47
「しかしお前が、ナホちゃんと暮らすとはな。」晃一はそう言うと笑った。
「しかしお前が、ナホちゃんと暮らすとはな。」晃一はそう言うと笑った。
「ほんまに。」バイクを止めると、俺は自動販売機でジュースを買った。
「しかもあんなことの直後に。」いや、前から決めてたから。
「あーオレもなんとかせんと。」目の前の淀川を眺めながら晃一がつぶやく。
「チナツはあかんのか、コウイチ。」俺は晃一にジュースを1本渡す。
「え、ああ。千夏な。奴は、なんつーか、友達。」そっか。風が吹く。
「オレ、東京でも行こっかな。」え?
「いやこのままじゃあかん気がして。」晃一は反対側の住宅を見ながらつぶやいた。
「東京…」俺はジュースを飲む。
「ま、東京じゃなくってもええねんけど。」晃一はそう言うと適当にハハと笑った。
「お前なんて、アメリカとかも行って色々してるからええけど。」そうでもないよ、借金あるし。
「勝負すっか。」勝負?
「ほら。」晃一はそう言うとジュースをゴミ箱に投げる。カランという音。
「よっしゃ。」俺も缶を投げるが、外れる。
「クソ。そういやお前の妹、まだ引きこもってるんか。」俺は缶を拾いながら言う。
「え、ああ、倫か…あいつはあかんわ。」そうなんか。
「ふーうちは会話ぜんぜんないし。親とかも。」お前から話ししたらええやんけ。
「それができたらええけどさ。ススムは妹とも仲いいよな。」まーそうかもな。仲いいほうかもな。
「つーか、自分の心配せいや。」ああ、ああ。
かつて妹と仲がいいと思ったのは、死んだインコを一緒に埋めたとき。ただ兄妹げんかもあるし、逆にプレゼントを贈りあうこともある。なぜか?そうしなきゃいけない気がするのだ。いなくなった者の分まで。「ない」から、よけい「ある」ことも際立つ。ドーナツの原理。穴の部分は、普段気づかなくてもいつもある。「それ」はあるんだ。そして穴もふくめて、われわれは一つのドーナツなのかもしれない。ブラックホールではなくって。
ブラックホールではなくって。




