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「そっか、よかった。」俺はくうちゃんの笑顔を見て幸せな気持ちになる。
「おいしい。」くうちゃんがおいしそうにドーナツを食べる。
「そっか、よかった。」俺はくうちゃんの笑顔を見て幸せな気持ちになる。
「はいこれ。」妹はコーヒーをいれてくれる。
「シンジ、やっぱりダメみたい。」え?
「やっぱり、あたしの勘って当たるんよね。」マジかよ。
「あかんよ、これはおじちゃんのやから。ほら、くうちゃんはこっちの飲み物ね。」駄々をこねるくうちゃん。泣き止まない。何かを感じてる?
「もう、あかんって言ってるでしょ。」叱る妹。俺はコーヒーを受け取る。
「いややいややいやや。」暴れるくうちゃん。
「そんなこと言うてたら、ドーナツも取り上げるよ。」余計泣く。
「ほら、少しだけ飲んだらえーやん。」俺はくうちゃんにコーヒーをあげる。一口飲んで、渋い顔をするくうちゃん。
「ほら言うてるやんか、にがいやろ。」妹はコーヒーを取り上げて、俺に渡す。
「で、どうすんの。」俺が聞くと、妹はため息をつく。
「我慢、かな。」好きやなお前も。
「じゃ何か買ってもらいますか。」妹は悲しそうに笑ってみせた。
「おにいは仕事、再開したんやんな。」おお。
「でもほんま不思議やわ。あの幼稚園の給食をお兄ちゃんが運んでるなんて。」再びコーヒーを飲む。
「昔あたしたちも行ってて、今はくうちゃんも行ってて、それでお兄ちゃんが配達してるなんてすごいな。」何度も言うがホントなのだ。
「くうちゃん、あの幼稚園好き?」くうちゃんはドーナツで遊んでいる。
「うん、センセイ大好き。」よかったな、いい幼稚園で。俺はドーナツを平らげた。穴ごと、胃の中に収めた。
しかしその晩、炎が燃え立った。そして黒煙が薄暗い空に舞い上がった。まるで誰かをともらうように。赤々と燃えた火はあたりを焼き尽くし、彼らの過去やくうちゃんの現在をも飲み込んでしまった。風が吹き、ゴーゴーという音とともにそれは幼稚園から隣家にまで燃え移って、その一体の住宅が燃えた。一晩燃えた火はまるで震災の後のように、彼らに現実的な傷痕を残した。翌日の朝、彼は仕事を失ったことを知らされた。現場に行くと、警察が瓦礫の跡を検証していた。彼はその前で立ち尽くした。
現場に行くと、警察が瓦礫の跡を検証していた。




