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憂鬱やんボサノヴァ  作者: ふしみ士郎
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「しかしお前が、ナホちゃんと暮らすとはな。」晃一はそう言うと笑った。


「しかしお前が、ナホちゃんと暮らすとはな。」晃一はそう言うと笑った。

「ほんまに。」バイクを止めると、俺は自動販売機でジュースを買った。

「しかもあんなことの直後に。」いや、前から決めてたから。

「あーオレもなんとかせんと。」目の前の淀川を眺めながら晃一がつぶやく。

「チナツはあかんのか、コウイチ。」俺は晃一にジュースを1本渡す。

「え、ああ。千夏な。奴は、なんつーか、友達。」そっか。風が吹く。

「オレ、東京でも行こっかな。」え?

「いやこのままじゃあかん気がして。」晃一は反対側の住宅を見ながらつぶやいた。

「東京…」俺はジュースを飲む。

「ま、東京じゃなくってもええねんけど。」晃一はそう言うと適当にハハと笑った。

「お前なんて、アメリカとかも行って色々してるからええけど。」そうでもないよ、借金あるし。

「勝負すっか。」勝負?

「ほら。」晃一はそう言うとジュースをゴミ箱に投げる。カランという音。

「よっしゃ。」俺も缶を投げるが、外れる。

「クソ。そういやお前の妹、まだ引きこもってるんか。」俺は缶を拾いながら言う。

「え、ああ、倫か…あいつはあかんわ。」そうなんか。

「ふーうちは会話ぜんぜんないし。親とかも。」お前から話ししたらええやんけ。

「それができたらええけどさ。ススムは妹とも仲いいよな。」まーそうかもな。仲いいほうかもな。

「つーか、自分の心配せいや。」ああ、ああ。



かつて妹と仲がいいと思ったのは、死んだインコを一緒に埋めたとき。ただ兄妹げんかもあるし、逆にプレゼントを贈りあうこともある。なぜか?そうしなきゃいけない気がするのだ。いなくなった者の分まで。「ない」から、よけい「ある」ことも際立つ。ドーナツの原理。穴の部分は、普段気づかなくてもいつもある。「それ」はあるんだ。そして穴もふくめて、われわれは一つのドーナツなのかもしれない。ブラックホールではなくって。



ブラックホールではなくって。

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