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憂鬱やんボサノヴァ  作者: ふしみ士郎
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「お兄ちゃん、それ自業自得やん。」わかってる。


「マジどうしよう。」俺は一人遊びするくうちゃんを見ながら言う。

「お兄ちゃん、それ自業自得やん。」わかってる。

「あーあ、まいった。」ため息をつく俺を見てくうちゃんが笑う。くうちゃんになりたい。

「結婚する気ないなら、おろすしかないんちゃう。お母さんには話したん?」話せるわけないやろ。

「ほんまアホやな。信じられへん。」心から言う妹よ。そのとおりだ。

「でもそのメグって子、ずるいね。」洗濯物をたたみながら妹がつぶやく。

「なんで。」

「だってさ、最初はおろすつもりやったんやろ。あとだしジャンケンやん。」なるほど。でも責任はオレにあるから。

「よく話しあうしかないよ、お兄ちゃん本当に父親なら。」あの夜、やっぱり俺はやったのだろうか。そうなんだろうか。

「相手の子を傷つけるのだけはやめてな。あ、もう傷つけてるか。」まいったな。

「ほら、くうちゃん。すすむおじちゃん、ばかだよ。」やめてくれ妹よ。

「すすむ、ばか。」ほらマネするやろ。

「すすむ、ばか。すすむ、ばか、すすむ、ばか、すすむ、ばか、すすむ。」ほら、止まらない。くうちゃんが無邪気に笑う。

「そっちはうまくいってんのか、最近。」話しを変える。

「まぁね。なんとか我慢しております。」我慢。

「お兄ちゃんからもさ、聞いてくれへん。それとなく。」なにを。

「あのさ、言いにくいけど。」だからなに。

「うちの旦那、浮気してるような気がするんよ。」まさか、シンジが?

「わからんけど、女の勘ってやつ。」ミユはそう言うと立ち上がって、窓から外を見た。



結婚、浮気、離婚、妊娠、出産、死別。色んな形で人生のハードルやイベントがやってくる。ゲームや映画なら簡単におさまるエンディングも、実際にはイチイチまとわりつく夏の湿気みたいに感じられた。逃れようとしても逃れられない。いや、もちろんそれに「参加しない」という手もないではない。しかしそれでは夏の夏たる由縁もない。湿気があるから夏なのか、それとも夏だから湿気があるのか。暑いからカキ氷を食べるのか、カキ氷を食べるから夏なのか。



湿気があるから夏なのか、それとも夏だから湿気があるのか。

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