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「あんらっきー、やったね。」俺が帰るとナホがそう言った。
「あんらっきー、やったね。」俺が帰るとナホがそう言った。
「おお。」アンラッキーか。俺は畳に寝転んで、身動きもできなかった。
「どうしたんやろ。不審火?」んー、なんか誰かの放火らしい。警察が言うには。
「えー幼稚園に放火って。」ほんま考えられん。
「誰かに対する恨みかな。」恨み。
「ってそんなわけないか、幼稚園で。」うん。
「大丈夫、ススム?」あ、ああ。
「…」
「警察の取調べとかもあるんやろ。」わるい、ちょっと横になって休んどいていいかな。
「ススム。」俺は寝返りをうつ。
「大丈夫?」うん。
「あたし、ミドリ迎えに行ってこんとあかんから。」そうやんな。
写真の中では、彼はいつも兄ちゃんと手をつないでいる。本当に仲良しだった。前世があるのだったら、きっと恋人か夫婦だったにちがいない。何かを得ると、何かを失う。すべてはバランスの上に成り立っている。彼は新しい生活を始めたが、仕事を失った。そればかりではなく、自分の過去、兄ちゃんとの思い出、そして現在の何か。失うものばかりだ。逆立ちして兄ちゃんが笑っている。暗闇に煌々と光る炎。その炎は、弱き者たちへと流れていく。幼稚園、くうちゃん、ミドリちゃん。原因があって結果があって、ではそれを断ち切るにはどうしたらいいんだろう。
原因があって結果があって、ではそれを断ち切るにはどうしたらいいんだろう。




