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「うんウーロン茶で。」俺はがっかりした。
「なにもいらない。」せっかく飲みに来たのに、ナホはそう言った。
「うんウーロン茶で。」俺はがっかりした。
「そっかじゃあ、ウーロン茶で乾杯しよう。」そう言うと彼女はうなづいた。
「でもあたしだけ飲ます気?」俺がそう言うと彼女は笑った。
「じゃあ、一杯だけ。」うん。
「そっか、でもえらいよな。」そんなことないよ、とナホは言う。
「いや、えらいって。オレなんて自分のことだけで精一杯やもん。」あたしだってそうやよ、とナホ。
「介護の仕事か。」そう、ナホは介護士を目指していた。
「少しづつ慣れてきたところ。」まだパートやから、って彼女は言う。
「打ち解けてくれてうれしい?」え?
「だってあたし最初、顔かたかったでしょ?」い、いやぁ。俺は笑ってビールを飲む。
「ごめん、急になまいき。あたし人見知りやから。」そのギャップに引かれる俺。
「ねぇ、アメリカ行ってたんやろ。」うん。
「なんで?」なんでやろ。
「どうやった?」どうやろ。
「一言、言っていい?」うん。
「はさみ。」うん?
「アメリカは白い画用紙で。」
「ススムくんが、はさみ。」ビールに口をつける。
「はさみ。」はさみ?切り刻んでしまうのだろうか、人の気持ちも考えず。
「はさみ。」はさみ?切り刻んでしまうのだろうか、人の気持ちも考えず。




