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「ススム!」ナホの声で目覚めた。
「ススム!」ナホの声で目覚めた。
「ん、どうしてん。」目を開けると、横でナホが息を切らしている。
「もう、いくら電話してもつながらんから。」わるい、電源切ってた。
「ミドリが。」ミドリちゃん?
「誰かに押されてんて。」施設にいるんちゃうんか。
「そうやねんけど、そのとき誰も見てなくて。」俺は起き上がる。
「誰かわからんけど、知らん女の人やったみたい。」女の人。
「とりあえず病院。」うん、とナホ。
「もう行ってきた。車椅子ごと倒れて、足おってん。」足を、動かない足を。
「警察。」ナホはそう言ったが震えていた。
「断ち切らな。」俺はそうつぶやいた。
ばあさんが嫌いだと言っていた警察だが、今は頼るしかない。警察に行って事情を話した。たまたま腰の低い警察官だった。どちらにしても、警察などあてにはならない。「証拠がないと動けない。」の一点ばり。何事も理にかなっているようで、的外れ。必要なときに「ない」何かみたいに。しかもその「何か」さえわからないので、イラだった。弱者を守るのが国家だろ。じゃあ死者を守るのは?
しかもその「何か」さえわからないので、イラだった。




