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憂鬱やんボサノヴァ  作者: ふしみ士郎
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「それ、あんた誰に言ってんの。」ビールを飲むと奴はそう言った。



「まったくふざけんなよな。」俺はヨウコに向かって言った。

「それ、あんた誰に言ってんの。」ビールを飲むと奴はそう言った。

「えー、わからん。なにもかも。」俺もビールを空にした。

「あ、そうや、メグから手紙あずかってるで。」突然ヨウコはそう言うと、バッグから青い封筒を取り出した。

「メグ?」ヨウコは黙ってそれを俺に渡した。

「なんや。」俺はその青い封筒を眺めた。

「あけたら。」ヨウコがそう言うので、封をあけた。

「カミソリは入ってたりして。」ヨウコはタバコを吹かす。

「まいったな。」そこにはカミソリが入っていた。

「まいったね。」ヨウコは煙を吐いた。俺は読み終えると、それをヨウコに渡した。

「ええやん、それでヒゲそったら。」しばらくして、ヨウコがようやく口を開いた。

「メグと友達やから。読む必要あるやろ。」俺は再びビールを飲み干した。

「まーね、あの子、地元に戻ったで。」え、そうなん?

「うん、だからもう心配いらんとは思うけど。ま、自業自得。」俺か。

「そういうこと。」そうなんか。他の人に迷惑かけて。

「じゃあ、どうしたらいいですか?」俺はビールをおかわりする。

「自分で考えたら。」そうかもな。

「あたしはアメリカ行くから。」え、そっちなん。

「ゾーイとのウエディングパーティー、来てな。」こいつだけは。



彼は楽園の気分を取り払った。そして北国、と言っても福井県だが、にバイクを走らせた。そしてヨウコに聞いたメグの実家の場所を探した。途中で、何度か道に迷った。道に迷うこと事態が何年かぶりだった。そこは新しいような、古いような土地だった。赤十字の病院と原発と日本家屋が点々とある。それから小粒の雨が降ってきて、彼はメットを拭いてメグを待った。最初、彼女は留守だった。親だか親戚だかが出てきて、彼を追い払った。彼は近くの海岸沿いを濡れながら走った。海は荒れていた。雷が鳴っていた。風の音がする。彼は途中でバイクを止め、目の前の暗闇を見据えた。ゴーゴーという波のぶつかる音が、世界の終わりのようにどこまでも響く。まさに「それ」はすぐそこにあって、彼を引きずり込もうとしていた。すぐそこにはグチャグチャの得体の知れない穴がポッカリ口をあけて待っていた。でも、彼はまだそこに入っていくわけにはいかない。水しぶきが手招きしていたが。彼は後ろを振り返らず、もう一度彼女の家に向かった。出てきたメグの顔色は以前と比べ物にならないほど暗かった。



水しぶきが手招きしていたが。

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