこなかった。

 ここまで差別が蔓延している、だと? 少し絶望する。

 ゴミ箱からパンを拾うが袋は破られゴミに塗れている。とても食べられない。更に、ペンケースに入っていた文房具も壊されて捨てられている。

 ここで頭に浮かぶのは伊吹の攻撃だった。温情を感じられた前回とは全く違う悪意の塊のような行為。


「ここまでやれば犯罪だ。イジメだ万引きだ、などと曖昧な表現は使わん。実行犯! 裁判など不要、万死に値するぞ!」


 殆どの生徒は押し黙っている。クスクスという蔑みの笑い声は一部の生徒だけから聞こえてくる。睨みながらその一部の生徒の元に足を踏み出したところで、金切り声で笑う声が聞こえてきた。


「ギャハハハッ! 思い知った? ランク(奴隷)さん!」



――教室に入ってくるのは第三の女帝の比良理(ひらり)麻衣(まい)



「あなた目障りなのよね。ホント見苦しいから退学しなさい」


 取り巻きを従えて自信満々にニヤニヤしている。隅には小さくなっている菊地雷灯(らいと)も見えた。



――煌びやかな制服に身を包む女は意地の悪い笑みを浮かべる



「どう? 見窄(みすぼ)らしい制服に――」

「――法律が変わったことを知ってるか?」

「はぁ? 何のこと?」


 怪訝そうな顔をする比良理に苛烈な言葉を叩きつける。


「手を出すショタはブタ箱行き十年だ。不同意性交罪なんてバカな女は知らんだろ? さっさと自首した方が恥が少ないぞ」

「な、な、なな何だとっ!」


 私は逃げんぞ。攻撃の意思があるなら反撃あるのみ!


(エリザベート)に仇なすなら宣戦布告だ。薙ぎ払ってやるから覚悟しておけ!」

「南早田……きーさーまー!」



――女の矜持は悪鬼羅刹より怖いことを思い知るが良い



 比良理を睨みつける叶笑。

 逆上の赤い炎では無い、冷徹な冷たい青い炎が目に見えるようだった。

女帝の攻撃が始まる。

ショタで変態の比良理ひらりの魔の手が叶笑と雷灯らいとに迫る。

叶笑と柏原に進展はあるのか? 耳年増な女子生徒や雷灯はどうなるか?


★一人称バージョン 2024/1/3★

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