40
「親といつまでも同居って。」どうなんやろ、ナホはそう言った。
「親といつまでも同居って。」どうなんやろ、ナホはそう言った。
「どういう意味?」俺は夜空を見上げた。三日月だった。
「んーん、なんとなく。」何かあったのか?
「そういうわけじゃなくて。」横ではミドリちゃんが車椅子から黒い川を見ていた。
「あれ、あれ。」ミドリちゃんが何か言っている。
「どうしたん、ミドリ。」ナホが優しく聞く。
「さかな。」夜に泳ぐ魚?ミドリちゃんみたいやな、と俺は思う。
「ほんとや、おさかなさん。」ナホがつぶやく。ほんまや。
「ねぇお姉ちゃん、泳いで。」ミドリちゃんが言う。
「泳ぐ?あたし?じゃおよごっか。」ナホが俺のほうを見る。
「アホか。」俺はTシャツを脱いで、ためらわず川に飛び込む。
「ススム。」ナホが叫ぶ。
「すすーむ。」ミドリちゃんもキャッキャと笑っている。
「気持ちいいで。」少し冷たい。俺はバシャバシャと水をかける。
「やめろ。」ミドリちゃんも叫ぶ。
「ちょっとやめて。」ナホの叫び声。
「冷たいやんか!」ナホとミドリちゃんが笑う。
「およげるで。」俺はスイスイと泳いでみせる。
「ススムすごい。」ナホが言う。
「おさかなさんみたいやな。」ミドリちゃんが笑う。夜の魚。
両足と片腕がほとんど動かないミドリちゃんの人生。まわりが水のように優しければ、彼女だってスイスイ泳いでいける。だけど時には激流があったり、水が涸れてしまうこともある。そうなると彼女はまな板の鯉になってしまう。それを裁くのが世の中ってやつで、食べるのは悪趣味な金持ち連中?彼はそれを見ている観客・・・もしくは二匹目のどじょう。でもナホは家族だった。
でもナホは家族だった。




