みんな知ってる、みんな望んでる
投稿がかなり空いてしまいました……。
時間のある時に少しずつ書き進めては保存してを繰り返して、気が付けば8月になってしまいました。
なんとか時間をとって今月は最低でも2話分は投稿したいと思ってます、頑張ります!
2053年4月27日カリフォルニア州サクラメント──自宅のアパートにて──
「やっと……やっとツキが回ってきたっていうのに…………!!」
ここ数日間様々なメディアで取り上げられ、ありとあらゆる話題をかっさらった“ミス・ライトニングボルト”という名。それを一昨日辺りからある者たちに奪われた。そう、第二の使役者とマホウショウジョが現れたのだ。
『第二の魔法少女テロリスト、各地で強盗を繰り返す』
『犯人はサイモン・フィリップス42歳。“ザーグ”と名乗る殺人魔法少女と共に各地手銀行支店を襲う』
『ライトニングに続くテロリストが警備員や警官を殺害、強盗を繰り返し──』
第一に私が殺人犯と同一のテロリストとして世間から見られるような表現をされていることに苛立ちを覚える。そしてこいつらのせいで私の名が取り上げられることが減ってきている(取り上げられてもこいつらと一緒)ことにも腹が立つ。
美術館の件以来、私たちは派手なことは控えていた。
何せあの事件の後、美術館のオーナーが私たちに巨額の懸賞金をかけやがったのだ。よりにもよって私たちを襲おうとするやつらはいないだろうが、それでもやはり内心は少々ビビっている。これは認めざるを得まい……。
しかしこれ以上こいつらを野放しにはできない。家族のため、手術費はなんとかなるだろうが、やはりもっと稼いでおきたい。子どもたちにもっといい環境を作ってあげたいし、家族みんなを旅行に連れて行ってあげたりしたい。みんなのこれからの暮らしを豊かにできるのは私しかいないのだ。
「サティー!今から動画撮影するよ、支度して……って何してんの?」
「虹7だけど?ゲーム機使っていいって言ってたでしょー?」
「まだサ終してなかったのかこんなク……じゃなくて!支度してってば!!」
「んーいいけど急にどうしたの?しばらくは活動を控えておきたいっていってたのハンナの方じゃーん」
しばらくはSNSで返信に答えたりサティの写真を加工してアップロードしていただけだった。
「そうだけど、ついこの間ニュースみせたこいつら、私たちで止めるよ」
「んー戦いたいのは山々だけど、この昇格戦、あーわかりやすく言うならバトルロイヤルは、結局ある程度他のマホウショウジョらが戦いだして消耗してきたところを狙っていわゆるぎょふった方がいいよーってこの前話して納得してくれたじゃんかー」
「それはそうだけど、こいつらを野放しにしてたら関係のない人たちがどんどん巻き込まれていくし、倒せば私たちはテロリストから一気にヒーローへ昇華される!サティ、これはチャンスなんだよ!」
たしかにサティの目的である昇格戦とやらで勝つためのメリットとしてはまだあまりないらしいが私としてはこの状況を放っておくことは最善とは思えない。ここはなんとかしてサティにその気になってもらわないと。
「それに、倒すことも大事なんじゃなかったっけ?そんなこといってたよね?」
「いったけど、ボクが戦陣切る勇気無いなぁ……。ボクって遠距離からドカンと理不尽に何でやられたかもわからない一撃必殺で戦う方が、能力的にも向いてるし、一対一の戦闘も好きだけどさー……。でもヒーローかぁ……」
「そうだよ、これまでは遠くから一撃、きっと戦場で目立つことはなかったと思う。でもこれからは、この戦いでサティ、あなたは変わる。正々堂々と、誇れるようになる。」
「そんなこと言ったってぇ……遠距離からの・超一撃がボクの専売特許なのに──」
「違うよサティ。近距離だろうが超一撃、私たちなら絶対一番になれるよ!!」
「諸君、こうして動画を投稿するのは久方ぶりだな。ミス・ライトニングと──」
「こんちゃ~、魔砲少女サティールちゃんっす!」
「今日、こうして動画を撮っているのは他でもない。この動画は、各地で強盗殺人を繰り返している極悪人『サイモン&ザーグ』への宣戦布告だ」
「我々はこの腐りきったアメリカと、殺人鬼共を許さない。そして我々をそんな輩と同一視するようなメディアたちも同様だ」
「しかし我々は人殺しなんぞには手を染めるつもりはない。捉えた殺人犯共も生きて警察に引き渡そうではないか」
特に台本のようなものを用意していなくても、ここ数日言えなかったことが溜まっていたのかすらすらと脳に字面が浮かび上がってきた。
動画を投稿し終え、早速ついたコメントを眺める。
≪動画待ってたぞ!お前らならやってくれると信じてたぜ!!≫
≪まじで一体魔法少女ってなんなん??≫
≪映像見る限りだとザーグたんも結構かわいい≫
≪サティールたそ推しです≫
≪生意気な感じしてるライトニングがいつかわからされる展開を希望≫
……最後のだけ気に食わん!ぜってーなってやらねー。なってたまるものか!!
「ハンナ!テレビ見て!!やつらのニュースの速報だよ、居所とかわかるかも」
『速報です、現在強盗犯はロサンゼルスからパシフィック・コースト・ハイウェイを物凄いスピードのバイクで逃走中とのことです──』
「よし、サティ。行こうか、うちらしか奴らを止められない。みんな望んでる、後でみんなうちらに感謝することになるさ、あの時サティールが倒してくれなければって」
「そしてみんなボクたちの名を知ることになるね、最強の魔法少女。ライトニング&サティール様だ!!」
2053年4月27日カリフォルニア州パシフィック・コースト・ハイウェイ
猛スピードでこちらへ向かってくるバイク。サティールでいうドマニの、確かこう言ってたような……そうそう、ホバークラフター。奴らのは空を飛べないのか、あるいはあえてそうしていないのかはわからないが、私はサティールに合図を出した。
「ファイ────」
サティってば、やっぱちょっと早いんだよな、タイミング……。ま、いいんだけどさ。例えると、太鼓ゲームだったら、可ってでてる感じのやつ。
相当我慢していたのか最初は乗り気じゃなかったサティも、連れ出して砲撃していいと言えば張り切っていた。
砲撃はバイクに直撃した……のかわからないが爆音と煙幕が立ち昇る。
しばらくするとこちらにバラバラになった金属片やらタイヤのようなものが転がってきた。これは案外楽勝だったのでは!?
「あ、しまった」
ここで私は自分の過ちに気が付く。
メディアの情報だけをみるに、ザーグもサティのようなマホウショウジョで(何せこんだけ派手に暴れて未だ捕まりも死にもしていないのだから)、サイモンという男が私と同じ使役者だと考えていた。いたのだが……。
「サティ、あいつらただのバカでサイコなパンピーだったら……どうする?」
サティ曰く、『マホウショウジョなら正面からの砲撃程度じゃそう簡単にやられたりしないさ!』とかぬかしていたのだが、これで終わってしまっては生け捕りにすると宣言したことが果たせなくなり、テロリストだけでなく、噓つきの肩書きまでついてしまうではないか!
「サティ!!ここから奴らは視える!?」
「え、えっとねー、もうちょっと煙が晴れたらわかるよ!あははぁ……」
突如、立ち込める煙の中から爆音が響いた。先ほどの砲撃の音とは明らかに違う。まるでゲームとかの強力なモンスターの眠りを妨げてしまった直後の、モンスターの発する咆哮のようなものを感じ、私は反射的に後退りをしていた。
「このオレさまにこんなちんけな爆発で威嚇してきたのはどいつだ、ア゙ア゙ン゛?」
煙が晴れるとそこにはニュースなどでみた奴らだった。
ハゲ頭にヒゲ面の男が“サイモン”、相方に不相応なそばかすに赤い頭髪、赤と黒のパンクな衣装に身を包んだ少女が“ザーグ”とみて間違いなさそうだ。
そして奴らの後方から、サイレンの音とともに、警察車両やヘリコプターが遅れてやってくるのに気が付いた。
私たちもこの場にいることはあまりよくないのでは?とも思ったが、捕まることはないだろう。大丈夫だ、サティのドマニがあれば逃げれるに違いない。何かの拍子に身バレ防止でつけているコスチュームとマスク的なのが取れなければ問題はないだろう。落ち着け私。
「貴様らだな!各地で強盗や殺人を繰り返す恥知らずのサイコ野郎共は!恥を知れ!!!」
内心とてもこの状況にビビってはいるのだが、せっかくここまでやってきて今更帰るわけもない。私は目の前の二人と会話を試みる。
「貴様ら、今ここで大人しく──」
「お前たち!今すぐ両手を頭の後ろにまわせ!!両膝を地面につけ大人しく投降し────」
私の声を遮ったのは警察だ。しかし突然の閃光と爆音で反射的に目をつぶる。同時に耳がやられ、キーンという不快な耳鳴りを抑えるために気が付けば両耳を手で塞ぎかがんでいた。ただの、少なくとも美術館の時の衝撃とは全く別の衝撃に、やたらゆっくりと時間が流れているような感覚に襲われる。
恐る恐る目を開き、状況を整理しようと試みる。
私が奴らに話しかけていた声を、警察の拡声器の音で遮られ、直後爆発が起きた。一体どこで?
単純な答えだったようだ。空中で煙と共に火花が散り、燃え盛りながら落下する警察のヘリコプター。目で追っているとそのヘリコプターだったものはゾンビのゲームや映画とかで聞いたことのある、キューンという音とともに地面へと墜落した。
「俺たちの邪魔をするやつらは問答無用で消す。俺とザーグちゃんとでな?」
その残忍冷酷な眼で睨まれた私はすぐさまカエルに様変わりした。
あのヘビにはどうすることもできない。あいつは何人も殺してきた、仮に事前にそのことを知らずとも私はきっと今と同様動けていないだろう。
「だが、俺たちのバイクを撃った別のやつがいる。それにザーグちゃんみてーなマホウショウジョっちゅーのかもしれない。そいつが来る前にザーグちゃん、サクッとドカンとやっちゃって」
「おう!そんじゃ、あばよ嬢ちゃん──」
「アハト・アハトアームズ解除ッ!ハンナ────」
後ろにものすごい衝撃で吹っ飛ばされる感覚を最後に私の意識が途絶えた。
「──────ナ、ハンナ!起きて!!起きてよお!!!ボク、もう耐えられそうにないよ……!」
初めてサティと会ったその日のように、私はサティの声で目を覚ます。
厳密には初めて会った時は酔っぱらってて記憶がなかったから自宅で目を覚ましたあの時だ。ってそんなことはどうでもいい。
「どうなってるのサティ、あれからどうなった……?」
「ハンナ!!よかった、やっとお目覚めだ!!」
どうやら私はサティに抱きかかえられているようだ。それにとてつもない爆発音がずっと近くで鳴り止まない。
「ちょ、ちょっとサティ!これどういうことなの!?!?ウチら奴らに襲われてるよねこれ!?」
「そうだよ!襲われてるよ!!まだほんの数分ってとこだけど、ずっと一方的に攻撃され続けるのって結構キツイんだよ!!」
「サティ、何してんの!反撃しないと!!!」
「そうなんだけど、ボクって近距離での戦闘は不向きだし、ハンナがザーグに目をつけられた時点で庇う以外の選択肢はなかったんだよ!ただ、条件さえ揃えばボクにもワンチャンがあるもん……ね」
サティもだいぶ無理をしているのが肌身で伝わってくる。
「条件って……確かそれ前に言ってたえっと、なんとかオーバーみたいなやつのこと?」
「そう!限界突破!!ざっくりいうとピンチになって使役者の許可が必要な強化状態が発動できる。それを使えさえすればボクらにもまだ──」
「おうおう、なんだか余裕そうだな雑魚マホウショウジョとその使役者!!」
ザーグの遠距離からの攻撃が止んだ。
グレネードランチャーのようなもので遠くからこちらを一方的に撃っていたようだ。サティ含め、どうしてこうマホウショウジョっていうのは、もっとマジカルなステッキを使ったりしてはくれないのだろうか。
「おめーがどんなマホウショウジョかわからねえからちまちまと攻撃してはいたが、そういや思い出したぜ。オレさま含むマホウショウジョには、ピンチになってからしか発動できねえ能力みてーのがあったよなぁ?」
「そう?ボクの能力なんて見てわかりそうなものだと思ったけどね、キミ程度のあたまじゃ思いつかないみたいだね。ちなみにキミは間違いなく『爆発』だね?」
「そう!オレさまこそ破壊とニトロを司る『魔爆少女』ザーグさまだ!おめえの今の侮辱は1万回死んだら許してやるぜ。だから100万回殺させろ!!!!」
他のマホウショウジョたちの能力がどんなものかがわからない、比較対象のない現段階ではパワー負けしていないどころか、破壊力でみればサティよりもあるのではないかというこのマホウショウジョ。敵ながら、魔爆少女の名にふさわしいパワーを見せつけられている。
「なんつったかなー、まあいいぜ。今から全身全霊でお前らまとめてぶっ殺してやる。だから必殺技も逆転のチャンスもなにも関係ないねぇ!」
ザーグは2つの魔法陣のようなものを召喚し、そこからロケットランチャーを2丁取り出し、両肩に担ぎトリガーに手をかけ、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「オレさまの能力『飽くなき破滅の渇望』は、オレさまの攻撃に含まれる粉塵に反応して威力が変化する。これが何を意味するか、馬鹿でもわかるよなぁ!?」
これまで避けもせず攻撃を食らい続けている上に、辺り一帯を好き放題爆破させているこの状況。ここからどれくらい離れればザーグの攻撃から免れることができるのか、見当もつかない。
「青ざめたな!?安心しろ、一瞬だ。それにもう一つ安心しろ、ホーミング機能もつけといてやるよ!!ヒャッハァアー!!!!!」
こいつはパンクを通り越してクレイジーでサイコだ。
「サティ、これって……」
「……」
どうやら詰みってやつらしい。とても申し訳なさそうな顔で、無理やりにこりと笑顔を見せる。
元々言い出したのは私の方だ、サティはとてもよく頑張ってくれた。最後にルーシーと話したかったな……。
「あばよくそ野郎どもぉ!!!あの世でヤりやがれぇ!!!!!!」
その刹那、上空からなにかが目の前に降りた。ガツンという道路のコンクリートが割れる音と衝撃波。爆発ではない。目の前に現れたのはそう、別のマホウショウジョだ。
ザーグは突如として現れたそのマホウショウジョに飛び蹴りをされたようで大きく吹き飛ばされ、倒れている。
「秩序のないアメリカに11インチキック! 悪者は力で組み伏せる、『魔龐少女』リィア参ッ上!!!!」
なんとか時間を作って、理想を言えば毎週何曜日に投稿みたいな形にしたいと思ってはいるのですが全然できそうにないです。ただ必ず完結はさせますので、これからもお時間のある時にでも何かほかの作品のついでにでも見て頂ければとても嬉しいです。