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「ゴメンナサイ。」俺はそう言った。
「ゴメンナサイ。」俺はそう言った。
「信じられへん。」ナホはミックスジュースを置いてつぶやいた。
「ごめん。」俺は正直に話して頭を下げるしかない。
「なんでなん。」お前と付き合う前の話し。
「でもあたしと出会ってからやんな。」はい、でも酔ってて。俺は目の前のアイスコーヒーをじっと見る。
「あたしだってさ、同棲とか真剣に考えてさ。ミドリだっているから大変やし。」ナホは泣き出した。
「わかってる。ほんま、わるい。」喫茶店のマスターが気を利かせて姿を消した。
「だって、だって。」ひとしきり子供みたいに泣くのを黙って見ている。ナホの頭をなでようとするが、避けられる。
「だってミドリにも話してやっとさ、家から出ようとして。」泣きじゃくるナホの気持ち。
「うん。」痛かった。
「ミドリが、あたしのこと、ほんま必要で、それを振り切って家を出ようとして。」そういうことだった。
「オレ、好きなんや、お前のこと。」俺は言った。
「ススム。」そこでナホは顔を上げると、俺のほっぺを思いっきり叩いた。
「いた。」痛み?
「もう二度としんといてや。」ああ、ああ。
ナホは納得してくれたが、メグの場合はもっとひどかった。修羅場になった。だけどメグは泣かなかった。すでにこうなることを感じていたのかもしれない。「生む。」「生むな。」を何度も繰り返した後、「一生、のろってやる。」と言われた。それに対して彼は何も言えない。いつもそうであるように、沈黙を貫いた。ヘビの恨みから逃れるためにカエルの本能。するとメグは立ち上がり、「バイバイ。」と言った。その瞬間彼の頭の中には、再びユキのことが駆け巡った。
その瞬間彼の頭の中には、再びユキのことが駆け巡った。




