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「なんで一言挨拶に来ないかな。」会いたくたかったんじゃないか。
「じゃあさ、その子たちもう帰ったんだ。」俺のビールをとりあげて、ヨウコが言う。
「なんで一言挨拶に来ないかな。」会いたくたかったんじゃないか。
「なに言ってんのあんた。」こいつだけは不死身。
「そうよ、あたしはあんたより長生きしちゃる。」ジャズフェスのバーではファンキーなバンド演奏が続いていた。
「今から何人か来るから。」俺は隣の女の子の胸を見ている。
「いい男じゃないと許さんよ。」ヨウコは俺の胸を叩く。お前はゾーイといい感じちゃうんか。
「そういやあんた、メグとは寝たの?」おっとストレート。
「隠してんじゃないよ、このスカタン。」スカタンって。
「ああ、ススム、ここにいたんや。」そこにノブと若菜が入ってくる。
「おーおー、来ましたね、ご両人。こっちはヨウコ。」
「こんばんわー。」人見知りしない女。大人?
「どーも、じゃあちょっと先に飲み物買ってくる。」おう若旦那に若菜、そういや林さんは?
「あ、下でタバコ買ってはったから、もう来ると思う。」そう言ってる間に、鉄人ハヤシ登場。
「おおーススム、ここにおったんや。電話したのによ。」いやまだ携帯が・・・
「そうなんか、はよ言えよ。」だいぶ前から言ってましたけど。
「こっちの人は、ツレか?」まぁはい。
「ヨウコです。」かわいこぶってんのよね。ええけどさ。
「林です。」鉄人、下から上までじっくり見る。
「ススムにこんなキレイな友達おったんや、はよ紹介してや。」ヨウコはタバコに火をつける。
「口うまいですね。」この二人はあいそうだな。
「それビール?」林さんはヨウコをじっと見ながら言う。
「うん?」ヨウコはバンドの曲にノリながら答える。
「ちょっとちょうだい。」それ俺のやけど。
「ええかんじやん、ここ。」でしょ。
「なんかさ、いいよなこういうの。」音楽があって、リズムがあって、ビートが鳴っていて、ビールがうまくて、女の子はかわいくて、町はあたたかい。
「なに言ってんのあんた。酔っ払い?」ヨウコ、お前だってわかるだろ。
「さぁ踊ろうよ。」いつものようにヨウコが言う。
「いいね。」今は林さんが答える。向こうではノブと若菜も揺れている。
「ほーー!」林さんはノリながらヨウコの腰をもつ。そして突然キスをする。笑うヨウコ。俺はビールを飲む。向こうでは誰かが手を振っている。誰かが。
手を振っているのは誰だろうか。消え去らぬ幻影の一角獣。それに乗っている一寸法師。お前は誰だ。お前は。杯を持った見知らぬ恋人。夢の中でしか会うことのない人々。死の国からやってきたハイエナ。血を吸う夜のコウモリたち。月は瞬きながら帰還を待っている。お前の帰りを待っている。土くさい香りの草花。はてしなき幻のサックスフォン。その音色はいつ病むことなくもまもなく止むだろう。きっとそうだろう。
きっとそうだろう。




