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どんな願いでもかなえてくれる家屋

作者: 燎サイチ

初投稿です。拙い文章ですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

七月某日


突然親が離婚した。

そして、私の意思を尋ねないまま、母親に強引に母親の生まれ故郷に連れていかれた。


私は田舎に行く気なんてなくて、父さんの側で生活をしたかったのに、気づくと走る車の中にいた。外に見える景色はおしゃれに言えば田園風景。悪く言えば、なんもない田畑が広がっていた。

「ちょっとどういうこと!なんでここに私がいんの!?」

「あら、だってあなた私が腹を痛めて産んだ子なんだから、私についてくるのが当たり前でしょう?おとなしく言うこと聞きなさいね。まったく、最後までずっとわがままばかり、聞き分けのなさはあの男そっくりだわ」

振り返ることなく前を見て運転している母親に強い嫌悪感だけを抱いたまま、村に向かった。



あれから二日。

友達に別れの挨拶も言えないまま、今まで使っていたスマホは解約され、更に最悪なのは私の私物全部処分してた。

なんもなく質素で、古びた机と椅子。

興味のない本ばかりがぎっしり詰められている本棚に背を向けて布団に渦巻くっていた。

当然学校に行く気もなく、母親の呼びかけは全部無視していた。


バンッ!!


後ろから急に大きな音で振り返ると、斧を持った母親が不機嫌そうな顔をしていた。

「ちょっと!は!?」

「あらまあ、ドア修理しなくちゃねェ、ほら外出てちょうだい?」

「キモ……」

(普通ここまでやるか)


母親にドアを全壊にされ、修理するからと部屋を出された私は仕方なく昼過ぎに学校に行くことにした。重い足取りで通り道の商店街を歩く。

ここは、母が生まれ育った限界集落と呼ばれる類の村。行く先々には老人たばかりなのに、商店街の中にあるのは現代の、流行に沿ったお店が並ぶ。

「チグハグで気持ちわる……」

父さんから誕生日に買ってもらったヘッドホンを耳に当て、適当に音楽を流す。

(帰りたい…)


二日遅れてやってきた転校生に興味が集まるのは至極普通のことで、4限が終わると囲まれた。

次から次へと質問が押し寄せて、静かになる間もない。

今朝の母親の奇行のせいでストレスは限界に達している。

「うるっさいなあ、ほっといてよ!!!」

思いっきり机を叩いては、カバン何も持たずそのまま教室を出た。


家に帰りたくなくて、家とは真逆の方向にただ走った。

ただ走って走って、息を整えようとしたとき辺りはすでに黄昏時を過ぎていた。

辺りには古びた家屋と田畑だけ。

誰かに忘れ去られ、手入れされることもなく放置されている家屋がまるで私みたい。

押すとすぐ崩れてしまいそうな柱をそっと撫でる。

表面は意外と荒れていないようだ。

ほんのり赤い光に照らされながら一言つぶやいた。

「このまま消えていなくなりたいなあ…」

彼女は家屋を後にし、また走った。

そして、その日から行方不明となった。



数日後


「ほら、あそこのお嬢さん行方不明になったそうよ」

「あらまあ、怖いわね」

「でもあの人ちっとも悲しそうじゃないわよ」

「ほらわがまま娘でいうこと聞きやしないって」

()()()()()()()()()なんてつぶやいてたこともあったのよ」

「そうそう、次はとても()()()()()()()()ってお願いしてたのよ。なんでも願いをかなえてくれる家屋に」

「あら、おめでたなのね。それはうれしいことだわ」

「ええ、そうそう、聞きました?今度若い人がまたこの村に来るそうよ」

「嬉しいわあ、また村がにぎやかになりますわね」

「ほんと、私たち()()()()()()()()()()()()()()()からね。」

「ええ、これでこの村は一生安泰ね」


代償は一体何だったのか、誰が何を願ったのか皆さまはお分かりいただけましたでしょうか


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