祈りを頼りに生きている
前回の投稿からだいぶ時間が経ってしまいました。
なかなか執筆に手を付けられず、前回が短かったこともあってか今回はかなり詰め込んだ内容になってしまったかなと思いつつ投稿します。
投稿頻度は上げていこうと思っておりますし、必ず完結もさせるのでこれからも思い出したときに、お時間あるときにでも目を通していただければ幸いです。
2053年4月20日カリフォルニア州サクラメント──自宅のアパートにて──
ブー、ブーという連続したバイブレーションの音で朝のアラームのようなだるさで目が覚めた。
その音は立て続けになっており、止まる様子はない。
どれくらい眠っていただろう、私はスマホを手に取る。
寝ぼけ眼を擦りながらスマホで時間を確認してみる。
「……はぁーもう昼過ぎじゃん。それにさっきからずっと鳴り止まないこの鬱陶しい通知の嵐は一体なんなんだ──」
私は通知ログを適当に一つ押してみる。それは私のSNSへのリプライだった。
ひょっとするまでもなく、これはいわゆる“バズる”というやつだ!!!!!!!!
「サティ!起きて!!!バズってるよ!ウチら注目されてる!!」
私は横で寝転がっているサティのからだを揺する。
「ん~ハンナぁ~まだもう少しだけ寝かせてよぉ……」
すっかり浮かれ気分の私はSNSでの反応にざっと目を通す。
≪よくやってくれた、彼女こそが神!正義!魔法少女!≫
≪こいつのことはどうでもいいけど、朝から悔しがってる金持ち共の顔を拝めて気分はいい≫
≪ありがとうライトニング!ざまあみろ富裕層ども!!≫
≪もう終わりだよこの国≫
≪MSSは、はやくこいつを特定してこのサイコ野郎を逮捕しろ≫
想像以上のネットの反応に胸の内側からなにかがこみ上げてくるような、脳から悪いものがドバドバとでている、そんな状態に浸りながら自分の起こした革命行為に対するネット記事を読み漁った。
1時間ほど読み漁ったところで分かったこと。それは、賭けではあったものの私の予想は概ね当たっていた。やはり一部の正義面したまじめくんたちを除けば、私の行動に肯定的な意見のほうが割合としては多く見られた。これは今のアメリカの情勢が大きいとは思うが、私の勇気ある行動は多くのアメリカ市民の希望となったに違いない。
……少々自分を評価しすぎた。あくまで私はルーシーのため、すぐにでも手術が必要なパルムのためなのだ。金持ちに恨みはあっても、AIにまで嫉妬するほど私の心はまだ荒んでいない。
ん?今何か大事なことを忘れている気がする……
そうだ!ルーシー!!!!
夜に電話をかけてから連絡が取れておらず、テロリスト出現みたいなニュースをみて、ルーシーが私を心配しないわけがない!
慌ててルーシーのメッセージを開く。案の定着信がかかっていた。アドレナリンドバドバで熟睡状態の私は気付かなかったのだ。
時間は……ってもう16時!?
私は、「連絡できなくてごめん!ただ夜更かしして寝てただけだから、今そっちに行く!心配かけてごめん!!」とメッセージを送り、寝ているサティをほったらかし、孤児院へと向かった。
2053年4月20日カリフォルニア州サクラメント──孤児院にて──
「ハナ!!よかった、心配してたんだから!!」
「ほんっとにごめんルーシー!夜更かししてお金増やす方法考えてたらすっごい寝てて……」
数日ぶりのルーシーとの再会。そしてハグ。
「ハナ、バイクは?」
そう、私の愛車であるスカウトは移動させたもののまだベガスなのだ。そのため私は全力で走ってきたのだ。おかげで汗だくだ。
「ちょっと調子悪くってさ、それにただ寝てただけでルーシーにですっごく心配かけたし、最近会えてなかったから」
運動全般が苦手な私が気づけば孤児院に向かって走っていたのだ。愛の力ってやつだ。
「うち入ろっか、みんなハナがいなくて寂しがってたんだから!」
「うん、冷たいの飲みたいな」
とりあえずルーシーにはばれてなさそうだ。勘の鋭いルーシーでも、さすがに私がニュースで騒がれている人物だとは思わないだろう。声もバイトでやっているようにだいぶ変えているし……。
久しぶりにルーシーやみんなの顔を見れて、数日間の非現実的な私の日々に、これまでと変わらない安らぎが返ってきた。たった数日の間に起こっただとは思えないくらい濃厚な記憶として残っている。
その日は孤児院に泊まっていった。
「ねえルーシー、一緒に寝るのなんていつぶりだろうね」
「そうねぇ、中学生の時ぶり……あ!うそうそ、高校の時よ!」
「え?高校からは私たち別の部屋にならなかった?」
「ハナ、覚えてないの?高校の時、ハナが夜遅くに私の部屋に泣きながら入ってきて、心配したワタシがギューッって抱きしめたら──」
「わかった!!思い出したからそこまでー!!!」
「えー?いいじゃないワタシはなんともないけどー?」
「こっちの身が持たないっての!」
「わかったわかったw」
私の顔が真っ赤で熱くなっていた。ほんとルーシーは容赦ないんだから。
「あの時はすぐ、ハナが辛いことがあったんだってわかったから何も聞かないでただ安心させてあげようって思ったの」
「わかってる、ルーシーはウチのことならなんでもお見通しだしね」
「そうよ、そうなんだけど……」
また嫌な予感……。
「でもどうしてもわからないのよねー。ねぇねぇ、あの時何があったのか教えてくれない?思い出したらやっぱり気になっちゃってー!」
「そこまでって言ったでしょー!!!」
「その反応から察するに、色恋沙汰だっていうのはわかるんだけどー」
「もう寝るから!!ルーシーの意地悪!!!おやすみっ!!!」
そのことは二度と思い出してたまるか、また忘れてやるとそう思いながらルーシーと反対の向きで寝付いた。
2053年4月21日カリフォルニア州サンフランシスコ──バイト先にて──
酒のまわっていた頭で一応考えていたこと。それは、注目を集めた後どうやってお金を手に入れるか。
広告収入だとかで後々お金が入るのはわかっているのだが、それでは手術が間に合わないかもしれない。そして今すぐにでもお金が必要なこの状況、なぜ私が辞めたバイト先に戻ってきたのか。
私には一つだけお金を借りることのできる人物に心当たりがあった。
「こんにちはハカタさん、お久しぶりです」
「あれ、東雲ちゃん!?ここ辞めたって聞いてたけど、どうして?」
この男は私がここで働いていたときよく私を指名してくれていた常連だ。
「今日はあなたに用があってきたんです」
「せ、せせせせっそうに用ですと!?東雲ちゃんが!?!?」
まあ変わったやつだが悪い奴ではない。うざいといえばうざいのだが。
「ええ、以前あなたが私にボソッとこんなことを呟いていたのを思い出しまして……そのことについて詳しく聞きたくて──」
「あっっるれぇ~~~??????東雲パイセンじゃーん!」
こいつこの時間には入っていないと思っていたのに……!
「あ、カレンちゃん。お、お久しぶり~」
「東雲パイセン、辞めたんじゃなかったでしたっけ~?店長いきなり辞められて困ってましたよ~?w」
「その節はみんなごめん、ちょっと仕事どころじゃなくって……」
「パイセンまた前みたいに病んじゃったんすか~?パイセンいないと~カレン寂しいっスよ?」
こいつは素なのかわざとなのか嫌味しかいってこない女。私の中で、私服が地雷型、中身も面倒くさいってことで地雷と呼んでいる。以前病んで単位落としたのも半分くらいはお前のせいだからな!!!
「ハカタさん、以前私の前でいってた男、『J.W.』について教えてくれませんか?」
地雷は無視だ。こいつに時間を割くつもりはハナっからない……何言ってんだ私、ダメだこいつのせいで調子を狂わせるな。耳を貸すな。
「パイセン~無視はカレン傷つきますよ~」
確か、日本のセンゴクブショーの言葉か何か、孫氏か何かに私の好きないい言葉が……。
「実は急遽お金が必要で、どこも借りれそうになくってさ、その男なら何とかしてくれるんでしょ?」
「そうだけど、東雲ちゃん。せっそうもそいつと取引したのはほんの数回で、素性もよくわかってないし……」
「パイセン?聞こえてますかぁ~?イヤーインプラントでノイズ除去でもしてますぅ?あ、先輩ボンビーだからインプラント入れてないんでしたっけ!ww」
……動かざること山の如し。
「お願い!今頼れるのはハカタさん、あなただけなんです。力を貸してくれませんか?」
「もしもぉ~し、聞こえてるんですよね?ペチャパイセンw」
疾きこと火の如く。
「ヴォォイ地雷ぃぃぃい!!!!テメーいい加減にしろよ?」
「つ、ついに本性表したっすね東雲パイセン~ww」
「黙ってれば好き勝手いいやがってよぉ、口閉じることもできねーのか地雷」
「大体なんすかそのジライってw」
「お前の存在そのものだろ地雷がッ!!!!」
「あ、あの、東雲ちゃん?大丈──」
「さっさと男の居所を紙ナプキンにでも書いて寄こせっ!!!!!!」
この時の店の様子を言い表すなら、そう。
徐かなること林の如く。
「ハンナ……怒ると怖いんだね……」
「そっか、サティにも見られてたんだよね……ごめん、カッとなって」
サティは人間(他のマホウショウジョに気配は感じられるらしいが)の前で姿を消すことができるそうで、気づけば朝私の隣にいてビビった。幸いルーシーは部屋にいなかったからよかったものの軽く悲鳴をあげた。
「いったんお家に戻って休も?ボクのドマニならどこへだってすぐに行けるし!」
「そうだね、幸いサティがいるおかげでまたすぐこっちに戻れるし……今はちょっと頭を冷やしたいかも。ありがとっ」
一度サクラメントへ戻ろうとしたその時、スマホが鳴った。
ん?ルーシーからの着信だ。
「ルーシー、どうしたの──」
「ハナ!!大変なの、プラムが!!!」
応答早々ルーシーの様子がおかしいことに気づく。
「え、プラムが?何があったの?」
「突然血を吐いて、今救急車を呼んだんだけど、お金は無いし……ハナ、どうしようプラムが!」
電話越しに泣きながら私に必死にうったえるルーシーの声につられて私も不安に襲われる。
「わかった、ルーシー落ち着いて。お金は何とかなりそうだから、今はプラムのそばにいてあげて、ウチもすぐそっちに行くから。いい?」
「……うん、わかった。ハナを信じるわ」
思った以上に残された時間は無いようだ。
「それじゃ、急いでそっちに向かうから、切るね」
「ハナ、お願いだから危ないことはやめてね?でもありがとう。待ってるから」
ドマニのサイドカーに乗る。
「サティ、目標変更。すぐに向かうよ、急いで!」
「ヤボール!任せてハンナ!!」
2053年4月21日カリフォルニア州ロサンゼルス──男のいるアジト?にて──
ロサンゼルスの都心から少し離れたところにあるクラブのようなところ。その男はここのオーナーらしい。
「合言葉は?」
「金の招待状」
「入れ」
強面の男に通されたところはいわゆるVIPルームのような所で、何人かの男の周りに女の子たちが数人座っている。いかにもクラブって感じだ。
私に気づいた男が席から立ち上がり、私の前に立つ。
「キミィ初めて見る顔だねぇ?それに1人?誰から聞いた?」
背が高く瘦せ型のサングラスをかけた低くて渋い声のチャラ男が話しかけてきた。
「金を借りたい。子どもの命がかかってる」
「お子さんがいるのかい?見た感じけっこー若いのに──」
「御託はいい。時間が無いんだ」
「オーケーデュード。さ、こっちへ」
男はそう言うとキーロックのついたドアを開け、中へ入っていった。私はその後を追う。
「あんたが『J.W.』でいいんだな?」
「いかにもっ!俺がJ.W.こと、ジョニー・ウォンカ。君は……」
「リピーターになるつもりはない。さっさと取引の話を──」
「っおいおい!おれぁ今から名も知らない相手と取引しらにゃならんのか?w」
こういう裏の世界に足を踏み入れたら簡単には抜け出せない。しかしなんとしてもここで今すぐお金を借りる必要がある。病院で私の助けを待っている、愛する人たちがいる。
「……ハ、ハンナ」
「へぇ、ハンナねぇ。けっこーかわいいじゃない」
「で、取引だが──」
「おいおい、せっかちだねぇルーキーハンナぁ?」
まずい。完全になめられている。態度に気を付けていたつもりだがわかっていても焦ってしまう。大体焦る状況で焦りを見せないというほど器用じゃない。結果このありさまだ。そりゃ接客でストレスたまるわ。
「プッハハハァw!いいよいいよー取引、そう!取引だ!!金を借りたいんだってねぇ?んで?いくらほしいわけ?」
男のサングラスに隠れた目が見えないのが調子がいい態度とは裏腹にとても不気味だ。何を考えているかが全く伝わってこない。
「わかっているとは思うが、いい取引になるかどうかはお前さん次第だ。言葉と交渉材料は慎重に選びなー」
「……25,000ドルを電子で」
「おーう電子かぁ……てなると利子はケッコーついちゃうけどオッケー?」
「な、なぜ電子だと利子が高くなるんだ?」
「オイオイいい子ちゃんかぁー?それともバカなのかぁ?電子じゃ足が付くからに決まってんだろー。そんなんちぃっと考えたらわかんだろおバカなお嬢ちゃん」
「……で、その利子はどれくらい──」
「プッハハハァwジョークだよジョーク!プッハハハァwww!!!」
完全にこの男にペースを握られている。このままじゃまずい……。
「利子ねェ……電子で25,000ドルかー。担保として何が出せるゥ?」
「ぞ、臓器とか……」
「臓器かァ……別に今じゃ困ってねぇしなァー……大体ここ数年は大抵の臓器はインプラントで足りんだし、まったく何年前の話だっつーんだ」
知っててたまるか!これまで善良な市民として暮らしてきた私がそんな裏社会常識、映画とかフィクションの知識から絞ってでてきたそれっぽいワードだっつーの!
「トゴで、からだとか臓器とかべつにいいから。お嬢ちゃんお胸も別にないし!プッハハハァw!!」
トゴ!?さすがにこのまま承諾するわけにはいかない。これを受け入れたら今度は、私の身が危険にさらされるからだ。
「別にお嬢ちゃんがちゃぁんと返してくれるってんならもうちょい負けてあげてもいいのよ?でも今のところなにか数か月で大金を稼ぎそうな知的な感じもしないしねぇ……」
いや?……ハハw、私ってばほんとバカ。もうすでに危険にさらされてるじゃん。ニュースでテロリスト扱いされて指名手配されてる私が今更こんな小男程度に何をビビってんだか。
「あんた、私が大金を稼げそうにないといったな?」
「んェ?言った言った。だって稼げないでしョ、何しても」
「ライトニングボルト」
「……はぁ?」
「ミス・ライトニングボルト。知っているか?」
「確かあれだろぉ、あれだよあれ……あー……んだっけ」
一か八かだ。何度だってベットしてやる。
「サティール。でてきて」
ラスベガスで負けたあの日。あの日から私は生粋のギャンブラーだッ!
「そうそう思い出した!ニュースになってるテロリストの名前だ!!そいつがどうかしたかっ──」
透化していたサティ
「オイオイ……どっから入ってきやがったぁ?警備員は何してる!?じゃなくて!そのぶっそーなものおろしてくれよ、な?マホーショージョちゃん……?」
「ウチがライトニングボルト。ジョニー・ウォンカ、取引だ。私はあの動画で得た収益で、借りた金は返せる」
「プッハハハァwwwww!」
形勢逆転の状況で男は突然笑い出した。
「いやーやっぱりおバカちゃんだァ」
「なにがおかしい」
「お前さんが帰った後、通報してやってもいいんだゼ?」
ああ、なんだそういうことか。まだ状況を理解していないらしい。
「サティール、説明してあげて」
「ヤボール、ハンナ!」
サティが手を広げると、巨大な砲身の一部が突如何もなかった空間から生成される。
「オイオイオイ!どうなってやがる!?なんもねーとっから……つーか待てよ!今見えてるそれ!全部出すんじゃねぇだろうなァ!?部屋ぶっ壊れんだろゥが!」
「アハト・アハト」
「……はァ?んだってェ??」
あとはサティがこいつをわからせてくれるだろう。
「エイティ・エイト」
「だ、だからなんなんだよォ!!」
「ミュージアムに砲撃したやつ。こいつがそう。お前をどこからでも砲撃できる。何せボクこそが魔砲少女サティールだからねッ!」
私のスマホが鳴った。ルーシーからだ。しかし今ここで電話に出るわけにはいかない……。
メッセージに目を通す。
「ハナ!今どこ?お医者様がパルムがもう持たないって!!どうしたらいいのかわからないの!!!お願い連絡して!!!!」
まずい。ここで勝負にでるしかない。正真正銘もう後がない!
「ジョニー・ウォンカ!今すぐ答えて!!トイチでいい、それ以外はない。取引を飲むのか、それとも今ここでサティールに吹っ飛ばされるか選べ!!」
「わ、わかった!それでいい!!交渉成立だ!!!だからはやくそいつをおろしてくれェー!!」
「サティール、引っ込んでいいよ!ジョニー、早く私のスマホに送金して。今すぐ!!!!」
送金を確認した私はルーシーにメッセージを送った。
「これお金、私の口座の認証コード、病院の人に見せて!」
ここまでしておいて、結局最後は神頼みか……!お願い間に合って!!
2053年4月21日カリフォルニア州サクラメント――州都大型病院にて――
その後、お互い連絡が取れなくなれば警察に突き出すことを条件に強引に取引を済ませ、急いでルーシーの待つ病院へと向かった。
「ハナ!!ありがとうありがとうほんっっとうに!!!」
プラムの手術は無事成功。
「間に合ってよかったよ。ルーシーも、よく頑張ったね」
「ううん、ハナのおかげよ。それにしてもあんな大金、どこで?ワタシお金のことも心配で──」
私は落ち着かない様子のルーシーに爽やかな笑顔で答えた。
「それなら心配いらないよ。とても親切な人が、子どもの為にって無利子で貸してくれたんだ!」
メインである主人公やそれ以外(他のキャラやどうしてもイメージが掴みにくいブレー〇ラン〇ーのようなアメリカや社会情勢などetc)にもまだ掘り下げられる、もっといろいろ書きたい!と思う気持ちは私自身あるのですが、まずは本編をしっかり更新していってお話がぐだらないように意識しながら完結させる。それからでもいいかとまずはこの物語を納得のいく形で完結させたいと思っています!